青い月
故郷を離れて何回目の満月だろうか。
今夜は月が青い。その青い光を求めて蒼月草が花を開く。青い月の光の下一夜限りの花を咲かせる。その蒼さ、美しさ。
今夜は世界が青い。
私は仕方なくそこにテントを張り休むことにした。青い光を浴びすぎて体が腐食するのも困る。だから夜行性の猛獣も青い月の日は外に出ない。
ただ蒼月草だけのための世界。
美しき死の光の世界。その光景を目に焼き付けて私は眠った。
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暁に鈴のような音が聞こえた。蒼月草の授実だ。
それがわかると私はすぐに外に出てしまった。月の光など気にせずに。その時が一番月の光が強まっている事も忘れ。
一面の蒼月草の花。そこに月から光球が落ちてくる。昔の人はこの光景を見て天使の降臨と思ったそうだ。事実、それは神がかり的な光景であった。
そして光球が蒼月草の花に触れた時、爆発。種を散らす。
あまりの衝撃に吹き飛ばされそうになったがその光の蒼さ故に動けなかった。
私が動けるようになったのは正午前の事だった。
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ただあまりに光を浴びすぎたのだろう、新たに腕も腐り始めてしまった。腐食は四肢から始まる。もし腐食が胸まで侵食した時には私の命はないだろう。
それまでに早く紅月草を探し、その実を食べなければならない。
私は腐食した手でテントを片付け前から腐食していた足で進んでいった。