白黒―赤青
白い螺旋階段を上る。手すりも柵もない。もう下は見えない高さまで来ている。 それでも淡々と上る。引き返さなくていい分気持ちが楽だ。
何段上がっただろうか。幸いなことに疲労はない。だが頂上はまだまだ見えない。
人がいた。影のように全身が真っ黒な。上り疲れて休憩しているようだ。何故上っているのか尋ねると、お前と同じだ―と答えた。そして黒い人は駆け上った。私はその背中を見ながら休憩した。
休憩を終えて上り始める。空は灰色の雲で覆われている。雨が降らない内に上りきりたい。私は急ぎ足で上り出した。
雨が降り始めた。滑ってはいけないからゆっくり上ることにした。まだ頂上は見えない。下も見えない。先に居るはずの黒い人も見えない。彼はもう頂上についたのだろうか?
暴風が吹き始めた。立っていれば吹き飛ばされる。仕方なく風が止むまで座る事にした。
下から人が上ってきた。真っ白な人が。彼はこの暴風の中を難なく登ってきたようだ。何故上っているのか問われたからぶっきらぼうにお前と同じだと答えた。その刹那暴風雨が止んだ。今だと思い私は駆け上った。
空はまだ灰色の雲に覆われている。いつまた暴風雨が来てもおかしくない。だから俺は全力で駆け上る。頂上は見えてきた。あと少し―そう思い足を話した瞬間!
「ざーんねーん」
突風が吹き私の体は宙に浮いた。
螺旋階段を無理矢理掴む。しかし下降気流に呑まれその手は弾かれる。その血の赤さ、空の青さ。私はそれだけを目に入れ落ちた。