七「再会」
明くる土曜日の朝。
わたしは、甍の波を叩く雨音で目を覚ました。
「あっ……。そういえば昨日、入道雲が出てたっけ」
数秒ほど、起きたての間抜けな顔で窓の外を眺めていたけど、すぐに両手で頬をパシッと叩いて気合を入れ、半袖のパーカーとジーンズに着替えてから、傘を片手に外へ出た。
「おはよう。今日も元気ね」
「あっ、どうも」
「こんな朝早くから、おつかい?」
「あっ、ハイ。ちょっとコンビニまで」
「そう。転ばないようにね」
近所のおばさんとすれ違いがてらに挨拶しつつも、昨日の河原を目指してひた走る。
途中で信号にひっかかりながら、十分少々で到着。その間に、雨足はどんどん強まり、本降りになっていた。
すぐにフリスビーとモップは見つかったけれど、肝心の犬の姿がどこにもない。
ひょっとしたら、野良犬と間違われて保健所へ連れて行かれたんじゃないか。
そんな最悪のケースが頭をよぎった刹那。
「きゃうん!」
「った!」
背後の段ボールが引っくり返り、中に身を隠していた犬が体当たりしてきた。
寂しがって震えてるんじゃないかと思ったのに、そうではないらしい。
不意打ちを食らったおかげで、傘は手放してしまったし、顔面から雑草伸び放題の地面に突っ込んでしまった。
このまま、昨日に続いて第二ラウンドに突入しようか。
いや、違う。
「くぅん?」
わたしは傘を放り出したまま、スウェット生地やデニム生地が水分を吸収して重たくなるのも厭わず、両腕でしっかりと犬を抱きしめ、半日ぶりの再会を涙ながらに喜んだ。





