異界の精霊術師
よろぴく
最初に目に映ったのは、とても綺麗な深紅の瞳だった。
「おわっ!」
思わずのけぞる。まだ意識がしっかりとしていないが、なんとか眼を凝らし、先ほどの深紅の瞳の正体を確認する。
髪は長さは型にかかる程度、色は真っ白だ。小柄な体系だが手足はスラッと長い。表情はなんだか驚いている感じだが、まあしょうがないだろう。お互い様だ。
大体確認したところ、人間には間違いないようだ。
「あ、あのっ」
これは日本語か? どうやら言葉は伝わるらしい。よかったぁ。状況が状況だけに言葉が通じなければどうなる事かと思いました。マル。
あんまりこの子に待たせると悪いので俺は返事を返した。
「な、なにかな?」
ちょっとどもってしまったかな。まあ初対面だし、どもってしまうのも無理はないかな。うん。さてさて、どんなことを聞いてくるのかな? 俺自身も聞きたいことは山ほどあるけど、ここはレディーファーストということで譲ってあげましょうかね。とそんなことを考えつつ、この子の言葉を待つ。
「え、えっと、ここはどこなのでしょうか?」
コケた。ええ、こけましたとも。え? なに? 『ここはどこなのでしょうか?』だって? そんなもんこっちが聞きたいよ! っていう感じなのだけれど、俺は紳士。そういった気持を一切表情に出さずに紳士的に応える。
「そんなもんこっちが聞きたいわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
ビクッと怯える女の子。おっと勘違いしないでいただこう。これは確かにはたから見たら紳士的には見えないだろう。そうだろう。だがしかし、考えてみてくれ。今の俺の置かれている状況を! まずなんかしらない森に放り出される。そしていきなり白髪深紅の瞳をもった少女に遭遇する。さらにその少女からひとこと。『ここはどこなのでしょうか?』と聞かれる。はい、決定。もうこれ確定。確実。100パーセントいっちゃう。いっちゃうね。『そんなもんこっちが聞きたいわーー!!』ってね。