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にいには




 せっかく、バイト君を引き当てたナディアだったけど、簡単に捕まえられる相手じゃ無かった。


 クレーンをかわしつつ、相手に胞子をかけたら、操作方向を反対に出来る、キノコを拾ったサトシ。


「くッ……!」


 かわしきれず、ナディアが操るCFの頭にキノコが生えた。これで、操作方向は逆になる。


 ナディアが、逃げに入るのを見越して、サトシは足の速いゼニガメにチェンジ、操作のままならないCFをコンボで、一気に追い詰める。


 反転キノコの効果は8秒。

 チェンジしたフシギソウが、上スマを叩き込むには、十分な時間だった。


 これで『2-1』

 ナディアは、後がない。


 負けんな、ナディア!

  僕は、歯を食いしばって、叫ぶのを耐えた。


 崖にぶら下がって、CFの無敵時間をやり過ごそうとする、サトシ。


 ナディアは、逆方向に走ると、アイテム、『落とし穴のタネ』をゲット。


 逃げずに、向かってくるゼニガメに、トリッキーな動きと先読みで、見事、アイテムをぶつけた。


 地面に埋まってしまったゼニガメ。

 

 プロコンが壊れんじゃないかってくらい、レバガチャするサトシを置き去りに、より、威力のある、振り向きファルコンパンチを叩き込む。


 ひとたまりもなく、吹っ飛ぶフシギソウ。


 観客席が熱狂する。

 これでイーブン。


「ナー、イケるよ!」


 相手のチームを見ると、アケミ(37)だけじゃなく、カレンまで、目を剥いている。


「………マジ?」


 カレンの呟きで察した。

 サトシを、ここまで追い詰めた奴は、いないんだな?


 サトシは、何も言わず、仕切り直すように、一度天井を見てから、モニターに前のめりになった。


 ハンマーを拾ったCFが、追いかけ回すのを、ゼニガメが、跳ねまわって逃げる。


 アシストフィギュアを掲げようとした、ゼニガメを下から蹴り上げる、CF。


 めまぐるしい攻防に、実況の絶叫。

 

 けれど、やっぱり、認めざるを得ない。

 

サトシは……ナディアより強い。

 

 僕でも、勝てるかどうかの相手に、ナディアは、サトシ+怪我の痛みと闘ってるんだ。


 ………ナディア、お前は、スゴイ奴だよ。


 ジリジリとダメージの差が開いていく。


 サトシ35%、ナディアは100%を越えた。

 いいのを喰らったらバーストする。


 けれど、ナディアは勇敢だった。


 ギリギリの恐怖と闘いながら、フシギソウに迫る。


 フシギソウが、重量級のリザードンに変身した。サトシが決めに来たんだ。


 けど、重量級は、攻撃が重い代わりに、攻撃を当てやすい。


 ナディアは、一発喰らえば終わりの恐怖を乗り越え、リザードンに迫る。

 リザードンの重い攻撃を………


 かわした!


「ナー、そこ!」


 ナディアが、掴んだ。


 床に叩きつける!


 リザードンが浮かんだ。


 サマーソルト。


 サマーソルト…………


 膝!


 入った!!


 紫のエフェクトと共に、リザードンがぶっ飛ぶ。


「やっ………」


 ………バーストを免れたリザードン。

 重量級の拒否は強かった。


 でも、ダメージはほとんど同点。

これ、デカイ!


 そう思った時。


 崖外から復帰しようとする、CFと、内側に落下したリザードンの高さが……


 並んだ。


 背筋を、すぅっと冷たいものが走る。

 僕は叫んだ。

 

「ヤバ……」


 咆哮ともに、リザードンの体が炎に包まれた。


 失敗したら自滅する、崖外方向へのフレアドライブを喰らったCFが、ひとたまりもなく吹っ飛んだ。


『Game Set!』


 口許を押さえる、メグ。無表情のナディアママ。


 肩で息をするサトシと、固まっているナディアの後ろ姿。


 ………負け……たのか。


「………」


 サトシは何も言わず、立ち上がった。


 呆然とする、僕達。

 同じくらい、呆然としている、相手チーム。


「にいにが………ウソでしょ?」


 カレンの震える声。


 思わず、そちらを見ると、金髪碧眼のオカッパは、蒼白で唇を震わせていた。


 アケミ(37)も、凍りついている。


 勝ったのに………何だよ、コイツラ。


 足を引きずる、ナディアの眼に浮かぶ、涙。

 素早く、拭いて言った。


「スマン。リー……」

「任せな。もう、汚い手は通じないから」


 張り詰めた表情のリーファが、相手に聞こえる様に言った。


 サトシは、接戦がよほどショックだったのか。

 

 リーファの声も聞こえてないみたいに、ドラえもん姿のまま、床を見つめている。

 アケミ(37)もだ。


 カレンは違った。


 すぅっと、無表情に戻り、立ち上がる。


 選手のコールにあわせて、二人はモニター前に座った。

 

『両者、握手をお願いします』


 冷たい視線を交わしながら、二人は手を握りあう。


「にいには、どのみち勝ってた。優し過ぎるだけ」


「笑わせられなかったら、クララが勝ってた。ケガしててもね」


 手を離し、画面に向かいながらリーファが言った。


「なら、アンタも私に優しくしてよ……私はしないけどね」


「………壊す」


 2戦目が始まる。


 



 

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