二「挫折」
ここで、何の得にもならない身の上話をしよう。
わたしが中学二年生であることは、前段でお分かりだろう。
問題は、それ以外の部分で、主に父親と周囲の人間について不満がある。
わたしは至って普通の、どこにでも居そうな中学生で、母親も、どこの町内会にも一人は必ず居るタイプの主婦だ。
だが、わたしの父親は、円盤投げのプロ選手だ。それも、オリンピックでメダルを獲得したことのあるという、正真正銘、折り紙付きの名選手だ。
で、どうしてそんな父親に不満があるかと言えば、父親が有名であるが故に、娘であるわたしまで円盤投げの才能が眠っているに違いないという目で見られるからだ。
ちょっと考えれば分かることだけど、円盤投げの技術は後天的に身に着けるものだから、いくら親が優秀だろうが何だろうが、生まれてくる子には全く関係ないものだ。
だって、運動選手の子供がみんな赤ちゃんの時からスポーツの技術をマスター済みだったら、もっと競技人口は増えているはずじゃない。
一応、わたしだって努力はした。それこそ、血の滲むような特訓を。
お父さんから直々に手ほどきを受けて、最初の一年くらいは我慢して練習を積んだ。
だけど、なかなか上達しないし、地区大会に出ても結果は散々だったから、だんだんやる気が無くなっちゃって。
それで、ズルズル続けていくより、スッパリ断ち切った方が、わたしにとってもお父さんにとっても良いと思って、中学校に上がるタイミングで辞めることにしたの。
自分でも情けない話だと思うけど、諦めるタイミングとしては悪くなかったから、後悔はしてない。





