ミシロvs.アイゼン 中編
2人は熾烈な争いを繰り広げていた。が、戦況はアイゼンの方に少しずつ傾いていた。
「そらそらどうした!弾切れの前に倒すんじゃねぇのか?」
「そう、慌てるニャよ!今すぐ叩き斬ってやるからニャ!」
口では強気を装っているがどう見たって分が悪い。いくら剣の腕前が達者とはいえ、実体のない弾を斬り落とすのは不可能だ。よって彼女には避けるという選択肢しか残らせておらず、近付きたくても近寄れない。近接武器使いとしては最悪の状況なのだ。
…流石にちょっと、マズイニャね。
ミシロは一瞬難しい顔をした後、刀を鞘に入れ、それに手をかけながら全速力で間合いを詰める。
「居合ってやつか?…おもしれぇ!」
アイゼンは笑みを浮かべるとしっかりと銃を構え、ミシロを見据えた。居合の一瞬の隙を狙うのだろうか。
「だが、銃の射線上をわざわざ通るのはいただけねぇな!これで仕留めてやらぁ!喰らえ、魔導砲!」
銃口から極太のレーザーを放ち、ミシロを狙う。一方の彼女は射線上から避ける素振りも見せずそのまま突っ走る。
「ちょ、ミシロさん危ないですよ!」
「流石にやべーよ!避けろ!」
俺たちの声が耳に入っていないのだろうか、すでにレーザーはミシロの数歩手前まで迫っている。
「血迷ったか?まぁ、運も実力の内ってやつさね、恨むなよ!」
そして、レーザー砲がミシロを穿ちにかかるーー
その瞬間、ミシロの姿が消えた。
「な…!?」
「え、あれ…!?」
「ど、どこいったんですか!?」
アイゼンを含めて俺たちはどこへ行ったとも分からないミシロの姿を探すため周りを見回す。
ちっ、どこ行きやがった!後ろにいるわけでもねぇし、かと言って天井にぶら下がってる訳でもない!まさか、本当に消えたか?…いや、そんなはずは…
アイゼンは思考を張り巡らせているのであろうか、少しばかり隙が生まれていた。それを逃すまいとしたのか、突如現れたミシロが刀を振りかざす。一瞬反応が遅れたアイゼンが慌てて避けようとするがーー
「ニャらぁっ!」
その一刀は、豪快な音を立て地面に振り下ろされた。
「な…お前…」
しかし血飛沫が飛ぶわけでもなく、傷は一つも付いていなかった。手から壊れ落ちた、銃以外は。
「…こんなもん、かニャ。」
一つ息を吐き刀を鞘に収め、俺たちの方を見やる。表情こそ硬かったが、手でピースサインを作るあたり、よほど嬉しいのだろうか。
「…さっきまで、お前は何処にもいなかった。…一体どこに身を潜めてた?」
驚きを表情を隠せないアイゼンがミシロに問う。これに関しては俺たちも気になるところだ。
「んニャ?あぁ、簡単な話ニャ。人間、絶対に死角ってのあるから、そこに回り込んでただけニャよ?」
簡単、と彼女は言ってのけたが実際不可能だと思う。仮に上手く死角に回り込めたとしてもその後絶対に辺りを見回すわけだから絶対に気付かれる。
「…ケットシーって、動きが俊敏ですからねぇ。」
レゼリアがポツリと呟くが、そこまで出来るものなのだろうか。
「…さて、アンタがやるってなら付き合うけど、どうするニャ?」
彼女は不敵な笑みを浮かべながらアイゼンを見据える。アイゼンは未だに驚きを隠せない表情でミシロを見据える。だが、アイゼンの口元が僅かに笑っているのを、ミシロはまだ気付いていない。
文字数は少ないですが、割と早いペースで投稿させていただきました。見ていただければ幸いです。




