飴
「普通飴は氷砂糖と水飴で作ると思いますがウチは違うんです」
そう言うと店主は戸棚から三種類の液体を取り出した。
「それは?一つは水銀に見えますが」
「その通り、これは水銀です」
私は顔をしかめた。
「水銀は毒ですよね?」
「そこでコイツを使うんですよ」
そう言い店主は一つの液体を指す。透明で光っている。
「コイツはね、月の涙という滅多に市場に出回らない品物なんですよ。
これを惜しみなく使って水銀の毒を抜く」
そう言いながら店主は水銀に大量の月の涙を注ぐ。水銀は光を放つ。
「綺麗だ…」
「この時点で食べれますし甘いですよ」
店主がそう言い液体を匙に救い差し出す。飲んでみると、甘い。脳髄の奥に染み入る甘さだ。
「どうですか?甘いでしょう」
「ええ」
「これに更にこれを加えるんです」
そう言って店主が最後に取り出したのは赤紫の液体だった。
「それは…ワインですか?」
「ワインに似ていますが違います。これは朝焼けの露です」
「聞いたことあります。確か物凄く甘いんだとか」
「ええ」
店主はそう言うと朝焼けの露を少し加えて液体を少し煮詰め、完成です―と言い飴を手渡した。
銀色で赤紫の光を放つそれを口に含む。
なるほど。これは病み付きになる甘さだ。