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戦場大助の日常 二五話

「大妖怪、がしゃどくろ」


 雑魚敵の骸骨を従えてこっちが消耗したときに現れやがったのは、骸骨を何十倍も大きくした巨大な骸骨、がしゃどくろだった。

 頼んでもいないのに小守が解説を始める。

「がしゃどくろか、コイツは埋葬されずにいた死者の怨念や骨が集まって形造られた巨大な骸骨だな。これは近年になってから創作された妖怪だ。民話、神話と絡みがない分、弱点になるような記述もない」

「純粋に殴り合いで倒せばいいだけさ」

 みんなが消耗している中、柳さんだけはまだまだ動けるみたいだけど、柳さんだけであの巨体をさばききれるとは思えない。

 そもそも、がしゃどくろの元にたどり着く前に無数に湧く骸骨の壁を突き進む必要がある。

 これ詰んだくさくないか?

「とりあえず突撃します。沖恵千里は援護を」

 アリスちゃんは簡単に命令をだして先行して骸骨の群れに駆け出す。沖恵千里も泣きそうな表情をしながらもついてゆく。

 もちろん、骸骨のほうもはいそうですかと道を開けるわけでもない。アリスちゃんを捕らえようと手を伸ばすが、


「邪魔です。動かないでください」


 アリスちゃんを中心に地面が白く凍っていき、その範囲に入った骸骨は足が止まり凍結が全身を蝕んでいき全身が身動きできなくなる。(でも沖恵千里は凍結しなかった。ちゃんと見極めができる技みたいだ)

 そしてその隙にアリスちゃんと沖恵千里はがしゃどくろの前まで近付く。

「足場を作ります! ヤツの顔に一撃入れてください!」

「ひいいん!」

 アリスちゃんが地面に両手をつくと、がしゃどくろの顔まで続く氷の階段が作られていく。

 たぶん嫌なんだろうけど命令だからやらない訳にはいかない沖恵千里は、やっぱり泣きそうになりながらも命令に従う。

 氷の階段を駆け上がり、「覚悟おおお!」と飛びかかるが、がしゃどくろはその長い腕で沖恵千里を叩き落とす。

「危ない!」

 とっさに声に出す俺だったが、アリスちゃんはその後のことも考えていたようで、落下地点に雪を厚く作っていた。

 落下の衝撃は雪がクッションになってほとんどないようだ。

「す、すいません、失敗しました」

「いえ、無理をさせました。一度下がりましょう」

 がしゃどくろの追撃、まるで人間が虫を潰すかのようにその骨の質量を利用して押しつぶそうとする。

「柱を作ります」

 がしゃどくろの振り下ろされる手の平に、氷の柱を作りつっかえ棒にしようという考えだ。

 だけど、できた氷の柱は腕の骨の質量に負けて氷の柱は折れてしまう。

「しま――」

「危ないです!」

 ドン、と、沖恵千里がアリスちゃんを押す。

 突き飛ばされるアリスちゃん、そして沖恵千里の頭上にがしゃどくろの手のが落ちてきた。


「沖恵千里!」


 がしゃどくろは仕留め損ねたアリスちゃんを潰すためにもう一度手を上げる。

「走れ大助!」

 柳さんが既に駆け出していて、俺にも走れという。

「私腕お前救助」

 限られた時間の中で手短に俺に指示を出すけど、救助ってどっちをだよ! どっちともか!? ええいクソ、どうにでもなれ!

 柳さんは骸骨を払い砕きながら道を作る。そのスピードが尋常じゃない、がしゃどくろの手が振り下ろされる瞬間にそのちょうど下に到着してジャンプ! 腰をひねりまわし蹴りをがしゃどくろの腕に直撃させた!

 その間に俺はまずは戦闘不能っぽい沖恵千里の元に行き方を貸す。

「大助! そいつをとりあえず避難させろ!」

 柳さんの怒声が聞こえる。避難ったってそこらじゅう骸骨だらけのこの山に安全な場所なんてないけど!?

「すいません、沖恵千里をよろしくお願いします」

 アリスちゃんも沖恵千里を俺に押し付けて柳さんと一緒にがしゃどくろの攻撃にまわる。


 骨の関節部を凍らせて動きを止めようとするが、氷が張られた数秒後にはがしゃどくろの力に負けて砕けてしまう。

 勝てるビジョンが全く思い描けない。

「大助、後ろだ!」

 ハッとする、振り返ると錆だらけの剣もった骸骨が今にも斬りかかろうとしているところだった。

「――ッぶね!」

 上半身を仰け反らせるようにしてこれを回避、全身をバネのようにして空振りした骸骨に頭突きを食らわせる。がしゃんと骸骨はバラバラの骨に変わった。

 そこに小守が手を向けて妖力を吸う。これでこの骨は再び組み合わさって俺たちを襲うことはなくなった。

「しっかりしろ、これくらいのピンチはわたしを助けるときに経験しているだろう!」

「あの時も今も死ぬ寸前だったわ!」

 それに、あの時は俺はほとんど役に立っていない。ほとんどの手柄は涼子を始めとする超人どもや智香なんかのサポートがあったから小守を助けられたんだ。

……まったく、いくら何でも遅すぎやしないか? いつもいつも厄介事を勝手に持ち込んで巻き込ませた挙句全部自分で解決させるあの史上最悪の幼馴染は、なんで今このタイミングで出てこないんだよ! ああ、そうさ、認めなくてはいけない。俺は一人では何もできないクソ雑魚野郎だ。小守の時だって涼子や砂糖さんや柳さんに助けてもらって、その後の妖怪と出遭う日常生活だって小守の知識なしではやっていけなかった。だからこれは、弱者の癇癪とかと同じ八つ当たりだ。


 俺はおもむろに携帯電話を取り出して短縮番号1番を押す。


「大助囲まれてるぞ!」

 うるせぇ! 骸骨ぶつけんぞ! 武器無しで近寄ってきた骸骨を蹴り飛ばし、バラバラになった骨の内棍棒のような骨を見繕う。それで沖恵千里と小守に近付く骸骨を砕く、砕く、砕く!

 携帯電話を耳に当て、心からの文句を吐き出す。

「涼子! 早く戻って今すぐ助けに来い! 今すぐだ!!」

 返事はすぐに返ってきた。


『ニシシ、おーけい。大ちゃんもだーいぶ素直になってきたじゃないの』


 パラパラパラと、夜の山に聞こえてくる音がした。それは次第に大きくなって、俺はその音がヘリコプターの音だと気が付いた。

 闇夜で見つけるのに苦労したが、確かにそうだ。微量に光る月光でつややかにみえるヘリから、何かが落とされた。

「……まさか、な」

 何かが、というか、誰かが、つーか、涼子だった。


「いぃぃぃいいいいいいいいいいいやッっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 落下しながらヤツは大声で名乗りを上げる。


「寺門涼子サマただいま帰還ってなァ!」


 パラシュートが開かれて(それもだいぶ遅いと思うタイミングで)減速したものの、途中で涼子はパラシュートを外した。分離されたパラシュートの方はがしゃどくろの頭に落ちて、一時的にがしゃどくろの視界(というか、みえているのかという基本的な疑問は残るものの)を塞ぐ。

 対する涼子はあの高さから落ちてきたのに普通に着地した。一部始終を見ていた柳さんとアリスちゃんもこれには驚くが、(それこそ)降ってきたチャンスとばかりにパラシュートを氷漬けにしてがしゃどくろの視野を奪ったままにする。

「よっ、大ちゃん、小守っち、ただいま」

「お前本当に人間かよ」

「ニシシ、それは人外の小守っちが言うっていうギャグか? 生憎今は楽しく冗談言い合える状況ではなさそうだけど」

「同感だ。涼子、お前ならあのホネ野郎をどうにかできるだろう」

「全くたまに頼ってくれたかと思えば無茶ぶりだよなぁ」

 涼子はわざとらしく首を振る。がしゃどくろは腕を振り回している、パラシュートでやっぱりみえないらしい。

「ま、大ちゃんの頼みならやってやるけどよ」

 涼子は口端をニィと釣り上げる。がしゃどくろは振り回した腕が偶然引っかかったのか、パラシュートが取れて視覚を取り戻す。

「何十メートルあるんだあの巨人、とりあえず首裏の肉を削がなきゃな」

「その漫画見たことあるけど、こいつに肉はないぞ」

 こんな時でもボケを忘れないその精神は認めるが、小守お前はそれどこで見たの? 俺まだ見てないんだけどそれ。

「そんな冗談よりも、何か策はあるのか。正直お前がどこまで把握しているのかわからんが、柳さんとアリスちゃんの二人がかりでほんとにギリギリのところで捌いているような状況だ。それに」

「ああ、この雑魚どもだな。上から見てたが倒してもすぐに新しいのが補充されるみたいだな」

 涼子はなんてことないように応える。

 そんなこんな話をしているうちにも新しい骸骨は湧き出てくるし、相変わらず沖恵千里は目覚めない。

「落ちてくるときに見たんだが、この先ちょっと行った所に崖がある。そこに突き落とせばあの大きな骨ヤローもただでは済まないだろう」

 涼子は錆剣を振り上げてかかってくる骸骨を、まるで羽虫を払うような動作で受け流す。ぎりぎりのところで剣は涼子には当たらずに空振りに終わった。

 その骸骨を蹴り飛ばして砂塵へと変える。

「分かった。じゃあ俺とお前でその崖までがしゃどくろを引き付けよう」

「いいけど、小守っちとそこの気絶してる人はどうすんだ? まさかそのままにしておくわけにもいくまいし」

「柳さんに頼もう。あの人なら護衛を任せられる。いいよな、小守」

「そうだな、お前の数倍頼もしい」

 腹立つけど、小守の了解も得られたことで俺は大声で叫ぶ。

「柳さん! 役割チェンジ! 小守たちを頼みます!」

 叫んで俺と涼子はがしゃどくろに向かって走り出す。

 声に気付いて柳さんが下りてくる。

「決めて来いよ」

 すれ違いざま、柳さんは俺たちにそう呼びかけた。

 分かってますって。

 一瞬とはいえ柳さんが抜けて、アリスちゃん一人ではがしゃどくろを抑えきれないみたいで、片腕は凍らせているみたいだがもう片方が俺たちを狙って振り下ろさせる。

「まず狙いが大雑把!」

 涼子は俺の首根っこを掴んで急停止する。

 一瞬ちょっと苦しかったが、その後がしゃどくろの手の平が振り下ろされる。だけど俺たちは中指と薬指の隙間ぎりぎりのところにいたので大事には至らない。

「アリスちゃん!」

 俺の声掛けに応じてくれて、アリスちゃんが地面についた手の平を凍らす。これでまた数秒稼げる。

 その間に俺と涼子はまた先へと進む。

 がしゃどくろの股下を潜り抜けてその先へ。

「こっちだデカブツ! そんなにノロマじゃ誰も潰せないぜ!」

 涼子がしっかり煽ってヘイトを集める。

 がしゃどくろ、意外と頭もいいのかしっかり涼子に目標を変えたみたいで両腕についた氷を砕いて体を反転させる。

「骨なのに視野があって、煽りも理解できるなんて、意外と人間チックだなアイツ」

 涼子はニシシと笑う。

「よし、これでがしゃどくろが小守たちを攻撃することはなくなった。ただの骸骨だけなら柳さんの敵じゃないだろう」

「お二人とも、待ってください!」

 俺たち(と、がしゃどくろ)を追いかけてきたのはアリスちゃんだった。

「アリスちゃん、休んでてもよかったんだよ?」

「そういえばこのチビッ子誰だ?」

 身長はお前とあんまし変わんねーよと、内心で突っ込んでおく。

「申し遅れました、私は夢宮有栖といいます。『影の会』の者と言えばわかりやすいかと思います」

「わかんねー、敵か味方かで言え」

「味方です」

「おっけー、わかった」

 アリスちゃんは少し息切れしながらも俺たちについてくる。

「これはいま、どこに向かっているのでしょうか」

「この先しばらく行ったところに崖がある、あのデカブツをそこに突き落とすのさ」

「なるほど、有効打がない今、それに掛けるしかないですね」


 この後三回ほどがしゃどくろの攻撃が来たが、それを何とかしのぎつつ、目の前に崖が見えてきた。


「あれだ、涼子、この後どうすんだ!?」

「どうするって、こう、なんとか突き落とすんだよ」

「……ああ、何も考えてなかった訳な」

 とはいえ、ノープランでもここまで来た以上引き返せない。何とかするしかない訳で。

「とりあえずあっち側に飛び移っちまおうか」

 涼子は走りを加速させて、「でえいやあああああああ!」勇ましい掛け声とともに跳び上がる!

 いくら向こう側がこちら側より低い位置にあるとはいえ、その距離は二十メートル以上はあるだろう。

 昔何かのときに調べた走り幅跳びの記録が男子で九メートルいかないくらいだったので、これを飛べるのは本当に人間業ではない。

 それを涼子は跳んだ。跳びきった。

「ほら、お前らも早く来い!」


「できるわきゃねーだろうが!」


 思わず声を大にして叫んだ。

 そうこうしているうちに後ろからがしゃどくろが迫ってくる。

 あれ、崖に追い詰められたのは俺たちの方なんじゃ……?

「あれ、本当に人間なんですか?」

「残念ながら生物学上人間だよ」

 とうとうオカルト側の人にまで人間であるかを疑われる涼子。

 さて、そうこうしているうちに崖の手前まで来てしまった。ここで覚悟を決めて跳んでみるという選択肢はほとんどない。涼子ができたから俺たちにもできるなんてのは屁理屈にもならない。できないものはできない。ではどうするか。

 考えはある。俺はどうしようもなく無力だけど、俺の周りの人間は有能揃いだ。つまり、

「アリスちゃん、氷の道を造れないかな?」

 他力本願。これに尽きる。

「ええ、私も同じことを考えていました」

 崖の端から端に掛けて、みるみるうちに氷の滑り台が作られていく。だけど、これでは違う。

「ごめんアリスちゃん、もうちょっと大きいやつを頼む、できれば、うしろのヤツが渡ってこようかと思えるくらいの」

 ここまで言ってやっとアリスちゃんは俺の言いたいことを理解したようだ。

「うまくいけば後ろのがしゃどくろを倒せるかもしれないですね」

 がしゃどくろはもうあと三歩ほどで俺らに追いつく。

 氷の滑り台のサイドに薄く広い氷が張られていく。仕掛けはここまで完璧だ。

「できました、早く滑り台へ」

「おう」

 俺とアリスちゃんは氷の滑り台で向こうへ渡る。

「それずりー、なんか楽しそうだぞ」

 向こう側へ着いたら涼子が何か言ってるが無視する。

「しかし、氷の道を作るとは大ちゃんも考えたな、これならあのデカブツも真っ逆さまに落ちるだろう」

「違うよ」

 涼子は何か勘違いをしているようなのでそれだけ言うと俺はさっさと走り出す。

「ち、違うってどういうことですか?」

 あれ、アリスちゃんも分かってなかったの?

「あれは、骨だけど視野もあって俺たちに的確に攻撃しようとする意識もある。要するに多少の知性がある訳だ。だから目の前で氷の道を張られてもがしゃどくろはまず歩こうとしないだろう」

 事実、がしゃどくろは氷の道の前で立ちすくんでいる。いくらバカでも目の前で罠を張られたら引っかかる奴なんていないだろう。

「ならば、どうするか。俺たちには大きな幅でも巨体のがしゃどくろにとっては二十メートルなんて小幅だろう。それこそ、ジャンプすれば届くだろうさ」

 俺の言葉を聞いている訳ではないだろうが、がしゃどくろは腰をかがめてタメを作っている。そして一気に伸ばす。

 ぐおおん!

 巨人が跳んだ。

「やっば、向かってくるぞ!」

 まさか跳んでくるとは思っていなかったのか、涼子は今更焦った声をだす。

「いや、これで俺らの勝ちだ」

 あんな巨体が崖の端っこに落っこちれば、十中八九そこが崩れ落ちる。だからこそ俺は少しでもそこから距離を取るために走っているって訳だ。

「着地した瞬間、崩れ落ちるはずだ」

 さあ、がしゃどくろは骨のくせして見事に着地、流れるようにかがんで両手をついて衝撃を分散する。そして、イキナリがしゃどくろが降ってきた重みに耐えられず崖端は崩れ――ない。

 崩れない。三秒、五秒止まっても崩れる様子はない。

「なんでだよ!」

「大ちゃんの考えていたことが分かった。けど、考えてもみろあれは骨だぞ。水分や臓器が詰まった巨人なら崖が崩れていたかもしれない。だが、それが骨だけになると体重で言えば約十パーセントほど、更に随分と昔の骨なら水分が抜けて更に軽くなる。つまりあの見た目で体重は見た目ほどはない訳だ」

 涼子が解説してくれる。

 俺の作戦はがしゃどくろの重さを頼っていたものだったので、そこまで重くないがしゃどくろが崖端で飛び跳ねようが何しようが前提が破綻している訳だから崩れることはないようだ。

「これでまた振り出しに戻りましたね」

 がしゃどくろもまた俺らをめがけて動き出した。

「クソがッ!」

 だが涼子はいつものあのニシシ顔になる。

「アタシにいい考えがある」

「拒否だ」

「なんでだよ! まだ何も言ってないだろう!?」

「どうせお前のことだ、ろくでもないことを考え付いたんだろう!?」

「じゃあ聞いてみろよ、あいつが骨であることに着目した素晴らしい作戦だ。まずアイツの体の、つまり骨の水分を取り除けばアイツの体は脆く弱体化するんじゃないか?」

「……なるほど、ですが、それの方法はどうするんですか?」

 アリスちゃんが涼子に聞くが、どうせ聞くだけ無駄だ。ろくでもないことに決まっている。

「まず山に火をつけて「はいやっぱりその案は却下ー!」

 涼子の声を上塗りにして妨害してやる。

 やっぱりろくでもないこと考えてやがった。

「ですが、山火事ひとつでこの街を救えるならやる価値はありますよ」

 マジか。アリスちゃんがとんでもないことを言う。

 この子、大のためなら小を切り捨てることもできる子か。

 どれも捨てられない俺とは大違いだ。

「次、来ますよ」

 がしゃどくろの潰す攻撃がまた再開する。

 今度はアリスちゃん狙いだ。アリスちゃんはチラリと後ろを見て氷壁を作り出す。

 がしゃどくろはやっぱり氷壁を砕き壊す。これ、何度も砕かれているけど効果は出ているのだろうか?

 まあ、避けられればなんでもいいのかもしれないけど。

「けど、早いところ次の作戦を考えないといけないのは事実です。せめて、がしゃどくろに関する話でもあればそこから対抗術式を組んだりできるのですが……」

 アリスちゃん悔しそうに言う。

 でも、小守が言うにはがしゃどくろは比較的近年に創作された妖怪らしい、だから弱点らしい話もないってことだった。

「なあ一ついいか?」

 後ろから追いかけてくるがしゃどくろを確認しながら涼子が挙手する。

 また山火事起こすみたいなしょうもないこと言うんじゃあるまいな。

「がしゃどくろそのものじゃなくて、類似性の強いものでよければ、アタシ一つ知ってるぜ?」

 俺は仕方なく、アリスちゃんは藁にもすがるような思いで涼子の話を聞く。



「――なるほど、確かに、類似性は強いですね。時間的にもこれが最後、この作戦に掛けてみましょう」

 涼子の話を聞いて、アリスちゃんは決心した。

 時間はもう残り一時間を切った。まともな作戦ができるのは時間的に最後になるかもしれない。

「まー、オトリはまかせなって、せっかく来たのに何の役にも立たないってのは流石にアタシの流儀に反する」

「では、私と大助さんで術の構築と発動を。いいでしょうか?」

「ああ、俺に何ができるのかわからんが、もうやぶれかぶれだ。やってやるさ」

 そういう訳で、ラストチャンスが始まる。

丁度前に投稿したのが一か月前だったりする

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