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薔薇

 彼女は緑の中に居た。どうしたの―と私が問うても彼女はただ首を横に振り静かに涙ぐむだけだった。

 嗚呼、その珠が今黒く長い睫毛から放たれ、割れる―宙で―ぱりんと―。その欠片を地面は吸う。その刹那彼女の脹脛辺りまで棘のついた蔓が絡みつくのであった。

 棘は彼女の脹脛を引き裂く。その紅さに一瞬見惚れたがすぐに彼女の脹脛から蔓を外そうとした。すると彼女は静かに、綺麗な花になりたいのです―と言ったので私は手を止めるしかなかった。

 珠のような紅は白に一筋の線を残して地面に吸われた。その刹那蔓は彼女の腰辺りまでに伸びた。

棘は脹脛を、太腿を、服―青い薔薇の柄―を引き裂いた。青い薔薇が赤く染まった。

 そしてまたその血を吸って蔓は伸びた―彼女の胸まで―。

もうやめなよーと言っても彼女の耳には入らない。ただ、薔薇が香ってきたわ―と恍惚と、青白い表情で言った。

私はもう見ることしかできなかった。


 最終的に蔓は彼女を覆い、引き裂かれた服は赤く染まった。

甘い薔薇の香りがした。


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