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ミシロvs.アイゼン その後

「ミシロ!」


「ミシロさん!」


倒れたミシロの元に俺たちは駆け寄った。意識はなく、かなり危険な状態だ。


「レゼリア、なんとかなんねーのか!?」


「い、今治癒魔法掛けますからちょっと待ってーー」


「それは俺がやろう。」


アイゼンが魔法を掛けようとしているレゼリアを遮った。


「せめてもの詫びだ。やらせてくれ。」


「そ、そもそもここまで手傷負わせたのアンタじゃねーか!今さらどの口聞いてーー」


「…分かりました。治してあげて下さい。」


今度はレゼリアが俺の言葉を遮った。反論しようとしたが、彼女の真剣な表情を見るとその気も失せていった。


「…感謝するぜ、嬢ちゃん。」


アイゼンが手をかざすとミシロの身体が黄緑色の光に包まれ、次第に傷が消えていった。


「…この嬢ちゃん、結構強いと思うんだよな。」


アイゼンが魔法を掛けながらぽつりぽつりと話し始める。


「さっきの…俺の魔導滅弾グリモアール・ビライツ、普通に喰らったらこんな怪我じゃ済まねーんだよ。体にどデカイ風穴開くくらいの威力だった筈なんだが、…斬られたとしか思えねぇな。」


「え、だってミシロさん魔法弾斬れないからって避けてたじゃないですか?」


「…いや、魔法弾斬るんなら武器に強化魔法付与すりゃいいんだよ。ある程度はそれで相殺出来るしな。だがな、俺の魔法弾は普通に強化しただけじゃ受け切れねえでポッキリ折れて使用者諸共おさらば、この嬢ちゃんだって同じ末路を辿る筈だったってわけさ。だが、逝ったのは刀だけで嬢ちゃんは無事。完全にとは言えないが斬られたとしか思えんね。」


それを聞いて俺たちは口を閉ざした。よくよく考えてみたらこの街に着く前に戦った大蛇クラッシュ・タイトゥンを付与魔法無しの居合で一刀両断したのだから元々の強さは頷ける。


「多分あれ普通の刀だろうから折れたんだろうが、それでもあの魔力量は凄まじいな。もし刀が名うての名刀なら俺の魔法弾が真っ二つにされてたかも分からん。あの嬢ちゃん、ただモンじゃないな。」


「…ミシロって、そんなに凄いのか。」


「あくまで俺個人の意見だがな。…さあ、終わったぜ。ほれ嬢ちゃん、起きな。」


アイゼンがミシロの頬をペチペチ叩く。するとゆっくりとだが瞼が開く。


「ん…ニャ…?」


少し上体を上げ辺りを見回す。そしてアイゼンと目が合うと自分が負けたことを改めて自覚したのか、勢いよく立ち上がった。


「すまんニャね、2人共。悪いけど、俺はちょっと風に当たってくるニャ…」


ミシロはそう言うとまだ覚束ない足取りで訓練所を出ていった。ふと見えた横顔には憂いが含まれていた。


「さて、次の相手は誰だ…と言いたいところだが1、2時間休憩だ。こっちも魔力回復しなきゃならんし、そっちも…まぁ、色々あるだろ?」


「…!…分かりました!ちょっと私たちも休んできます!」


ぶっきらぼうな言い方ではあったが、遠回しに「励ましに行け。」と言われた気がした。その好意に甘えて俺たちはミシロの元へと向かった。

「…」


ミシロは訓練所を出たところにあるテラスで(ほう)けた表情で景色を眺めていた。


「…いましたね。」


「…どう声掛けたらいいんだ?」


来たはいいが、こういう時の対応に迫られたことが無く、壁の裏で声を潜めつつどうしようか話し合う。


「ここは女同士ってことでレゼリア行けよ…」


「いやいや、ここはレン様が行った方がいいですって!」


そんな問答が数分続き、結局俺が行くことになった。…絶対レゼリアの方がいいと思うのだが。


「…よ、よう。」


「…結局、レンが来たんニャね。」


気付かれてたのか…地獄耳だな…。そう思いつつ話を進める。


「まぁ、な。…悪いかよ?」


「別に…そう言う訳じゃニャいから安心するニャ。」


「…」


「…」


先程の戦闘とは違う、ある種で思い沈黙が漂い出した。そしてその沈黙がしばらく続いた後、ミシロの方から口を開いた。


「…ぶっちゃけ、俺が負けるとかこれっぽっちも考えてなかったニャ。」


「そんだけ、自信があったってことか?」


「まぁ、ニャ。…でも、世の中ってのは広いモンニャね。自分の弱さってヤツがよく分かったニャよ。」


プライドとは意外と簡単に崩れてしまうものだ。自分の中の誇りを捨ててまで戦い、負けたミシロには、それが顕著に現れている。


「まあ、しばらくはここで観光でもするニャ。…刀も折れたから新調しニャきゃいけんしニャ。」


刀、と言われふと思い出す。そう言えば前に貰ったな…。そうだ。


「なぁ、ミシロ。良かったら俺の刀受け取っ

てくれないか?」


「んニャ?」


ミシロは首を傾げたが俺は話を続ける。


「いや…この前、人から貰ってさ。けど、俺は具現化魔法使えるから使う機会無くてさ。このままだと宝の持ち腐れだから、ミシロに使って貰った方がいいと思うんだ。」


そう言ってミシロに刀を手渡す。鞘から刀を抜き、まじまじと刀身を見つめる。それが続くこと数分、おもむろにミシロが口を開く。


「…これ結構いいヤツニャけど、誰から貰ったんだニャ?」



「え?ああ、カゲンさんって言うレカバの町の町長からーー」


「それ、本当ニャ?」


俺の言葉にミシロは意外な食い付きを見せた。


「え、知ってるのか?」


「知ってるも何も、剣術の大会で最年少で10連覇を果たしたって有名ニャよ。確か、修業中に大怪我して一線からは退いたらしいけどニャ。」


あの人そこまで強かったのか。…てか、そんな腕前あるんなら自分でゴブリン倒せたんじゃ無いのか?


「…本当に、これ受け取っていいのかニャ?」


「ああ、言ったろ?この刀だってミシロに使って貰った方が嬉しいよ、きっと。」


「…ありがたく、受け取るニャ。」


ミシロは刀を鞘に納め、それを腰に吊るす。


「…なら、この刀の恩義くらいは返さなきゃいけんニャね。」


「いや、いいよ別に。そんな意味であげた訳じゃーー」


「俺は、お前たちについて行くニャ。」


「…え?いや、お前にだって目的があるんだろ?俺について行ったって意味無いかもしれんぞ?」


「まぁ、観光のついでに武者修行でもしようかと思ってたから丁度いいニャ。」


そう言うミシロの顔には、先程の憂いは既に消え、元の飄々とした感じに戻っていた。


「…じゃあ、よろしく頼めるか?」


「お任せあれ、ニャ。」


俺は手を差し出し、固い握手を交わした。その直後、隠れていたレゼリアがミシロの元へ駆け寄り盛大なハグをした。


「ミシロさーん!一緒に旅出来るんですねぇー!」


「ニャっ!?ちょ、離すニャ!」


「レゼリア、止めてやれよ…」


その後抱きついたまま離れないレゼリアをなんとか引き離し、次の戦いの作戦を決める。


「さて、次は俺がーー」


「いえ、私が行きます!」


俺の言葉を遮り、レゼリアが元気よく申し出た。


「レン様はこっちの最終兵器なんですから私が行きますよ!」


「へぇ、そんなに強いのかニャ?」


「いや、それはレゼリアが言ってるだけでーー」


「それじゃ、サクッと勝ってきますねー!」


「おい待てよ…って、もう行っちゃったよ。」


「…まぁ、レゼリアに期待するニャよ。」


「…まあな。」


そんなやり取りをした後、俺たちもレゼリアの後を追う。









少しペースを早めて投稿させていただきました。見て頂ければ幸いです。

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