表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/96

観光案内をしてくれる楽師さん

その後、憲兵隊によって泥棒は捕まり、事態は収束した。俺たち4人はその場での行為から1時間ほど個別に事情聴取をされ、詰め所から出た。


「なんで何もしてないのに疑われなくちゃならないんですか!こっちは泥棒を退治したヒーローですよ!まったく…」


歩きながらもレゼリアは小言を垂れていた。まぁ、終始変な目を向けられてたから無理もないか。


「…アンタも災難だったニャね。えーと…」


ミシロが楽師に話しかけるが名前を言おうとして詰まっている。


「…ああ、言い忘れてたな。俺はハイド、ハイド・デュクシーだ。そっちは?」


「んニャ、俺はミシロでそっちの女の子がレゼリア。んで、こっちの男がレンニャ。」


途轍もなく大雑把な説明だが、変に何か付け加えられてる訳じゃないのでスルーする。


「へぇ…そういえば、お前らは魔法使いか何かなのか?」


「まぁ、そうですね!…あっ、だったらハイドさんも魔法使いですよね?さっきの鞭を斬ったやつ!」


問いに答え、更に新たな問いをレゼリアが投げかけた。


「…まぁ、な。色々あって、魔法が入り用になったんだ。」


一瞬苦しめの表情を見せたが、それを笑顔で隠し答えてくれた。


「それにしたって、さっきのやつどうやって斬ったんですか?見えなかったですよ!」


グイグイと彼女はハイドに聞きにいっている。確かに俺も興味はあるが、それにしたって初対面の人にそこまでいけるのか普通。


「秘密だ。…と言いたいが、1回見られたしな。…ちょっとこっちに来てくれ。」


ハイドに促され、宿のある方へと向かう。


「ここに泊まってるんですか?」


「まぁな。…ああ、宿の裏に来てくれ。」


付いて行き、宿の裏にある少し広がった庭に着いた。


「ここで見せるのか?」


確かに今は人もおらず、うってつけの場所だが、やはりそう簡単に見せてもらっていいのだろうか。


「ああ。…これで、いいかな。」


ハイドは落ちていた棒切れを拾い、背中に背負っていた弦楽器を取り出す。


「そらっ!」


彼が棒切れを思い切り放り上げ、楽器を鳴らす。すると棒切れは先程の鞭同様、ブツ切りになって落ちてきた。


「…やっぱり見えないな。」


「一瞬のことだったニャね…」


「…もう1回、もう1回お願い出来ませんか?」


レゼリアの懇願に折れたのか、なら少しゆっくりめに、と楽器を鳴らす。するとハイドの周りに半透明の曲剣が2本現れた。


「うわぁ…これがさっきの正体ですか?」


「斬れ味良さそうニャねぇ…」


「ああ。これが俺の魔法、斬撃の二重奏(リッパーコンセール)だ。恥ずかしい話、これしか使えなくてな。」


「いやいや十分すごいですよ!それで魔法を斬り落とせたんですから!」


「そうかな、そう言われると嬉しいよ。」


照れ臭そうにハイドが笑う。そりゃ、可愛い子に褒められて嫌という人はいないだろうな。


「すげぇなこれ…あっ消えた。」


まじまじと眺めていると剣は音もなく消えた。


「鳴らしている間は発動し続けるんだがな、1回だと10秒かそこらしか保たないんだ。」


その光景を残念そうに見つめながらハイドは呟く。そして、何かを思い出したかのように言った。


「…そういえばだが、お前達はなんでこの街に来たんだ?」


「いや、王都に行こうと思ってワドパスのテレポート施設を使おうとしたら何かのミスでここに来ちゃいまして…しかもその施設が壊れちゃったそうで足止めくらってるんですよ…」


その問いにレゼリアが慣れた口調で答える。ああまでスラスラと言える辺り、元々の頭の切れ具合が伺えるな。


「そりゃ御愁傷様だな。にしてもこの街に来る必要は無かったろうに…」


「…今何か言いました?」


「ああ、いや、なんでもない。残念だったな、って言っただけだ。」


今それ以外に何か言った気がしたが、気のせいだったのだろうか。


「…それよりお前ら、この街に来てまだ間も無いだろ?せっかくだ。少し案内するよ。」


少し考える素振りを見せた後、何かをはぐらかすようにハイドが言う。


「いいんですか?あ、でも何か用事があるんだったら…」


だがそれが俺たちに気付かれることは無かった。


「いいんだ。あの演奏が終わったら俺も暇だしな。」


「…それじゃあお言葉に甘えて!いいですよねレン様?」


「いや俺に聞くなよ。まぁ…いいんじゃないか?俺たち、この街の地理に疎い訳だし。」


「俺たちも暇してたところだし、いいんじゃないかニャ?」


「なら、話は決まりか?付いて来てくれ。」



ハイドの後に付いて行って、この場を後にする。その後、厄介な事に付き合わされることになるのだが…それはまだ先のお話。

ここまで読んでいただきありがとうございます。次からは少々観光も交えて話を進めようかと思いますので、これからも読んで頂けたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ