表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/1077

ハイスペックな女たち(JS)






 僕は絶望のあまり、絶叫してしまった。

 

 救いは、あまりのショックに、アホみたいな、裏声になってた事。


 周りが何事かと振り返る。

 受付のスタッフが、真っ青になって、こっちを見てる!


 そうだよね!

 もうヤダよね、いらんトラブル。

 

 ま た お ま え か


 目を見開いた顔に、そう書いてあったから、慌ててペコペコして、会場入口まで駆けた。


 ホントは、ジュースコーナーに逃げ戻りたかったけど、もうすぐ出番だ。


 腰を低くして、声もおさえて喚く。


「いや、色々あって、今もウマ娘!……ハ? 気に入ったわけ無いだろ、地獄だわ!送信、取り消して!………read(既読)ついた? おま、なんでそんな、仕事早いのさ!?ああああ……」


 力尽きたぼくは、滑り込むように、治療を終えたらしい、ナディア達のそばにorzした。

 

「ど、どしたん、ベル!?」


 顔を上げると、目を丸くした、ナディア。

 ……良かった、さっきの顔、見られてなかったみたいだ。


「……オリガ経由で、ナディアのお婆さんに、配信のURL、送っちゃった……」


 数秒して、ナディアが目を見開いた。


「ベル、コスプレ見られてええんか!?」

「ベル、何、そのメガンテ(自爆)な姿勢!?」

「ヨカッタ!やっと自分の可愛さに気づいたんですね!……イデェってば、はなひれ!」


 僕は、メグの頬をつねるのをやめ、四つん這いの姿勢から、地面に押し付けていた、スマホをノロノロ持ち上げる。


 僕が口を開く前に、オリガが何か言ってた。


『……リン、リン!あ、やっと出た……リンの言う事はワカッタヨ。デモ……ナディアはドウナノ?リーファは?』


「リーファ、ナディア。オリガが、こんなに迷惑かけたのに、行って良いんだろうかって。マフディ家はどうすればいいのかって」


 リーファは、怪訝な顔をしてたけど、一言。

 

「アホか。はよ来いって伝えて……ナー、言ってやんなよ」


 不安げにリーファを見上げてたナディアは、俯いて……ポツリと言った。


「………林堂は、ええんか?実家だけちゃう、ウチもいらん失敗ばかりじゃ。また、さっきみたいに怒らせるかも知れんよ……」


 メグは気まずそうに顔をそらし、リーファは額をおさえ、僕は顔が熱くなった。


 見られてたのか。


 僕を気遣って気づかないふり……


 情けないけど、このハイスペックな女子達には全然、敵わない。


 ……でも。

 

 ごまかしなんかいらない。

 僕は心から言った。


「ホント、ゴメン。全部僕が引き起こした事なのにね……だから」


 僕はナディアの手を取った。

 至近距離から見つめ合う。


「こんな、足りない僕だけど、これからも助けてくれる?」


 ナディアの眼から涙が溢れた。

 リーファの舌打ちとボヤキ。


「……ったく泣きたいのは、こっちだっての。貧乏くじばっかり」


 ぼくは思わず笑った。


「イチバン迷惑かけるな……でも、今更なんだろ、相棒?」


 リーファに軽く蹴られる。

 俯いて、ぽたぽた涙をこぼしていたナディアは、ぐじぐじと、顔を拭いて言った。


「オリガ、後で写真送るけん、『婆っちゃん』に転送たのむわ………あと、早よ来んちゃい」


『…………オマエラ、マジ、バカばっかりダネ……りょ……アリガト』


泣きやんだナディア、赤くなった顔で、僕らを手招きした。


「おまんら、ちょう、よりんさい……メグ、カメラ頼む………メグ?」


 振り返ると、メグは呆然と口を開けて、スクリーンを観ていた。


 そこでは、今、対戦している、2チームの闘いが映し出され、実況の興奮した声が小さく聞こえてきてる。


 Gブロック代表対、ᕼブロック代表の一戦目。


 小戦場って呼ばれる台有りのステージで、ジョーカーと、ポケモンが戦っていた。


「あの……私、スマブラわかんないけど、全然……」


 メグが、スクリーンをガン見したまま呟く。


 僕も気づいた。


 Gブロックのジョーカー、かなりいい動きだ。


 僕の心臓が跳ねるくらい。


 大技は、ここぞと言う時しか振らず、ジャンプも、技の置きも、僕でもそうするって場面で、的確な択を選んでる。


「めちゃめちゃ上手くないですか………」

 

 これ……このジョーカー、リーファとどっこいどっこいくらいはある!


 僕の頭の中から、スマブラ以外の全てが追いやられた。


 ……普通一番強いヤツは、3戦目に出てくる。


一戦目でこれって……


 ナディアとリーファも、呆然としている。


 気づいてしまったんだ。


 事のヤバさに。

 

 ダメージレースは、残り1ストック対、2スト、ダメージは……


  0%と、108%

 

『ペルソナ!』


 ジョーカーが、最強スタイルに変身する。


 おまけに、体が光って、切り札がいつでも使える状態だ。


 行った。


『行くぞ!』


 一瞬のムービーの後、ジョーカーが、瞬速でゼニガメを横切る。


その時。


 ゼニガメが、フシギソウに、ポケモンチェンジ。


 ポケモンチェンジのわずかな瞬間、キャラは画面上から、入れ替わるために消える。


 何もない空間をジョーカーは、切り裂き、

 切り札は不発に終わった。


 リーファとナディアの声にならない悲鳴。


 その神業に、僕は頭が真っ白になった。


 ………これ。

すべてのキャラの切り札とそのフレーム(時間)を理解してないと無理なヤツだぞ!?


 言葉を失くした僕らの目に映ったのは。


 Hブロック代表のあいつが、あの、変なTシャツを着たあいつが、しかめっ面で、メテオを叩き込み、パーフェクト試合(ゲーム)を決めたシーンだった。


 メグの震え声が、僕の脳内でこだまする。


「めちゃめちゃ強くないですか……あの、ポケモン?」



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ