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ことの始まりは王妃より

短いです。更新遅れてすみません!

 フィリップに抱き抱えられたまま、王妃の私室に入ってみれば、そこにはレオンハルト王もいて、王と王妃に生暖かく見つめられながらフィリップとフローレンスはソファに腰を下ろした。ふたりに続いて、アデライードとジュリアンも席につく。


「では、ご説明させていただきますわ。」


 にっこり笑ったアメリア王妃が、ゆったりと紅茶とカップを傾けながら話始めた。


「まず始めに申し上げておきたいことは、アデライード王女は主犯ではないということと、わたしたちはフローレンス王女を傷つけるつもりは全くなかったということですわ。」


「いろいろと申し上げたいことはありますが、ここは黙っておきましょう。母上。」


「良い判断ね。フィリップ。・・・ことの始まりは、オリヴィエ・ラ=フォンティーヌ侯爵を失脚させたいアデライード王女と、フィリップとフローレンス王女をくっつけたいわたしの思惑が一致したことよ。そうだったわね、アデライード王女。」


「はい、アメリア王妃。王妃殿下の申し出を受けて、わたくしはフローレンス王女を利用させていただくことにしました。フォンティーヌ侯爵も、フローレンス王女を気に入っているようでしたので・・・」


「いろいろとお膳立てをしたのだけど、フローレンス王女がお忍びで出掛けてしまって、予定がくるってしまったの。本当はあそこまで危険な目に合わせるつもりはなかったのよ。ごめんなさいね。」


 さらっとそう言ったアメリアは、優雅に微笑む。


「・・・そんなに軽々と。フローレンスは恐ろしい目にあったのですよ?」


 食ってかかろうとしたフィリップを止めたのは、当のフローレンスだった。


「そうでしたか。ようやく納得がいきました。・・・以前、お会いしたアデライード王女はそれほどフィリップ殿下に好意をもたれているようには見えませんでしたので。急に態度が変わったのはなぜかとか。手首を拘束も、結構緩いものでしたし。」


「ちょっとまって、フローレンス?緩かったのかい?」


「えぇ、そうですわ、フィリップ殿下。はっきり言ってフォンティーヌ侯爵に押さえ付けられる前に拘束をほどけば、逃げられたと思いますわ。」


 けろっとそう言ったフローレンスに、堪えきれないとばかりにレオンハルト王が吹き出す。


「・・・ふっはっ、さすがだ。フローレンス王女よ、逃げなかった理由を述べてみよ。」


 王としての見定めるような視線がフローレンスに向けられるが、それをものともせずにフローレンスはじっと見つめ返した。


「そのうち誰か来るでしょうし、逃げずにこのまま情報を引き出した方が、有益だと考えたからですわ。」


 レオンハルト王の表情がふっと緩む。


「傑作だ。」


「ありがとうございます。」


 ふわっと笑ったフローレンスの表情はいつもどおりなのだが、ちょっと不安がよぎったフィリップは頬を引きつらせた。

 ジュリアンが哀れむような目でフィリップを見て、そっとつぶやく。


「・・・なんだか、フローレンス王女が母上に見えた。やっぱり親子って、女性の趣味も似るのか?」


 

 

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