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残り物には福が…

「あ、レン様ー!」


元いた場所へ戻ると、ハイドの姿は見えなかったが、レゼリア達の姿があった。


「遅かったニャね。」


「まあな…てか、そっちは何か聞けたのか?」


「ふっふっふ…もちろんですよ!いかにも有力な情報持ってそうな人から聞くことができました!」


「凄えな。で、どんな情報なんだ?」


「んー、幾つか聞いたんですけど…まとめるとこうですね!」


聞かれるとまずい内容のようで、途端にレゼリアが声を潜めつつ話した。


「…この街は事実上ここのカジノ場のオーナーが仕切ってるらしいです。なんでも昔は違法カジノ場だったんですけど、ここの街の市長がここでギャンブルして借金作ったらしいんですよ。それをチャラにする代わりにカジノ場の経営を認めろってなったらしくて、以来それをネタにされてるから市長も仕方なく黙認してるとかで…」


…だいぶ詳しいことを聞いてきたな。一体誰から聞けばこんな事を知ることができるのだろう?


「なんかめっちゃガラ悪そうなおっさんから聞いてきたニャよ。」


なら納得がいく…気がする。


「そういうレン様はどうなんですか?まさか、こっちに行かせて自分は遊び呆けてたとか…」


「いや、そんなわけないだろ。見知らぬ土地で1人きりにされて変に歩けると思うか?」


「…確かにそうですね!」


ああそうかと納得した顔のレゼリアを軽く小突いた。納得するなら1人にするなよ…


「叩くことないじゃないですか!もう…」


少し不満気な顔をされるが、あまり気にせず話を続ける。


「…まぁ、俺も似たようなもんだよ。ただ…」


「ただ…どうしたニャ?」


「いや…確証はないけど、あのカジノのオーナー、元は勇者のパーティにいたらしいんだ。」


勇者、その言葉に軽くミシロが驚きを見せる。レゼリアも驚いていたが、それを悟られまいとすぐに表情を戻した。


「へぇ、あの勇者様の仲間ってことは相当腕が立つニャね。」


「あの勇者って、知ってるのか?」


「知ってるも何も、有名ニャよ。むしろ知らない奴の方が少ないかもしれんニャ。まあレンは知らなくても仕方ないと思うけど、この世界には魔王っていうバケモノみたいに強い奴がいてニャ、そいつが魔物をけしかけて世界を乗っ取ろうとしたらしいニャよ。そこに現れたのが勇者様で、なんか、魔王を後一歩のところまで追い詰めたらしいニャ。」


そのあとは知らんけどニャ、そう言うミシロの話を内心冷や汗を掻きながら聞いていた。やはり勇者はそれほど有名な存在なのか。だとするともし勇者と対峙するところを見られたら、確実に怪しまれてしまうだろう。


「へ、へぇ…じゃあミシロはさ、魔王についてどう思ってるんだ?」


ここで印象を聞いておかなくてはいけない、そんな焦燥に駆られた。


「んー…俺的にはどうでもいいニャね。別に仲間が殺された訳でもないしニャ。ただ、無抵抗の奴を嬲るのはちょっといただけないニャよ。」


自覚もないことを言われても反応に困るだけなのだが、こういう風に思われているのかと思うと心が痛い。


「んで、他に何か聞いてないのかニャ?」


急な話の転換に少し慌てたが、とりあえずライソンに言われたことを全て話した。



「…なるほどニャ。」


「色々と悪どいですね…」


そのような話を続けていると、どこからかハイドが戻ってきた。


「あ、ハイドさん!どこ行ってたんですか?」


「まぁ、色々とな。そういえば情報の方はどうなった?」


そう言われ、先ほどまでの情報を話した。


「そう…か。いや、ありがとう。」


「んで、これからどうするんだ?」


いくら情報があるとはいえ、流石にこれだけで乗り込みに行くのはどう考えても無理がある。


「…どうした、もんだろうな。」


「考えてないんですね…」


ここで皆が考え込んでしまった。乗り込みに行くのは無謀だとしても、せめて他に何かすることはないだろうか。


「だったらもう1回中に入って下見でもしてくるかニャ?」


…ああ、それは思いつかなかった。確かに初めて行った時は色々とあったからロクに中を見ることはできなかった。


「でも、ミシロは無理っぽくないか?多分出禁になってると思うけど…」


「あー…そうニャね…」


ミシロは残念そうに項垂れているが、あれだけ持ってかれては出禁になるのも無理はないだろう、きっと。


「…でしたら私が見て来ますか?」


そう言ったのはレゼリアだった。


「…大丈夫か?いくらなんでも危ないんじゃ…」


「ふっふっふ…大丈夫ですよレン様!」


流石に心配なので気にかけたが、どうやら何か策があるようで、その必要はなさそうだ。


「私はどっちかっていうと諜報の方が得意なんです!お任せください!」


今までそういう話を聞いたことはなかったが、果たして本当なのだろうか。


「それじゃ夜に宿で会いましょう!」


などと考えていたら、レゼリアはもう遠くまで走っていった。


「はっや…」


そしてすぐに見えなくなってしまった。まぁ、多分任せておけば大丈夫なのだろう。不安が無いわけではないが、実力的に1人でなんとかなるだろうし。


「あ、すまんがそろそろ演奏をやらなきゃいけないんだ。また後で会おう。」


そう言ってハイドもどこかへ行ってしまった。


「…残ったな。」


「…そうニャね。」


そうして俺とミシロは余る形となってしまった。…どうしよう、何を話したらいいのか分からない。


「…レン。」


微妙に長い沈黙をミシロの一声が破った。


「…ど、どうした?」


「この後なんか予定あるかニャ?」


予定も何も、見知らぬ街で予定は作れない。


「この後の予定…いや、特にはないよ。どうして?」



「なら良かったニャ。…レン、俺とちょっと手合わせするニャよ。」


「手合わせ?暇だしいい…え?」


…気のせい、だよな。今手合わせって聞こえた気が…


「ありゃ、聞こえんかったかニャ?手合わせニャよ手合わせ。」


気のせいじゃなかったか…いや、でもする必要はない気がするが…


「え、いや…なんでだ?」


たどたどしくではあるが、疑問で返した。


「…だって、遅かれ早かれハイドの妹救い出すんだから、今のうちに少しでも強くなっとかないといけんニャよ?少なくとも今のままじゃ、あのオーナーに一太刀与える前にやられるニャ。」


「いや、そうかもしれないけど…」


ぶっちゃけ言うと戦いたくはない。魔物と戦うのですら億劫なのに、人との戦いはもっと辛い。アイゼンとのときだってギリギリだったのに…


「…どっちにしたって、レン、もう俺たちはこの計画の片棒を担いでるニャ。今更降りたら、それこそどうなるか分からんニャよ。」


「そうだけどさ…」


そう言われてしまうとこっちも返す言葉が無くなってしまう。


「…まぁ、乗りかかった船ニャ。さっさと行くニャよ。」



ミシロは、微妙そうな顔をしている俺の腕を引っ張り、どこかへと連れて行った。


ここまで読んでいただきありがとうございます。大体の予想はつくと思いますが、次はレンとミシロのバトル的な話になります。これからも読んで頂けたら幸いです。

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