このところ晴れ
身近な人が、いつまでも居てくれるなんて思ってないけど、突然に居なくなる想定はしていないものだ。その準備が、出来ていなくても人は悲しみの縁から戻ることができる。それは、恋人かもしれないし、友人かもわからない、でもきっと、家族も大きな支えになると願いたい。
朝は、どんなに頑張ったてやてきてしまう。
いくら寝ようと、したって明るい日差しは容赦なく、カーテンの隙間から入り込んでくる。布団をかぶってたって、目が覚めてしまったから、僕の負けだ。
仕方がないと、割り切って起き上がろうとするけれど身体は、錆びたロボットみたいにギシギシと、音をてて上手く起きることすら出来ない。ゆっくりと時間をかけて、ベッドに座りため息をついた。
「あぁ、また残酷な日常が始まるのかぁ」そう思うと、いつも目の奥から涙が流れてくる。これが、僕の正常で異常な朝のルーティーンとなっている。
そのとき、部屋のドアが勢い良く開き姉が、入って来た。「今日は、天気いいけど学校行く?」僕は、首を横にふった。
「あっそっ!」冷たい言葉をなげかけて勢いよくドアを閉めた。
ドアに、感情があったら同情する。下の部屋で、両親と姉が会話していることが聞こえてきた。
「もう、いい加減病院連れてけばぁ」と、姉の声。
「そうよねぇ、もう一週間も食べ物を食べてないんだからね」母は、不安そうに言った。
父が、「よし!そうとなったら行く準備だ。意地でも、病院へ連れて行く!」と意気込み。
ぼくは、その茶番劇に可笑しくなった。鏡で自分の姿を見た。この数日間、電気もつけない、カーテンも開けない、ドアには、鍵を閉めて周りの全てと関わりをたった。自分にすらも、興味がもてなかった。
痩せ細り、骨に皮がひっついているだけの、あばら。お尻には、肉が無くごりごりしていて座ると痛い。頬は、痩せこけて別人の顔。「相当、いっちゃってるな」なんだか、馬鹿馬鹿しく思えて笑えた。
父が、ドアをノックしたときには、すでに、ドアの前に毛布をまとって待ち構えていた。驚きの表情を見せた父だが、すぐに「行くか?」
「うんっ」と僕は、頷いた。
一週間ぶりに吸い込む外の空気は、なんとも心地よいものだった。しかし、太陽の日差しの強さは、まだぼくには早かったようで立ち眩みを起こして、父に両脇を支えてもらい、やっと車に乗り込んだ。
隣街の大学病院までは、2時間かかった。
真っ白。しろ【白】①雪のような色。②囲碁で白いほうの石。③〘俗〙無罪・潔白の意。対 黒。
純白、純粋、純潔、純真、どの言葉も『白』のイメージが、沸いてくる。
高校生のときに友人が、「わたしは白の下着しか身に付けないの」と唐突に言ったことを、いまでもはっきりと覚えている。
どうでもいいことなのに鮮明な記憶として残っているのは、彼女がごりごりのゴスロリを着ていたからだ。真っ黒な皮を脱いだら、真っ白なのだ。わたしは、白にた対して特別な感情は全くなかった。
「怜ちゃんって、色白だし清楚なイメージたよね」
「毎日、図書館行ってそう」
「男の子に興味深くなさそう
「一人っ子っぽい」
勝手な判断で、決めつけられてしまう。わたし自身、友人にそれを否定する勇気がなく、毎回イメージ通りに振る舞ってしまう。自分ではない、自分を演じる。
学校は息の詰まる苦しい場所となった。その時に比べればいまは、天国かもしれない。
だけど、地獄でもある。ずっと、白い天井ばかり見て過ごし、決まった時間に、食事をとり寝るの繰り返し。生きてるというよりも、宇宙人に捕まって小さな檻に入れられたような、生かされている状態。
ドアが、開き看護師が、点滴を交換するために来た。
天気がいいとか、朝晩冷えるとか一方的な会話に頷きながらも、視線はずっと天井に向けていた。しみかなにかが、あればお化けにみえないかなぁとか想像して楽しめたものに、ここは、新しく併設した病棟でどこもかしこも真っ白だ。
「くそつまらない世界!」怒りが、こみあげる。
家族、兄弟と同じ環境で長く生活していると、なぜか価値観が、近い。友人の中で、自分は浮いてる?と感じても、家族の中だと、ごく普通だったりする。不思議だなぁ。生き方ひとつで、人生は変化するものなのだろうか。