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第四章 パルテナと定規、ゲムヲとゼリー(2)

《登場人物》


 林堂 凜


 主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。


 香咲 ナディア=マフディー


 小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。


 ジン


 クラスメイト。男。クラスのリーダーで、優しい


 佐竹


  クラスメイト。女。クラスのボス。



鈴香 


 ナディアの姉。高校生。




 15分後。


 対人試合の練習、スパーリングの真っ最中だった。大の字になった僕の首に腕を巻きつけたリーファが、僕の胸に背中をもたせかけている。


 袈裟固めしたまま、


「ち、ちょっと、休憩」


 整った顔を歪め、荒い息でささやいた。


「大賛成」


 僕も囁きかえす。


 めっちゃしんどい。


 マットの上では、10組を越えるペアが、コーチや熱くなった親に怒鳴られながら、戦ってるので、サボっててもバレにくい。


 僕とリーファがペアになりたがるのはこれが理由。


 お互いやる気がないし、ぼくらの親はレスリングマットを敷くときか片付けるときのどちらかしか来ないので、上手いことサボって乗り切るのだ。


 リーファのミントの吐息を感じながら、目を閉じる。疲れたけど、もうすぐ帰れる。


 ヘッドコーチの、へー広島の女子中学で練習してたんか?女子同士しかあかんかったら、そうするしかないわな……ええよ、入り


 ボンヤリとでかい声を聞いていた。


 ……広島?


 2分終了のブザーが鳴る。


「サボりなや、このドスケベ」


「痛ええ! 髪、髪!」


 誰かが僕の髪の毛を踏んづけてる!


 僕は、その足を両手で払い、転がって脱出した。


 痛みのあまり、スローモーで顔を上げると、片手を腰に当てたナディアが、ビックリするような服装で立っていた。


 どこかのチームTシャツに短パン、それと……ピンク色のレスリングシューズ!?


「えっ!お前……」


 口をパクパクさせる僕を無視して、立ち上がったリーファに言った。


「一手ご教授ねがえんかのう。オトコとベタベタしちょっただけやし体力ありあまっとるじゃろ?」


「それを、羨ましそうに見てただけなんだから、先にストレッチでもすれば?」


 ナディアの目つきがさらに険しくなった。


「しごうしちゃるき、覚悟せえ」


「なにそれ、英語?」


 15秒の休憩終了のブザーが鳴った。


 茫然とする僕の前で、二人は握手代わりにお互いの掌を打ち払い、低い姿勢をとった。


 リーファが真面目に構えるのを久しぶりに見た。


 リーファ、やる気はないけど、強い。


 リーチと戦略の上手さが、練習嫌いを補っているんだ。


 だらりと長いリーチを垂らしたままサークリングを開始する。


 ナディアは軽快にステップを踏むと、軽やかにマットを跳ね、リーファの正面をキープし続ける。


 動きの滑らかさでわかる。ナディア、かなりの強さだ。


 ナディアは、上下に揺さぶりをかけ、リーファに何度も反応させる。


 対してリーファは、リーチを活かして相手の首や頭、手をひっかけ構えを崩そうとする。


 その手を払ったナディアが、タックルを仕掛けた。


 速い!間一髪、リーファが、片足を後ろにスカして、ヒラリと身をかわす。


 素早く向き直ったナディアに、今度はリーファが仕掛けた。


 超低空の捨て身で右手を伸ばす。ナディアは、鋭く片足をひく。


 かわした。だが、まさかの左手がスライディングしながら、残った足をとらえた。


 素早く立ち上がったリーファに片足を高く持ち上げられたナディアは、相手に背を向けると猫のような俊敏さで、マットにダイブする。



 飛び込み前転で片足を抜くと、一つ高くはね、リーファに向き直る。


 険しい顔で、スルスルと近づき、片手で相手の視界を塞いだ刹那、迷い無くタックルに行った。


 全力で体を投げ出し、タックルを切りに行ったリーファだけど、ナディアに片足をホールドされた。


 顔を歪めて、必死にこらえるリーファ、正座のまま、圧力に耐えるナディア。


 面白そうに見ていた福沢コーチが何秒か待って、ブレイクを宣言。


 二人は息を切らして、また睨みあった。


 何人かの下級生たちが、「あの、お姉ちゃん強い」と興味津々で見ている。


 今度は、ガッチリと組合い、そこからスタミナ無視の激しい攻防がはじまった。


 最初に長い足でナディアの足を払ってテイクダウンしたのはリーファだった。


 マットに抑えられたナディアはもがいて脱出、お互い立ち上がろうとした瞬間、ナディアが怒りも露わに弾丸タックル。


 リーファの両足をさらって細い体を抱いたまま二歩走り、派手にマットへとなだれ込んだ。


 被さってフォールしようとするナディアを荒っぽく押しのける。


 リーファは、ほどけた髪の間から見える目を吊り上げて立ち上がった。


 ナディアも、肩に届かない長さの髪をうっとうしげに払い除け、炎の様なガンを飛ばす。


 いや、初対面だよね!?


 その時、2分の終了を告げるブザーが鳴った。


 二人とも嫌そうに今度は、拳をぶつけ、同時に背中を向けた。


 ナディアは、ニコニコしている福沢コーチの方に肩で息をしながら向かう。


 僕は早足で出口に向かうリーファを追った。


 冷たい廊下の壁に背を預け、ゼエゼエ言いながら、へたり込むリーファ。


「凄かったな、オマエラ……大丈夫か?」


 リーファは、息も絶え絶えだったけど、僕に両手を広げて言った。


「ムリ。おんぶ」


「えー……」


 仕方なく背中を貸すと、遠慮なくのしかかってきた。重い。


 そういえば、いつからか、背中に胸のふくらみを感じるようになって、少しおちつかなくなった。


 いっつも補強するときペアだから、だいぶ慣れたけど。


 僕はエントランス近くのベンチにむかった。


「アイツ、入りに来たの?面倒くさいな」


「いや、それはない」


「……じゃ、何?」


 僕はスマブラの団体戦で組む事になった話をした。


 リーファをおぶったまま、ベンチにドスンと腰掛ける。


「しんど……離れろ、暑い」


 両手両足で僕にしがみついたまま、リーファは何故か低い声で聞いてきた。


 耳元に息がモロにかかってこそばゆいんだが。


「……で、アイツの家にいって親と姉にあった続きは?」


 僕は、愚痴を聞いてもらおうと勢い込んで言った。



「それなんだよ!二人でやれるとこまでやろうぜ、付き合ってくれよっていったら、泣きだしてさ。


 switch無断でポチるくらいだから、嬉しかったんだろうなって。


 ……首苦しいぞ?んで、レスリングの話になって、リーファの話したら、ついて来るって言ってさ。


 あ!今思えば、お前の事しつこく聞いてたの、スパーがしたかったのかな!


 そうそう、聞いてくれよ、うまく行ったら、レスリング休めるし、もしかしたら辞めれるかも!最高だろ!?

……え、私はどうなるのって……


 お前も辞めればいいんじゃね?

うん、それいいな!


 六年いなくなるから私もやめますって言ってさ、winwinじゃん!……


 ちょ、マジ苦しい……腹も……

それと、特訓だから、毎週土日泊まりに来てっていわれてるんだけど。


 お姉さんから、ナディアの部屋で寝ていいって言われてるんだけど、僕、寝相悪いし、配信聞きながらじゃないと寝れないんだよな……


 おい、震えてるけど、寒いのか?これナディアのお姉さんから借りたタオル」



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