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彼女の夢
「昨日夢を見たの」
彼女はそう言って話し始めたので私は柑橘系の色に染まるのを止めた。
「橋が割れたの、真ん中で。割れ目から闇が流れでて、それは星を含んでいた。星は闇の中で輝いてしまうから闇は闇でなくなって、闇が流れないから橋は最初から割れてなんかなかったの」
「違うよ。橋が割れたから闇が流れて、闇が流れたから星が輝いて、星が輝いたから闇が消えて、闇が消えたから割れ目はなくなり、割れ目がなくなったから最初から橋は割れてなかっただけなんだよ」
「違うわ」
彼女は力強くそう言って
「そもそも昨日は夢を見ていないもの」
と言った。




