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溶け落ちる、ソフトクリームの夜

 私が死んだら君は悲しい歌でも歌って笑ってよ。そのメールの翌日、君が死んだことを知った。月が見えない夜に君は飛び降りたらしい。

 学校からの帰り道に君はいつも死にたいと言っていた。生きたくないとも言っていた。その理由を問うといつも困ったように笑って、決まってこんなに天気が良いからと答えるのであった。そしてそのあと君は決まって、でも痛いのは苦手だからきっと今日は死ねないなと笑うのだった。ねぇ、殺してよと冗談を言うときもあった。

 悲しい歌でも歌おう。いつもみたいに。いつからか、僕は君が死にたいというと代わりに悲しい歌でも歌おうと言うようになった。君はその答えが気に入ったようで少しはにかんだ様子で歌を歌った。時には簡単な踊りをするときもあった。

 昨日も、君は死にたいと言った。僕がいつも通り悲しい歌を歌おうと言うと遠くを向いて、明日が来ないようにさと歌い出した。声が震えていた。歌い終わった後君は僕の方を向いてねぇ、殺してよと。僕は狼狽えることしか出来なかった。死にたいという君も目を腫らす君も見たことが無かった。結局僕たちは無言のまま別れた。

僕は君のことが好きだったんだ。シャボン玉のようにふわふわと、しかしいつ割れてしまうのかも分からない君のことが。でも僕には君のことが何もわからなかった。君がなぜ死にたいのかも、なぜ僕に殺してくれと頼んだのかも、そしてなぜ僕はそれに応えようと思えなかったのかも。君と別れてから僕はずっと思い続けていた。それでも、僕の頭の中にはいつも通り少しはにかんで歌う君の姿しか浮かばなかった。

 悲しい歌を歌おう。月が見えない夜に君は死んでしまった。天気のいい日だから死にたいんじゃなかったのかと君を責めたくもなった。それでも、僕にできることは君が願ったように悲しい歌を歌うだけなんだ。

 

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