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彼女の紅と銀の薔薇
「貴女に切って欲しいの」
彼女はそう言って銀色の、薔薇の装飾のしてあるナイフを私に手渡した。
「何を?」
「私の手首」
そう言って彼女は袖を捲り、手首を露にする。真珠のようなその肌には傷跡一つ無い。
「何で?」
「貴女に切って欲しいの。それ以上の理由が要る?」
その彼女の笑顔は私の手首の無数の傷跡を痛ませる。
「後悔するよ」
「きっとしないわ」
「わかった。いくよ」
その声と共に私は彼女の手首にナイフを突き立てる。紅色が銀色の薔薇を染める。
「ありがとう」
そう言って彼女は手首から出た血を口に含み、私に口付けをした。




