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雨と紅茶
雨の音だけ聞いていたい―彼女はそう言いピンクのマカロンを頬張った。
空は鈍く垂れ込んでいる。
私は無言で紅茶を注いだ。ダージリンが仄かに香る。
ワイルドストロベリーのティーカップから立つ湯気を眺める。彼女はそれに砂糖を三杯入れた。
甘くない―と聞くと、甘いほうが美味しいの―と応えた。
そうして彼女はマカロンと紅茶の甘さに酔っているようだった。
私は砂糖を一杯だけ入れて飲んだ。
夜になって雨は止んだ。
彼女は、紅茶を読んだから眠れないね―と擦り寄って来た。その頭を撫でながら、雨が止んだからまた今度ね―と頬にキスをした。
彼女は、雨の音とあなたとだけ暮らしていたい―と私の頬にキスをした。




