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第四章 パルテナと定規、ゲムヲとゼリー(4)

《登場人物》



 林堂 凜


 主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。



 香咲 ナディア=マフディー


 小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。



 梁 梨花リャン・リーファ 

   

 小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。



 ジン


 クラスメイト。男。クラスのリーダーで、優しい


 

佐竹


  クラスメイト。女。クラスのボス。


 

鈴香 

 

 ナディアの姉。高校生。




 次の日。


 金曜日、明日の休みだけを心の支えに、僕ら小学生は学校に向かう。


 顔の腫れは目立たなくなったけど、噛まれたとこは痛かった。


 片方だけで提げてきたランドセルを下ろすと、僕は窓の外をぼんやり眺めた。曇り空、少し寒い。


 廊下を振り向くと、ナディアが立ってそうだから、見ない。


 結局スパーリング終わってからも話さずじまいだし、肝心のスマブラの事も進んでない。


 でも、昨日ヘビー過ぎて、ウンザリしてるし、今日は、平和に過ごしたい。


 それに、ナディアにまた無視されたらキレてしまいそうだ。


 佐竹も別に挨拶しただけで何も言って来ない。


 午前中が終わり、昼休みになった。


 定規戦争をしてるうちに五時間目が始まり、放課後になった。


 黒ずくめの集団も来ず、ぼくは拍子抜けした。


 このまま帰っていいものか。昨日ナディアの家族に宣言したばかりだしなあ。


 ジンに、帰ろうぜって言おうか迷ってると、ノッポのインドネシア人が廊下から、手を振ってるのを見つけた。


 ジェイクだ。


 僕が返事して近づくと、雑に伸び始めた坊主頭のジェイクが、透明なファイルを差し出した。


「女子に頼まれた。これ、コウサキに届けてくれん?」


 それで、初めて、ナディアが休んでるのを知った。



 ナディアん家は遠いので、一端帰宅してから、自転車で向かう。


 学校には熱があるから休むと連絡があったらしい。


 なんとなく避けてた罪悪感を感じながら、インターフォンを押す。


 表札に止まっているてんとう虫がいた。


 ボッという音のあと、


「はーい」


 お姉さんが出た。


「あ、林堂です、プリント持ってきました」


「あ……助かった!」


 突然通話が切れ、しばらくのこのこ這うてんとう虫を眺めてた。


 良かった、お姉さん怒ってなくて。殴られずに済みそうだ。


 玄関のドアが開くと、Gパンにトレーナーのお姉さんが走って来た。


「来てくれてありがと。後、昨日の事も」


「いえ……香咲、熱どうですか?」


「熱より、メンタル凹んでて……超ウザい」


 困ったように僕を見る。


「あの、背の高い女の子って彼女?泣いてた子。詮索してゴメンだけど、こっちも色々あるから」


「違いますよ! 幼馴染の相棒です」


「……んー、微妙だけど、まあいっか。じゃ、キマリ。それナディアに……いや、看病頼める?私買い出し行かないとだから。ママ、パートに行ってるし」


「え……いいんですか?」


 僕のこと嫌ってたのでは?


 お姉さんは、ため息をついて髪をかき上げた。


「ママがああ言ってるし、ナディアも本気だし……キミはイイヤツみたいだし。女心の理解ゼロだけど」


「はあ」


 お姉さんは、少し真面目な顔で言った。


 バニラみたいな、いい匂いがする。


「あの子面倒くさいかもだけど、誰にでもってわけじゃないんだよ?」


「え……まさか、僕にだけ?嫌われてるんですかね?」


 お姉さんは、んギー、とか言って頭を掻きむしり、僕の肩に乱暴に手をおいた。怪我してない方でよかった。


「ああ、もう、一周回って面白いな!いや、まだ、メーターとコンパスのついた自転車にのってる子供に言う私が間違ってた!妹を頼みます。仲良くしてやって」


 凄く優しい笑顔で僕のアタマをなでると、アイツ部屋で寝てるからと言って買い物に行った。


 まだ、木の匂いがする階段を登っていると、こもった声がした。


 ナディアが誰かと話してるのが、ベージュ色の扉越しに聞こえる。


「……たいぎい言いなや!うち、はぶてるとこばっかし見せたけん、ぶち気になるんじゃ……

 line知らんもん。いやや!友達に聞いたら、好いちょるんバレてまうじゃろ!

 な、怒っちょらんかな?嫌われとらんかの……

 そんなんわかっちょる!明日まで待てへんもん、心配なんやもん、あんな女より、うちのほうが、ぶち好いちょるんやもん!……

 なんなら!? 妹世界一困ってんのに……

 は? なにいうちょる?……派遣した?」


 話が途切れたのを狙ってノックする。


「ナディアー、林堂だけど」


「ぎゃあー!!」 


 バーストされたテリーみたいな悲鳴を上げたナディアが、バタバタと走り回る音がした。


 鍵をかける音、ベッドがきしむ音。意味不明な喚き声。


 なんだよ、メッチャ元気じゃん。


「い、いつから!何にも聞いてないじゃろ!うち、冗談いいよったきに!あっちいけ、林堂なんか嫌いやもん!」


「ああ、そうですか。プリントこれな」


 やっぱコイツ、イラつくわ。


 扉の下からファイルを差し込む。


「元気そうだな。お姉さんに看病頼まれたけど、帰るぞ」


 んじゃな、と言って扉から離れる。


「ま、待て、帰ったらいけん!」


「んだよ、お前があっちいけっていったろ?」


「……ホンマに、さっきの電話聞いちょらんかった?」


「聞いてた。方言、全く分からん!相手お姉さんか?」


 ……はあー、と力が抜ける声。


「着替えるけん、ちょっとまっとって」


「いや、風邪だろ?寝とけよ」


「なんなら!うちが、おっていうたら、おって!帰ったらいけん!」


 最後の方は涙声だった。


 めんどくさいな!



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― 新着の感想 ―
[良い点] あー、面白かった。 乙女心と実行動とのギャップもアレですが、 総じてナディア可愛い。 素っ頓狂な林堂は、どこまでもトンチンカン。 次が楽しみです。 これもラブコメというのか? こっちが実は…
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