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第2話 社と少女
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少女。そこに、玄関に少女がいた。
最初からそこにいたかのように。
「······うん?」
黒く、女子としては短めな髪を手でかき上げつつ、こちらに顔を向け、言った。
「君···神野···えっと···何とか!」
誰だそれは。神野何とかって。···それより、
この人、僕を知ってる?
制服の胸ポケットに掛けてある名札の色は···僕と同じ色。同学年か。
「あれぇ?違った?」
「はい。神野何とかです。」
「突っ込まないんだ···。ね。社少年。」
「···知ってたんですね。」
知らないふりだったのか。何のために。
あと「社少年」って。人のこと「~少年」なんて呼ぶ人初めて見たぞ。
というか、何故僕の名前を知ってる?今気付いたが、僕は今名札をつけていない。ポケットにでもしまったんだっけ。
「記憶喪失の同級生の名前を覚えない方が難しいからね。皆おぼえてるよ。」
「·········」
僕の知名度は、思いのほか高かったようだ。