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百合
私は壁に凭れ掛かる彼女の首を切ってそれを持って口づけをする。百合の花の香り。その香りが仄かに消えるように彼女の首も私の手元から消え、また生えてくる。
「お姉様。くすぐったい」
そう言って微笑む彼女を見て私は抱堪らなく抱きしめたくなった。だから私は敢えて彼女の首を切って口づけをする。その頬に接吻をする。するとさっきより強く百合の花が香る。その香りを口に含み、舐め回している間に首は消え、また生えてくる。
「お姉様。後生だから止めてください。私、耐えられそうにないです」
そう言った彼女の涙顔の愛おしさよ。私は堪らなく、堪らなく抱きしめたくなったので。……私は彼女に口づけをする。そうしてそのまま百合の香りの珠を彼女の口の中に押し込んだ。すると彼女はもう生えてくることも無かった。
「貴女は此方の方が美しいわ」
私は彼女にもう一度口づけをした。




