レンvs.アイゼン その後
「…はぁぁぁぁぁぁぁ。」
長いため息をつき、俺は地面に座り込む。
「か、勝てた…」
そして立ち上がろうとした矢先、
「レン様ぁー!」
思い切りレゼリアに抱きつかれ地面に倒れた。
「いやー、まさか1回しか見せてないのに創成魔法を成功させるなんて流石はレン様です!お使えしている甲斐があります!」
「お、おい!離せ!く、苦し…」
俺の必死の声も届かず、レゼリアは一層抱きしめる力を強くする。
「レゼリア、これ以上やったらレンが死んじゃうニャよ?」
それを見かねたミシロが止めに入り、どうにか逃れられた。元の世界に帰る前にここで死んでは元も子もない。
「おっと…すみませんレン様。つい…」
「げほっ…ついで殺されたら訳ねーよ…」
「ちょ、こっちは心配してーー」
「かっかっか、お前さんら、ホントに面白えな。」
先ほどまで倒れていたアイゼンがこちらに呵呵と笑いながら寄ってきた。…割とピンピンしているが気のせいだろうか。
「にしても、創成魔法か。また見たこともねぇ魔法を見せてもらったぜ。そんな奥の手隠してたとは思わんかった。どこで覚えたんだ?」
「え、あぁ…ついさっきレゼリアに教えてもらってさ、出来るか不安で一か八かだったんだけど…上手くできたからよかったよ。」
「…そんな付け焼き刃の魔法に防がれたんか。」
明らかに声が落胆している。
「…それにしてもレゼリアの嬢ちゃん、中々筋がいいじゃないの。見慣れない魔法をそんな一瞬で教えるってことは相当腕が立つんだろ?」
「い、いえいえ!私なんて師匠の真似事しか出来ませんから…!」
「へぇ、師匠が居るのかい?一度でいいから会って、その創成魔法を学んでみたいもんだねぇ。」
「えっと、師匠は気難しい方なので…」
「あら…そりゃ残念だな。かっかっか。」
言葉的には落胆してはいるが、顔を見るとそこまで落ち込んではいなかった。
「まぁ、負けは負けだ。楽しかったぜ、レン。」
「…あぁ、俺も、勉強になったよ。」
差し出された手をしっかりと握る。
「…こう、男同士の握手ってなんかいいですよね。」
「…あー、分かる気がするニャ。」
そんな女子2人の会話をよそにアイゼンは続ける。
「さて、3人はこれからどうするつもりだい?物見遊山ってわけじゃなさそうだしな。」
「えっと…王都に行こうと思ってこの街のテレポート施設を使おうかと思ったんだけど…。」
「あぁ、そうだったのか。だとしたら今日は無理だぜ?確か、月に一度の点検の日だったっけか?」
「えーと、はい、そうでしたね。」
ホーガンがアイゼンの問いに答える。
「まじかよ…」
「まぁ、これも何かの縁だ。今日はじっくりこの街を観光して行けや。」
励ましのつもりだろうか、アイゼンがニカっと微笑む。
「いいじゃないですかレン様!王都に行くにはどっちにしろ色々準備がいるんですから!」
確かに、何も持たないで直接乗り込むのは愚策なのかもしれない。
「んニャ、久々にこの街を見て回りたいしニャ。」
「…んじゃあ、色々見て回るか?」
女子2人に諭され、なんとなく頷いた。
「そうと決まればさっさと行きますよ!」
頷くや否やレゼリアは小走りで出口に駆け寄った。それに合わせて俺たちも続く。
「…おっとっと、言い忘れてました!ホーガンさん、アイゼンさん、また会いましょうねー!」
「おう!また顔見せろや!」
そして扉が勢いよく閉まる。
「…行ったか。」
「ええ、そうですね。」
「…なぁ、お前から見てあの3人、どう思うよ?」
不意にアイゼンが問いかける。
「…何故、そんなことを?」
「なに、少し気になっただけさ。それをお前に聞こうと思ってな。”元”団長殿?」
「…私を副団長に引きずり降ろしたのは貴方でしょうに。それに、本気を出してなかったでしょう?」
「あらら、バレてたか。」
「それは…私の時に使った魔法を使ってませんでしたからね。」
「ま、可能性を信じたってやつだな。」
「そういう事にしておきましょう。…あの3人の魔力は並みの魔法使いを超えてますね。特にレゼリアさんとレンさんは桁違いですし。あの魔力は一体…」
「案外、あいつらが件の魔王だったりな。」
「まさか、それはないでしょう。それに魔王だとしたら団長が死んでますよ。」
「だな。…さあ、仕事に戻るか。…副団長。」
「そうですね。…団長。」
そんな会話があったのが分かる筈もなく、俺たちは街へと繰り出した。
…とりあえず書き上げました。それと同時にvs.アイゼン編もやっとこさ終わりました。もしかしたら、またちょくちょく出てくるかもしれませんが。
次からはワドパスの街を観光します。見て頂ければ幸いです。




