手術
「彼女と脳髄を繋げたいのです」
その青年は私にそう語った。私が紅茶を出しながらその理由を問うと、
「彼女の脳髄がダメになってしまって……脳髄を繋げたらまだ生かせるということを聞いたのであなたを探してここまで来ました」と。
「あなたは脳髄を繋げるという事がどういう事かわかっているのか?」
「いえ、詳しくは。ただ脳髄を繋げたら彼女を生かすことができるということ以外には」
私は息を吐いて紅茶を飲んだ。そして私は脳髄を繋げることについて話すことにした。
「私は……長い話になるから君も紅茶でも飲みなさい。生憎珈琲は無いがね。
私は人と人――といっても脳髄がダメになった人だ――の脳髄を繋げる手術を発明した、御存知の通り。理由など言わずとも分かるだろう?」
そういうと青年は静かに頷いた。
「結論から言うがそれは失敗だった。手術が失敗したのではなく、手術をしたところで治らないものなんだ」
「どういうことですか?」
「単純なことだよ。脳髄を繋げる手術をしたところで彼女の精神が復活するわけではないし、それだけではない。徒に彼女の体を傷つける事になるんだ」
そこで私は紅茶を手に取る。ダージリンの仄かな香りが広がる。
「単純なことだ。脳髄から私の体のへの指令が彼女にも届くのだからどんな体勢でも無理に動くんだ」
「それは覚悟の上です。彼女は最大限の注意を払って傷つけないようにします」
青年はそう強く言い切った。私もこれ以上止めるのは彼に悪いと思ったので手術を引き受けた。そしてそれは成功した。彼は彼女の隣で静かに眠っていた。




