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手紙
前回から初期の話の雰囲気を出そうと苦戦しております。
今にして思えばおかしな事ばかりでした。当たり前のように貴女と共にスタジアムに試合を観に行ったことも、食べきれない量のハンバーガーとクロワッサンを買ったことも。今にして思えばおかしな事ばかりでした。当たり前のように先生の死角で授業を受けていた事も、貴女が真っ黒な背景に白の渦巻きを書き続けていた事も。今にして思えばおかしな事ばかりでした。
まだ手に絡まった貴女の髪の感触を覚えています。まだ貴女の時間が無く、焦る様子を覚えています。ですが、私は貴女の声も顔も名前も知らないというのは今にして思えばおかしな事でした。
それでも貴女を愛しております。




