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剣士・ミシロ

「どっちに行けばいいんですかねレン様?」


「いや俺に聞くなよ!てか、お前の方が知ってるだろ!?」


レカバを出て約30分、俺たちはワドパスへと向かう途中の分かれ道をどっちに行けばいいかで一悶着していた。


「いやーすみませんレン様。生憎、こっちの道には疎くてですねー…ぶっちゃけどっちに行けばいいか分からないんですよー」


「マジかよ…」


急に先行きが不安になってきた。が、それを言っても始まらないだろうと言い聞かせつつ元々は案内の役割を果たしていたであろう看板の残骸を見ながら話を進める。


「てか、魔法でどうにかならないのか?」


「…あぁ!」


「気付いてなかったのかよ!?」


「ちょっと地図魔法使うんでお待ち下さいねー…」


これで先に進める…そう思った矢先、


「あーっと…レン様、無理…みたいです。」


「…え?」


予測していなかった台詞に耳を疑った。


「いや、地図魔法って一回行った場所じゃないと発動できないんですよね…」


「って、ことは…」


「迷っちゃいました…」


「嘘だろ…」


まさか、右も左も分からない場所で立ち往生するとは思ってもいなかった。それに絶望してる俺の表情を悟ったのだろうか、レゼリアが明るめのテンションで話しかける。


「大丈夫ですよレン様!レカバまでの地図魔法は使えますから、戻って地図を買いに行きましょう!」


「…まぁ、その方が安全だしな」


「それじゃ、出発しーーー」


レゼリアが言い終わる前に近くの草むらがガサッと音を立てた。それを耳に捉えた瞬間レゼリアが、次いで俺が臨戦態勢をとった。


「そこに居る奴、出てこい!」


「さもなくば攻撃しますよ!」


言ったものの反応は無く気のせいかと思ったが逃げ切るのを無理だと察したのだろうか、潜めていたモノが姿を現した。


「分かった分かった、ここで一戦交えた所で利益なんてねぇからニャ。」


独特の語尾の持ち主は、両手を挙げ抵抗しない意思を見せながら近づいてきた。


「お前は、誰だ?」


俺の問いに対し、そいつは実にあっさりと答えた。


「あぁ、俺はミシロ=ダルフォール。ミシロでいいニャ。で、あんたらは?」


「えっと、私はレゼリアと言います!色々あってワドパスに行く所です!この人は私がお使えしているレン=ジーヴル様です!」


「…どうも、レンでいいよ。」


初対面の人にそこまで言っていいのだろうか、てか俺の名字ってジーヴルなんだ。そんな疑問と発見に心を悩ませつつ、ミシロを見た時から疑問に思っていたことを話した。


「なぁ、ミシロ…その耳って…」


「ん?あぁ、見ての通り俺は獣人族・ケットシーの剣士ニャ。」


ケットシー。確か、外見は人間と大差ないが人間の耳の代わりに頭の上にある猫耳が特徴的で高い敏捷性を発揮する猫人(びょうじん)である、と何かのゲームで見たな。


今目の前にいるミシロもそれに例外なく当てはまっている。健康的な肌色にショートヘアの金髪と少し茶色い猫耳、そして腰らへんにある猫の様な尻尾。背はレゼリアより少し高い位だろうか、中性的な容貌と声であるから男性なのか女性なのかが分からないのが難点だが。


「いや〜やっぱりケットシーは可愛いですねぇ〜」


そんなことを思っていたら、レゼリアはなんの躊躇(ためら)いもなくミシロの頭を撫でていた。いくら何でもこれはーーー


「ニャハハ、くすぐったいニャ。」


…思ったよりも好印象だったようだ。


「あ、そういえばミシロさんって男なんですか?女なんですか?」


俺の聞きたいことを代わりに聞いてくれた。どうなのだろうとミシロの方を見る。


「俺か?俺はーーー」


「キシャァァァァ!!!」


答えを聞く直前、ミシロの話を遮るかのように蛇の様な化け物が襲いかかってきた。


「レ、レゼリア!こいつは…!?」


「えっと、これはクラッシュ・タイトゥンっていう蛇の魔物ですね!6メートル位の大きさで名の通り俊敏な動きで敵を締め潰すんですよ!」


「レゼリアさん、よく知ってるニャ。」


「どうもどうも!あと、レゼリアでいいですよ!」


スラスラとした説明とともに再びそいつを見る。口からは(よだれ)を垂らしギラつく眼でこちらを見ている。今にも襲いかかってきそうだ。それを見て俺たちも戦闘の準備をする。


「よし、いくーーー」


「ちょいとお待ちをお二人さん!」


「もう、なんなんですか!」


戦闘を遮られ、少し怒った声でレゼリアはミシロに言った。


「どうせ行く所は同じ、ならここは俺がやるニャ。」


「ミシロさんも同じ所へ?」


「まあニャ。おっと、敵さんは長話が嫌いなようニャ!」


瞬間、大蛇クラッシュ・タイトゥンは牙を剥き出しにして喰いかかってきた。それに反応が遅れたものの辛うじて避けることができた。


「任せて…いいのか?」


「無論ニャ。」


俺の問いに対して一言そう答えた後、ミシロは腰に提げていた剣を抜き出した。


「二人共ちょいと下がってるニャ。巻き添え、喰らうニャよ?」


言葉と共にこちらを向いた顔には(かす)かな妖艶さを(かも)し出しつつも確かな狂気が込められていた。敵を喰い殺さんとする、野獣の如く。


「……」


互いに訪れた静寂。そして、それを最初に破ったのはーーー


「ゴガァァァァ!!」


痺れを切らした大蛇クラッシュ・タイトゥンが噛み砕こうと距離を詰める。一方のミシロはそれをただ黙って見ているだけだった。そしてその口が寸前まで迫った所で、


「…はっ!」


瞬時に剣を抜き、気付けば相手と反対の方向にいたミシロが剣を鞘に収めると、蛇は断末魔を上げる間もなく只の肉塊と化した。


「ま、こんなもんかニャ。二人共ケガはないかニャ?」


「……」


「ん、どうかしたニャ?そんな不意を突かれたみたいな顔して。」


先程の光景、一言で言えばあっという間だった。では何故説明出来たか、それはミシロが行っていた所作からそれを”居合”と判断したからだ。


居合、鞘から剣を抜き、相手に一太刀を浴びせ鞘に戻す、それを限りなく速く行うというものだ。漫画やアニメでは一太刀を浴びせる描写はカットされているので個人的にはそんなに速くはないのだろうと思っていた。今のを見るまでは。


ミシロの居合は言いようのない程速かった。恐らくどの様なキャラクターでも敵わないだろう、そう思わせる程だった。


「いや、なんか…こう、凄まじかったというか何というか…」


「とにかく、凄かったですよミシロさん!あんな魔物を一撃で倒せるなんて!」


「なに、大したことはないニャ。さ、行くニャ。」


賞賛をやんわりと受け流され、俺たちミシロを加えて先に行くことにした。









あ、そう言えばミシロの性別聞くの忘れてたな。…まぁ、いいか。














不定期更新で申し訳ありません。チマチマと書いて行きますので見て頂ければ幸いです。

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