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三章 ネトデラ少女(4)

林堂 凜


 主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。


 香咲 ナディア=マフディー


 小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。


 ジン


 クラスメイト。男。クラスのリーダーで、優しい


 佐竹


  クラスメイト。女。クラスのボス。


鈴香 

  

  ナディアの姉。高校生。

でも、それより、団体戦での出場と、地区大会突破の可能性が爆上りした事にテンションが高まる。

 

「じゃあ、DXやってるとこ見せてくれるか?この眼で確かめる方が早い」

 

ナディアは急に元気づいて言った。

 

「望むところじゃ」

「まだこっちの話が終わってないんですケド?」

 

そうだった。

 

「私は賛成ですよ」

 

「ママ!観たでしょ?」

 

「負けんかったらええんじゃろ?ウチは負けん!」

 

「ナディア」

 

「はい、ママ」

 

ママは真顔でナディアを見つめた。ナディアは目を逸らさなかった。

 

「本気なのね?」

 

「うん、本気じゃ」

 

「……わかりました」

 

「ママ!本気? 女の子なんだよ!?」

「鈴香、見せてもらった試合の中には、女の子もいましたよ」

 

「アイツらに見つかったら……」

 

「パパが今、なんとかしようと頑張ってます」

 

「ムスリムだよ、一応?」

 

「家訓の方が神様より上です」

 

スゲエこと言うな!?

 

言葉を無くしたお姉さんを尻目にママは静かに言った。

 

「ナディア、家訓を言ってみなさい」

 

「自分で決める、決めたらやる、自分で責任をとる」

 

「よろしい、とことんやりなさい」

 

頭を抱えるお姉さんを尻目に

ママは僕の方を向いて深々と頭を下げた。

 

「林堂くん、娘を宜しくお願いしますね」

 

僕は正座を崩さず、真面目くさって、はい、と頭を下げた。


 やってやる。


 僕は久々に心から熱くなった。


 ナディアの家族、みんないい人だ。心からナディアの事を心配してる。

 

僕は彼女の方を見ずにいった。

 

「ナディア」

 

「はい」

 

「付き合ってもらうぞ」


 キツイ特訓になるけど……


 その価値は絶対にある!


 静まり返る部屋をよそに、僕は繰り返した。


「大変だろうけど、最後まで、付き合ってほしい。きっと僕達なら大丈夫……」

 

僕はちょっと、熱くなりすぎているかも、しれない。

 


 構うもんか、あと一人は普通よりちょっと上でいい。三人揃えば、大阪大会は必ず突破できる!

 

「……ナディア、返事をなさい。自分の意志で」

 

「あ、あの、ウチ、そんなん急に」

 

僕はナディアの方を見た。

 

目を見開いて、怯えた顔で唇を震わせている。

 

「ついてきてほしい、一緒に頑張ろう。行けるとこまで」

 

「ナディッ、返事ッ!」

 

「は、はひっ」

 

ママが、ビックリするような厳しい声で叫ぶと、ナディアは半泣きで、床にぺったり平伏した。

 

「よろじくお願いじまず」

 

顔を覆って泣き出した。

 

お姉さんは、魂が抜けたような顔をしてる。

 

あれ、僕きつかった?

 

ママは静かに、

 

「よろしい……香咲家に、二言はあんまりありません」

 

微妙に不安になる事を言い、立ち上がった。

 

「まずは、林堂君の家に謝罪に参ります」

 

「えっ!?なんでですか?」

 

ママは辛そうに、僕の頬に触れた。

 

「なんの咎もない、他所様のお子さんに、手を上げたのです。顔も腫れてきてる……本当にごめんなさい」

 

「ああ……」


 言われて急に痛みだしたけど、僕は努めて明るく言った。

 

「しなくていいです、そんなこと。親には遊んでて、女の子にぶたれたって、ホントの事言いますから」

 

ママは目を丸くした。

 

「両親、絶対喜びます。僕もてないんで」

 

ママは大笑いした。手を叩き、お腹を押さえ、涙を流して。

 

僕は内心ガッツポーズをとった。

 

ママは、涙を拭い、僕の頭を撫でた。

 

「ナディアが、学校の男子の愚痴の後、必ず、林堂とは、エライ違いじゃって言うんだけど……」

 

ずっと頬を抑え、赤い顔をしているナディアを見つめるママ。

 

「ママ、やめてえな……」

 

「そのとおりね。ママこの子気に入ったわ」

 

今までより、ずっと優しい眼で見つめられ、僕はなんだか、顔が熱くなった。

 

何故かナディアが、僕の前で通せんぼする。

 

「ママにはオトンがおるじゃろ!」

 

ママはにっこり笑って言った。

 

「誰それ?」



 10分後。


 僕らは、ナディアの部屋で、パソコンのモニター前に集まっていた。

 

「……え? ネトデラ? これか!」

 

オフでは、ブラウン管の印象が強いから、

キャラ選択画面がモニターに映るまでスマブラデラックスって、分かんなかった!

 

「……さーちゆあちゃれんじゃー……SPでいう、対戦相手を探してる画面か」

 

「運が良ければ、すぐあたるけん……当たった!……フォックスか」

 

「最強キャラ来たな」

 

僕、ママ、お姉さんが見守る中、ナディアは交互に掌をぬぐい、傷だらけのGCコンを構えた。

 

『デラとは、フォックス・ファルコの二強を、他キャラで成敗するゲーム』

 

リアルの集まり(オフ会)で、デラ勢がそう言ってたけど、デラックスは、ホントにキャラの性能差が激しい。

 

そしてSPに比べ、手動な部分が多い。

 

……そういえば、ナディア、何でデラ勢になったのかな?

 

聞く暇なくはじまった。

 

『Ready Go!』


の煽りが新鮮だ。


空中に台のあるステージだ。


ナディアの、キャプテン・ファルコン、対戦相手のフォックスは、即座に台から降りると相手につっかかる。


 どちらも足が速いキャラだ。高速で振り向きながら微妙に出入りを繰り返すフォックスに、ファルコンの飛び蹴りがヒット、掴んで叩きつけ、浮いた所にヒザをぶつける。


 ブーツを履いたキツネが、崖外にくるくる舞う。

けど、フォックスは、ヘルメットを被ったおっさんキャラの追撃をかわし、着地するや、サマーソルトキックで反撃。

 

ナディアが握る、GCコントローラー特有のガチガチ音が更に激しくなる。

 

カッ、カカッコ、カチッ、カチッって歯切れのいい音がする度、ファルコンが舞う。

 

BGMの『激突!グルメレース』、次の日まで耳に残って離れない。オフ勢がかかる病気だ。


 

両キャラが、激しくすれ違い、ファルコンが踏み付け、フォックスが開脚して、崖外に相手を飛ばす。どちらも素直に崖外から帰らない。

 

甘い復帰は狩られるからだ。上からと見せかけ、下から炎に包まれ復帰するフォックス、『絶空』と呼ばれる空中をスライドするテクニックで崖から帰るファルコン。

 

けど、復帰ミスでナディアが1スト落とした。

 

「やってない!……見られてると緊張するのう」

 

ブツブツ言うナディアに嬉しくなる。



 この、言い訳がましさ。


 これぞ、スマ勢だ。


 相手のフォックスは、僕から見ても手練だった。

 

台からの降り方も早く、リフレクターを使ったコンボを、当たり前の様に使ってくる。

 

ナディアのファルコンも、着地キャンセル、スリップを止める真下への絶など、細かいテクニックを当たり前の様に駆使している。

 

めまぐるしい攻防の中で、フォックスのへばりついて離れないコンボに撃墜されていくファルコン。


 ナディアも、的確にヒザを当て、1スト落としたが、結局3スト残しで負けた。

 

「ちがう、たまたまじゃ!もう一回」

 

「……いや、慰めとかじゃなくて、ナディア、スゴイよ。お姉さんが、天才って言うだけある」

 

ナディアの腕はよくわかった。

 

叫び出したくなってきた。

 

これ俺達、全国も優勝しちゃうんじゃね?


その時、可愛らしい柱時計が、17時を告げた。

 

「あ……しまった。こんな時間だ」

 

「林堂くん、ご飯食べて行きなさいな」

 

「そうじゃ、ママのご飯美味しいぞ」

 

「いえ、習い事があるんで」

 

ブツブツ独り言を言ってたお姉さんが口を挟んだ。

 

「ナディ、知ってた? アンタ何やってるの?」


「え、いや別に……」


 急に、食いつくお姉さん。

  

 「………何故濁す?言いなさい、ナディアと組むんだから、私達には知る権利と、義務があるの」


 えー、そんなもんなのかな?


「あの、吉田のアニキが…… 霊長類最強の人がやってるヤツ……です」


 固まる三人。


 一番驚いたのが、冷静沈着なナディアママまで、目を見開いてる事だ。


 「へ?……レスリング?マジ?女の子みたいな顔してんのに、意外」


 僕は反射的に叫んだ。


「それ、言わないでくださいって!」


 そうだ。何回、それで同級生とケンカになったか。


 あー、思い出したくない! 


 「あ、ゴメン、気にしてるんだ?

 もう言わない。

 

 ふーん……


 「あー、好きでやってるんじゃないんだ、大変だね? 誰かさんみたい!ねーナディア。こんな偶然あるんだねえ……わ、わかった、ナディアゴメンて。んで」


 下の牙をむき出す、妹から目をそらし、鈴香さんは、ここからが、本題な? って顔をした。


 イヤな予感。


 「同じ学校の子は……いない?メジャーなのにマイナーだもんねえ。シューズ地味に高いし」


 え、イヤ、詳しすぎね?


 ちょっと怖いんですけど。


「同学年の女の子とかいる?……1人いるんだ。強い? かわいい?……」


 僕はさすがに、口をとがらせて言った。


「関係ないじゃないですか、そんなの! そんな事聞いて、どーすんですか?」


 スマブラと、いや、可愛いかどうかなんて、レスリング(クソ競技)とも、関係ないって!


 鈴香さんは、怯まない。

 


 「知りたいから知りたいの。言いんさいよ」


 う……


 何、この威圧感のない、圧力。


 逃げれそうになくて、観念した。


 ちょっと顔が熱くなる。


 「え、見てくれとレスリングは、まあまあ強い? 幼馴染の相棒だけど、自分にばっかり絡んできてめんどくさい?へー、だってさ、ナディ……眼怖いよ…… ママも眼笑ってない」

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― 新着の感想 ―
[良い点] あ、追加です。 姉の言葉、別に長いとは思っていないです。 おそらく捲し立てる場面だと思うので、それくらいの文量は必要なのではないかと。 ただ、林堂がタジタジとなる場面なので、圧倒される可愛…
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