任天堂・法務部に挑むサムライ達
ナディアより一言
「みんな、おつかれじゃ。早う、お風呂はいりんさい」
「……ありがとうございます。勝ててうれしいです」
勝利チームのインタビューで、アケミ(37)
選手が、柔らかい京都弁?で、ホッとしたように答えていた。
前に立ちたがるタイプでは無さそうなのに、
進行のお姉さんの、誰が喋りますか?の
「誰が……」
の時点で手を上げ、向けられたマイクに慌てて歩み寄ったんだ。
「このまま、次も勝てたらええなあ、思います。ありがとうございました」
と、しんみり話す間、カレンはどこか遠くを見てるし、サトシは、又、鼻眼鏡をかけ、アケミ(37)選手の会話に合わせて、吹き戻しをスピスピしていた。
「そうですね、次も頑張って下さい……」
そう言ってくれる、進行のお姉さんに、ペコペコ頭を下げ、おどおどする、アケミ(37)。
「あれ、キョドり過ぎじゃね?芝居にも見えないけど」
「それな」
リーファの呟きに、ナディアが応える。
……すぐに分かった。
ビクビクしながらも、必死で進行のお姉さんから、仲間をかばう動きを見せるアケミ(37)。
努力むなしく、お姉さんは、明後日の方向を向いている、金髪の少女にマイクを向けたんだ。
「カレン選手、自分の立ち回りは、どうでしたか?」
アケミの顔面が、蒼白になり、ノロノロとマイクに向き直る、オカッパの背後にスササっとまわる。
碧眼のカレンは、空気を読まず、美しい声で、
「〽そんな事より気になるのぉ〜」
突如、歌い始めた。
「あ、タブレット・純のネタだ」
「あんなマイナー芸人まで……やりおる」
ウマ娘二人が感心している。
アケミ(37)の右手が、スカートのポケットに掻き消えた。
「〽任天堂、白猫プロジェクトとのコロプラ訴訟はどう……ふごっ」
殺し屋の様にメガネを光らせ、背後からカレンの口をハンカチでふさぐ、アケミ(37)。
会場の一部が静まり返る。
主に、スタッフ側の陣地が。
「やりおった……!」
「カミカゼ過ぎんか、アイツラ!?」
僕も二人に、完全同意!
アイツラ、一線越えとるやんけ、全国行く気無いだろ!?
「スミマセン!コノ子、日本人じゃないんで、ペルシャ語以外は……ひいい……こ、これからのコメントは、日本語達者な、私に是非!」
……一体、進行のお姉さんに、どんな顔で見つめられているのか。
去年の配信でも見た、進行のレイお姉さん。
どんなクソコメも、NHK・夏休み子ども科学電話相談の手練の進行者みたく、瞬時の機転で乗り切ってたけど、これは……
ショートヘアの進行のお姉さんの後ろ姿からは、不可視の炎が見えた。
ぐったりと、おとなしくなったカレンを抱えたアケミ(37)は、恐怖で内股になってる。
返事の無い、進行のおねえさんから、ガタガタ震える、アケミ(37)を庇うように、鼻眼鏡を外した、サトシが手を広げた。
「待って下さい、僕が悪いんです!」
侠気をみせるサトシ……って言いたいとこだけど、絶対オマエが黒幕だろ?
「僕が……僕が悪いんです……バーニング・アケミ(37)に『言わないと、マリカー事件とティアリングサーガの件も付げっ」
急所蹴りを喰らわし、うずくまるサトシを猫の様に吊り上げる、アケミ(37)。
レイお姉さんは、くるりと振り返り、何事も無かったかのように、
「はいっ!と言うわけで、次も頑張って下さい!では、あちらの方へ〜」
と、退場通路では無く、反対側の、怖い顔をしたスタッフさんの待ち構えるスペースを指した。
手のひらじゃなくて、人差し指で指してるところが、メッチャ怖い。
「え、ええっ!?」
と涙目で、二人を引き擦り、退場口と、逆方向にカニ歩きすることになった、アケミ(37)。
スマ勢に混じって、うさ山さんと、ラビさんまで、床を転がって、笑い死にしそうになってる。
「くッ、アイツラどこまで……!」
「最強すぎるじゃろ……!」
拳を震わせ、唇を噛む二人。
マジ、それ。
アイツラ、どこまで駆け上る気だ……!
『さあ、準決勝4チームが出揃いました……』
遠くに聞こえる、実況をぼんやり聞いていると、観客席の、僕らに呼び出しがかかった。
二人を抱え、半泣きでスタッフスペースに消える、アケミ(37)と、それを、アツく見つめるスマ勢。
「ママみスゲぇ……」
「尊い……」
「おギャリてぇ」
等とこぼし、又、うさ山さんにシメられてる。
「はうっ……こんなのむしろご褒美……」
張り倒され満足げな、ヲタク達を白い目で眺める女子三人。
ぼくは、気を取り直して、言った。
「えーと、なんだっけ?……そうだ、勝つのは俺達だ!」