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第14話 相談

『どうしてもそっけない態度を取ってしまう男性がいるんだけど、どうしたらいいと思う?』


 四月も終わりになったころ、『こま』さんからそんな相談が持ち掛けられた。


『あ……、友達の話なんだけどね』


 追加情報に思わず笑ってしまう。こういうときは大体本人の相談なことが多い気がするが、そもそも俺たちはただのライン相手なのだ。どこの誰ともわからない相手に友達の話と偽る意味もない気がする。となると、やっぱり本当に友達の話なのかもしれない。


 ――それはともかく。


『……まずその友達はどうしたいんでしょうかね?』


 もっと普通に話せるようになりたいのか、それともいったん距離を置きたいのか……。雰囲気的には違うと思うけど、金輪際話をしたくないとか。とにかくどうなりたいのかがわからないとどうしようもない。


『あと一応確認ですが、その友達っていうのは女の人ですか?』


 これも重要なことだ。『こま』さんは女の人だと個人的に確信しているが、本人に確認を取ったわけではない。その友達ともなればなおさらだ。たぶん同性だと思うけど、これでもし男だったらちょっと引いてしまう。男にそっけない態度を取ってしまう男の相談事とか、どんなBLだって話だ。


『あ、うん。友達は女の子だよ。……どうしたいっていうか、うーん。普通に話せるようになりたいんじゃないかなぁ……?』


 詳しく話を聞くと、もともと男全般が苦手というわけではなかったらしい。ほかの男の人とはまぁ普通に会話はできるとのこと。その男性に勘違いでひどいことを言ってしまったらしく、ずっと謝れないうちに苦手意識を持ってしまったらしい。


 やっぱり謝るのが一番いいとは思うんだが、それができたら苦労はしないよなぁ。たぶんそれは本人が一番わかってるんだとは思う。……何かきっかけがあればいいんだろうけど。

 というか『こま』さんの友達の状況がわからないし、どうしたもんか。うーん……、そうだなぁ。


『他の友達も誘って一緒に遊びに行ってみるとかどうです? やっぱり謝るのが一番だとは思いますが、プライベートで遊びに行けば何かきっかけが見つかるかも?』


 そもそも遊びに行くような他の友達がいればだけど、そこまでは俺も知らないのでとりあえず提案するだけだ。

 俺の案が却下と思うなら『こま』さんも案を出すしかないだろう。俺が思いつく案と合わせて、友達がどれを選ぶかはその友達次第だ。まぁ好きなやつを実践してくれればいいと思う。


『うーん……、やっぱり……、それが無難なのかなぁ……』


 なんとも気乗りしない雰囲気が伝わってくる文面だ。なんとなく苦手意識を持ってしまった相手と、他の友達を交えてとはいえ一緒に遊ぶのはハードルが高いのかもしれない。

 と言ってもどれくらい苦手意識を持ってるのか俺にはわからない。最低限会話はできるらしいが、無理してるのかどうかといった具合は不明だ。


 ふと夕凪の姿が思い浮かぶ。空閑と青羽と四人で遊びに出かける想像をしてみるが……。うん、まぁ特に違和感はないかな。なんだかんだ言って四人で行動することも最近増えた気がするし。これも仲を取り持とうとしてくれる空閑と青羽のおかげだろうか。いやホント、青羽っていいやつだよな。あんなことがあったら普通は女子側の擁護に回りそうな気がするのに。『こま』さんの友達にもそういう人がいれば……、ってそれが『こま』さんか。


『あとはこまさん次第じゃないかな?』


『えっ? ……私?』


 なんとなく青羽の位置にいそうな『こま』さんに発破をかける。


『うん。二人のフォローをするのはこまさんでしょ? 他に事情を知っていてフォローしてくれる人がいればいいとは思うけど』


『……確かにそうね』


 しばらく間があった後に同意のメッセージが返ってきた。まぁフォローを入れるというのも簡単ではないかもしれないが、関係の回復には必要だろう。


『二人の仲が良くなるといいですね』


『……うん。今日はありがとね』


『どういたしまして』


 気が付けばもう日付が変わりそうな時間だった。思ったより長いこと相談に乗っていたらしい。勝手に『できるお姉さん』という想像をしていたが、こういう側面もあるんだな……。

 なんとなくうれしくなって頬がにやけてくるのが自分でもわかる。知らない相手とはいえ、頼られるというのは悪いことではない。ましてや相手が女性とくればなおさらである。


 それにしてもどんな人だろう。できるお姉さんで神社好き。面倒見もよさそうだし、これはきっと和風美人に違いない。まったくもって根拠はないが、知らない人間の妄想をするのは自由だ。それにきっと綺麗な人とラインのやり取りをしているというだけでテンションが上がるのだ。実際に会ってがっかりしないために妄想レベルを引き下げる必要もない。


『それじゃおやすみなさい』


『おやすみ』


 そうして機嫌よく布団に潜り込むのだった。

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