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第5話 ラッキースケベの行方

「あ、ごめんなさいね。わたしは青羽(あおば)陽菜子(ひなこ)。一応白石くんと同じクラスよ」


 そういえば思い出した。あのとき転んだ夕凪の後ろから、もう一人女の子が来てたような気がする。確かにあの位置からなら状況はよくわかっただろうが……。同じクラスだったのか。ってか俺が夕凪のパンツを見てたことはバレバレだったってことか!?

 いやいや、落ち着け……。こっちにパンツを見せていたってことは、後ろから見てた青羽からはこっちの状況まで詳しくは見えなかったはずだ。いやでも、夕凪から状況を聞けばすぐわかることか……?


「ほうほう。……で、白石が何かやらかしたのか?」


 何事かと面白そうなものでも見つけたとばかりに、空閑(くが)が勝手に話を進めようとしている。

 俺が悪い方向に進めようとしていることに気をよくしたのか、夕凪は俺をびしっと指さすと。


「こ、……この変態に見られちゃったのよ!」


 何を、とは言わない。『変態』という言葉にすべてが込められているような勢いだ。いや実際に込められているのだろう。変態に見られたと言われれば、なんとなく何を見られたのか想像がつきそうなものだ。


「ほぉ……」


「ちょっと遥? 気持ちはわからないでもないけど、それはちょっとかわいそうじゃない?」


「……いや、さすがに後ろで物音が聞こえたら振り返るだろ」


 なぜか(かば)ってくれる青羽に便乗するように、言い訳は自分でもしておく。変態というのは全面的に認めたらダメなやつなのだ。死んだじっちゃんも言ってた気がするし。


「で、でも……。すぐに視線を外してくれたっていいじゃない!」


 顔を真っ赤にしながら尚も俺を責めてくる。なんとか助けを求めて空閑を見てみるが、まじめな表情で口元を引きつらせて笑いをこらえている。


 ……こいつはダメだ。


「はぁ……、そんなので変態っていうんなら、この世の男のほとんどが変態になっちゃうじゃない」


 呆れたような声音で夕凪を宥める青羽だが、あんまり効果はなさそうだ。


「だって……!」


「いやまぁ、俺も悪かったよ。ごめん」


 見てしまったことには違いないのだ。こうも変態変態と連呼されてはたまらないし、とりあえず謝っておこう。


「でもまぁ、次からは人の目の前で転んだりしないでくれよ」


 だが付け加えた一言は余計だったようだ。


「あ、当たり前じゃない! あんたに言われるまでもないわよ!」


 鼻息荒く、肩を怒らせながら立ち去っていく夕凪。


「ごめんね、白石くん。……またね」


「あ、あぁ……。いやむしろ間に入ってくれて助かったというか……」


 歯切れの悪い俺に苦笑を浮かべつつも手を振って去っていく青羽。まぁなんにしろ、高校生活を平和に送る上で、ひとつの懸念事項が消えたと言っていいだろうか。ちょっと肩の荷が下りた感じでほっとしていると、ガシッと肩を組まれた。


「さぁ白石クン。ちょっとお昼食べながら詳しい話でも聞こうじゃないか」


 そこにはいい笑顔の空閑がいた。




「ぶはははは! リアルでラッキースケベとか笑える」


 俺たちは今、学校の最寄り駅の下にあるマックに来ている。このあたりの電車は高架上を走っているのだ。

 予定通りにお昼を食べながら、予定になかったことの詳細を空閑に話してやった結果がこれだ。予想通りにちょっと殴りたくなったりしたが一応控えておく。


 昨日どこ行ってたのか聞いたときはなんで教えてくれなかったんだとは言われたが、クラスメイトのパンツ見た話をするのはかわいそうだろうと言うと一応納得してくれた。電話番号間違えて教えてしまったこととチャラにしてやるよとは言われてしまったが。

 ちゃっかりしてると思えばそれまでだが、もしかすると俺が打ち間違えた可能性もあるわけで、ここは何も言うまい。


「ホントにラッキーだったら、『変態』なんて言われないと思うんだけどね……」


 ため息とともに愚痴をこぼすが、それでもクラス中に広まってなかっただけマシと思うしかない。高校二年になって二日目で、平穏に過ごせなくなるとか最悪の事態になっていなかったことには感謝だ。


「まぁまぁ、いいじゃないの!」


 ここで俺の肩に腕を乗せ、小声で尋ねてくる。


「で、……何色だった?」


 はぁ……、まったくくだらないことが気になる男である。このせいで俺は面倒な目にあったというのに。……とはいえ、男として興味があるのは理解できる。実際に昨日、すぐに視線を逸らせなかった俺自身が言うんだから間違いない。


「……白だったよ」


 しみじみとそう告げてやると、「なるほど」と何度も首を縦に振って満足そうだ。結局この日は男二人でエロトークを繰り広げて解散することとなった。

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