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フリック・オブ・ザ・スイッチ




 感動したぼくは、ダムが崩れるように泣き出す、ジャス子の肩に手を置く。


 軽く咳をしてから言った。

 

「よかったな……ジャス子」


 体が熱くなって、視界が涙で歪む。


 なんだよ、ヤッパ、サトシの父さんだ。

 スゴい人だよ。

 自分の立場なんか考えずに、誰かの為に……


 ハハ。


 それ、ジャス子じゃん。

 オマエラ、ホントの親子じゃないの?


 うん、言われてみなくても、ジャス子、アジア系の面影1ミリもないよね?

 ツッコんでいい事じゃないから、今まで誰も言わなかったけど、駒口さんの設定、かなり雑だったよね?


「……私としては、彼等の身辺が落ち着くまで、オマエを預かりたかったが……」


「それで、いいよ」


 ジャス子が即答した。


「何もかも、今まで、通りがいい。にいににも内緒にして、しばらくは……ククク」


 え、ナニ?


 ナニ、その笑い?


 なんで、しゃくり上げながら笑ってんの?


「オヤジ、この事、沙菜には言うなよ? あのメガネェ……今からや……どっちが上か見せたるわ……いや」


「何言ってる? オマエ、ローズ達が……」


 嫌な予感しかしない、ぼくたちをおいてけぼりに、ブツブツ言ってる、新アメリカ人。


「あけすけな攻めは、逆効果か? にいにのガードが固くなるのは避けるべき……また、昔みたいにお風呂に……」


 もしもし?

 色々、ダダ漏れですが?


 立ち尽くす、ワンピース姿の元・サトシ妹。


 障害がなくなって、完全にスイッチが入ってる、ジャス子に、言葉を失う、ぼくたち。


「そうだ、一緒に寝てるのも……意味が変わるよな? フフ、フヘへ」


 サトシ、逃げてー!


「ジャス! なにを言っとるんだ!」


 そうだ、そうだ! 何言ってるんだ!


「ウルセエェェ!」


 叫ぶ、ジャス子の眼はトんでいた。


 「コッチは、一年近く、胃に穴が空くほど悩んだんだよ! 片親で、フリンの娘に、イラン人だぞ!? 虐待じゃねえか。いいことっつったら、にいにと知り合えた事だけ……好きにさせてもらうぜ、ママならそうする!」


「……まあなあ」


 いや、認めんなよ!?

 そのものわかりの良さ、今は要りませんから!


「それに……」


 ジャス子は、首を振りながら、涙をこぼす。


「ワタシ……ワタシ……バカすぎて……」


 顔をおおって、悲痛な声を上げる。


「後先も考えないで……自分が……許せない……もっと早くわかってたら」


「ジャスミンちゃん、自分を責めるのはよすッス。何も知らされてなかった、キミは悪くないッスよ」


 優しく微笑む、ハスマイラさん。


ジャス子は、正気を無くしたみたいに、激しく首を振った。


「違う、そんなんじゃない!そんなんじゃ……」


 ぼくは、胸を打たれた。

 ジャス子……一瞬、狂ったかなってビビったけど……


 そうだ、オマエは悪くない。

 ジャス子に見えない矢が刺さってるなら……

 取り除いてやりたい。


 ぼくは、ジャス子の背中に手を置いた。


「ジャス子……」


 ぼくの頬に、ジャス子の拳がめり込む。


「返して!」


 ぐわんぐわんする頭に、ジャス子の泣き声が突き刺さった。


 ぼくの胸を拳で叩きながら、ジャス子は、泣き叫ぶ。

 


「ワタシの、ファースト・キス返してよ!」


 




「なんで君の方が、ジャス子の首を絞めるんだね!?」


「ちょ、放すっスよ! 泡吹いてる!」


 大人たちが、引き剥がそうとするのも構わず、ぼくは、煮えたぎった頭で、白目剥いてるジャス子の細い首を絞め続ける。


 コイツだけは……! コイツだけわ!


 めり込む指から伝わる脈。

 

『滅せよ!』


 宇宙かラ送られてくる指令に従イ、この悪魔を退治するんダ。


「ああ、もう!」


 ハスマイラさんに、肘の辺りを握られると、腕が痺れて、握力を奪われた。


 そのまま、足を払われ、押さえつけられる。


「施設で、挨拶と靴を揃えるのが上手になって、帰ってくるつもりッスか!?……ちょっと?……え、すごい熱! 駒口さ……」


 


 


 

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