不機嫌な王太子
緩く、王道でいきたいと思います。
ベッタベタにベタな展開が続きます。
イザリエ王国ランリアティエ王朝の第二代国王、名君レオンハルト王の即位46年目の年。愛するアメリア王妃との間には、フィリップ王太子、エレオノーラ第一王女、ジュリアン第二王子、ルイーズ第二王女が生まれている。
末娘のルイーズ王女は現在10歳。
ジュリアン第二王子は15歳で、いずれデイファクター公爵スチュアンティック家を継ぐことが決まっている。
その三つ年上のエレオノーラ王女は、友好の証として昨年、隣国のファレーンの第二王子に嫁いだ。
今年20歳となったフィリップ王太子にも次々に縁談が舞い込むも、彼はすべて退けたという。
そんな年の夏も、アルナト海戦のおりより続くアルナト大祭が行われる。
ファレーン王国、グレンバロディオン帝国、フレライン王国からそれぞれ大使や王族が招かれた。
招待客の中には、王女や高位貴族の令嬢もおり、フィリップ王太子の妃がその中から選ばれると噂された。
(イザリエ王国史4巻より)
・・・・・・・・・・
海戦で死した者たちを弔い、これからの4国の平和とさらなる発展を祈るアルナト大祭は、今年で19回目を数える。
4国の代表者による祈りの言葉に始まり、パレードや火送りが行われるこの祭りは10日間にも及ぶものだ。
他国から国賓を招く際、出迎えをするのは招く側の王族だ。そして、その主として対応をするのは次期王たる王太子。
かくして、ニコニコ作り笑顔を貼り付けたイザリエ王国第一王子のフィリップ王太子は今日も多忙を極めているのだ。
「この度はお招きいただきありがとうございます、フィリップ王太子殿下。」
「いえいえ、貴女のように美しい方は大歓迎ですよ。アレクサンドラ王妃。」
「わたくし、今回の訪問の話を父から伺ったときは舞い上がらんばかりでしたわ。貴方にお会いできると思って・・・」
「・・・これは、北方一の花と言われるナターシャ姫に・・・光栄ですね。」
さらりさらりと美しき客たちを受け流す。一通り対応を終えたところで大きくため息をついた。
「もてますねぇ~兄上。」
「ジュリアン・・・」
フィリップと同じ母似のさえざえとした銀髪、これはフィリップとは違う母似の青い瞳ーーーフィリップは父と同じ紫水晶だーーーの、少し幼さを残した美しい15歳の少年。
第二王子ジュリアンが、にやにやとフィリップに声をかける。
「帝国の皇妃に、バーティアの王女に、ラクシュットの公女に・・・罪な美しさですね。」
なんで冷たくするかなもったいない、とジュリアンは肩をすくめた。
「うるさいなぁ、お前は目移りし過ぎなんだジュリアン。私の妃となれば次期王妃だぞ?おいそれとは選べないだろうが。」
「そうですか~?それだけが理由じゃないと思いますけどねぇ~。」
言うだけ言ってジュリアンはどこかへ行った。そういえば残りの客対応はジュリアンがやるのだ。そしてフィリップは父に呼ばれて・・・。
「そうだ、父上だ・・・父上と母上に呼ばれているんだった。」
またいつもの話か・・・とフィリップは憂うつな気分で王の執務室へと向かうのだった。