第五章 PM少女 〜PMのワリオマン、体感forベヨの三倍性能だ〜(4)
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。
ジン
クラスメイト。男。クラスのリーダーで、優しい
佐竹
クラスメイト。女。クラスのボス。
鈴香
ナディアの姉。高校生。
午後三時。
リーファが、ナディアを誘ったのは意外だったけど、イオンから遠くないレンタルスペースに来ていた。
喫茶店の二階が、貸部屋になっていて、TVや冷蔵庫もあった。6畳くらいのスペースだけど、居心地よく作られてる。リーファの会社の人が予約してたらしく、Switchと、パソコンまで用意されてる。
「2先、どちらもGCコンでいいね?長引くと勝ち目ないから。私が勝ったら一つ言う事を聞く。
負けたら、ガイギンガを渡す」
「いいけど……リーファ、スマブラ出来たの?」
「vip2体」
「えっ!?なんで隠してた?」
「勝てるようになるまで黙ってるつもりだった」
「……言うじゃん」
僕は僅かな焦りと大きな期待で一杯になっていた。
三人目が、リーファなら……
何の文句もない。
リーファは、Switchとモニターをつなぐコードをパソコンに繋ぎ変えた。
「何、配信でもすんの?」
「違う、スマブラはスマブラでも……」
黒い画面に、えんじ色の文字。
「……スマッシュ……CE?」
そこから、SPでも見慣れたモード選択画面、ついでキャラ選択画面が映った。
『select your character!!』
「こっちのスマブラ」
「なにこれ!?」
声が悲鳴みたいになった。
デラックスと違う、グラフィックが遥かに凝っている!
心臓が爆発し、テンションも爆発した。
「スゲエスゲエスゲエ!リンに、ワルイージ…ナックルにキノピオ!?うそ!!」
「2先、始めるよ……そこのどんぐり、証人ね」
「ワリャあ、誰がどんぐりじゃ!」
後ろでクッションを抱いてむすっとしていたナディアが吠えた。
「どんぐり眼だからどんぐり。細目よりまし。凛、マリオね?じゃ、ワルイージ」
二体のキャラが、画面の両端に出現。
スマブラは大昔からあるゲームだけど、ルールはずっと同じ。
このゲームは攻撃によりダメージを相手に蓄積させ、相手を画面から追い出す、バーストさせた方が勝ちだ。
機数は大体4から3。
ダメージは%で表示され、大体100%を越えたあたりで強い攻撃を喰らうと画面外に吹っ飛ぶ。画面の両端が崖になってて、ここから画面下に落ちても死ぬ。
『3、2、1、GO!』
は、SPと同じだった。
GCコンには、慣れてないけど僕はそこそこ戦える。
PCが高スペックらしく、動きは滑らかだ。
やせっぽっちのワルイージが、テケテケかけてきた。
飛び道具はないのか。
僕はファイアボールを
投げて牽制、相手の動きを見切るまでは逃げに徹する。
甘かった。
相手の頭上を飛び越えようとした所で、垂直の飛び蹴りで撃ち落とされた。墜落したところにスタンピングの嵐、崖の外に放り出される。
台の上に復帰しようとした所を、
『ワル・イー・ジ!』
泳いできた、ワルイージが、垂直にダイブしてきて、崖に届く前に叩き落とされた。
メテオって分類される技で、食らったら、崖の下に落とされ、体力がどれだけあっても、アウト。
「スゲー!」
僕は叫んだ。興奮して、嬉しくてたまらない!
その後、僕も反撃して、2ストック奪ったけど、
見たことない、技の数々で1敗。
「続けるよ?」
「待ちんしゃい。このゲーム、林堂やったことないんか?ズルかろ、細目」
「認める。でもSPだったら、逆立ちしても勝てない」
「え……?ああ、忘れてた、いいよいいよそんなの!続けよ!これ、なんてゲーム?」
「PMって呼ばれてる」
「……これか! これなのか!極悪違法の改造ゲーム!やってみたかったんだ!やったー!続けるぞ!」
PM。プロジェクト・ミーリー。
ミーリーってのは乱闘の事。
2008年に発売された、スマブラXが気に入らない、とファン達で勝手に作ったスマブラだ。
キャラパワーを出来るだけ公平にし、他にはないキャラを加え、世界大会やプロまでいるという、信じられない作品。しかも、未だにアップデートされている。
オフで会った高校生が、凄く自慢げに、やった事があるって言ってた。僕らSP勢にとっては都市伝説みたいなカンジだったんだ。
羨ましかったんだよね、実は。
「林堂、負けたら言う事なんでもきくんじゃぞ?内容によってはうちは認めん」
「それでいい。その為に、どんぐりに来てもらった」
キャラ選択画、僕はワクワクしながらlynを選んだ。SPにはないキャラ、使わないなんて勿体無い!
2戦目、リーファはワリオを選んだ。
けど。
画面に現れたのはマスクを被ったワリオ。
「ワリオマン!」
「あやまっとく、ゴメン」
ゲームが始まってすぐ、リーファがなんであやまったか分かった。
ワリオマン、キャラ性能が、壊れているのだ。
ジャンプ中、永遠に攻撃できる、しゃがみ歩きがバカみたいに早い、横強に全くスキがない。
「どうなってんの!?PMって、キャラ調整がウリなんでしょ!?」
「横強はマイナスフレーム、横アピに麻痺効果、三段ジャンプも出来る……それでも、奈良のルイージ使いにボコられた」
「何者、その人!?」
悔しそうなリーファにツッコむ。
lynは、ポニテで和風テイスト女剣士。SPの剣士キャラと動きは似ていたから、戦いやすかったけど、ワリオマンが強すぎて、最後は足を掴んで、端から端までぐるぐる回された後、画面外まで投げ飛ばされた。
でも、僕は始終ゲラゲラ笑いっぱなしだった。
「はー、楽しかった。僕の負け」