第四話 反乱軍との闘い -後編-
僕はこの村の留守を預かるために残っていた村長を訪ねた。
村長「う~む、しかしなぁ。お前さんには場所だけは教えるなと・・・」
カケル「僕はもう決めたんです!今僕に出来ることは闘うことしかないんです!」
村長「そこまでの決心か・・・。当然、覚悟はできておるんじゃろうな?」
カケル「はいっ!」
村長「・・・いい返事じゃ!お前さんの“覚悟”しっかり受け取ったぞ!」
反乱軍のアジトはこの村から北西に歩いて20分の山岳で囲まれた地帯・・・
そこはちょうど城から南西に歩いた地点と同じ距離でもある。
僕は山影に隠れそこから下を見下ろすような感じで様子を見ることにした。
ハンを先頭に村人たち数人と城の兵士だろうか・・・ざっと30人くらい。
相手の反乱軍とやらは、身なりが山賊のような格好で片手に斧を持っている。
ガタイの大きさが一際目立つ威圧感のある男が一人・・・カレがボスだろうか?
数的には反乱軍の方が50人近く・・・
だが、こっちは全員真剣と盾を装備している。力では負けてないはずだ。
反乱軍ボス「ノコノコときやがったかぁ!ハッハ、どんだけ暇だってんだ。」
ハン「確かに暇なやつらかもな。だが、悪しき種は早いうちに摘み取っておかねばならないのでね。特に・・・国王陛下に反する悪しき種はっ!」
反乱軍ボス「ケっ!正義ぶってるつもりかぁ?あんなやつに政治を任せておけねぇ!それこそおめえたちだって捨てられちまうかもしれねぇってのになぁ!」
ハン「・・・話じゃ解決できそうにないな。もっともそんなことは想定済みだが・・・」
カケル「舌戦必至だな・・・でも闘いは免れそうにないな。」
***「うわぁ~戦争始まっちゃのかなぁ?」
カケル「!?」
僕のすぐ近くでそうつぶやく声が聞こえた。
そして横を振り向くと・・・あれ?どこかで見たことのある顔が・・・
カケル「ショウ!」
ショウ「えっ!?も、もしかしてカケル君??」
僕は目を疑った。
だって、これは夢で・・・自分以外の知ってる人がここにいるなんてこれっぽっちも想像してなかったわけだから・・・はは、これで僕の夢だって確率は減ったわけだ。
ショウ「知ってる人誰にも会わないからたぶん夢だって思ってたんだけど・・・」
ショウ「でも、良かった!カケル君も無事みたいだし!」
カケル「はは、無事・・・でもなかったんだけどね。」
ショウ「えっ?」
カケル「ほら、あの剣と盾を持った左側の軍の先頭・・・実は倒れているところをあの人に助けて貰ったんだ。おかげで怪我も完全に回復したしね。」
ショウ「そんなことがあったんだ。ということはカケル君もあの闘いに?」
カケル「ああ、参加する・・・はずだった。」
ショウ「はず・・・だった??」
事のいきさつを簡単に話した。
そして、この闘いに望むという決心も・・・
ショウ「正直難しいよね・・・もしかしたら稽古の段階でカケル君の“力量”を知ってしまったのかもしれないし。」
カケル「わかってるよ。たったの数日間稽古をしたくらいじゃたかがしれてるっていうことくらい・・・たとえ夢であっても僕の身体は“普通の高校生”のままなんだから。」
ショウ「そうか・・・僕が今ここにいる意味っていうのは決して偶然なんかじゃないかもしれないね。」
カケル「えっ?それはどういう・・・」
ショウは持っていた小型のバッグから一冊の本と一本のペンを取りだした。
ショウ「この“魔法の本”と“魔法のペン”が僕をここに導いてくれたんだ!」
カケル「その本どこかで・・・」
そうだ!
宝の地図を頼りに校舎の裏庭で見つけた全ページ白紙の本・・・
そんなものが何だってここに!?
ショウ「頬に冷たいモノを感じて・・・気付いたら僕は川の浅瀬にうつぶせになって倒れていたんだ。しかも、かすり傷一つしてなかった。信じられないよね?」
ショウ「で、僕が気付いた時には既にローブとマントを身につけていて・・・左手にはペンを、右手には本を握りしめていた。とっさに思ったのがこれは何かの夢なんじゃないか?って。」
ショウは更に話を続けた。
ショウ「どのくらい時が経ったろう・・・ふと僕の手に持ってる本が見覚えのあるものだって気付いたんだ。そう、あの日裏庭で見つけた白紙の本・・・ページをめくると僕の描いたイラストがそのまま残っていたんだ!で、このページを見てよ!」
というと、あるページを開いて僕に見せてくれた。
そのページは何も描かれていない・・・白紙のページのままだった。
ショウ「このページの前後にはイラストが描いてあるのにこのページだけ。僕の記憶ではびっしり描いたはずなのに・・・と僕はこのページに描いたイラストをおぼろげながら思い出したんだ。このローブとマントを描いたってことをね!」
オレはショウの言っている意味を咄嗟に理解することはできなかった。
だが、まてよ?するとこの剣っていうのは・・・
ショウ「カケル君!その剣って・・・」
カケル「ああ、知らない間に持っていたというか・・・オレもよく分からないんだけど。」
ショウ「やっぱり・・・この本は描いたイラストが具現化されるんだ。」
カケル「それじゃこの剣はショウの描いた“伝説の剣”そのものなんだな。何だか信じられない話だけど・・・はは、そもそも今の状況がホントかウソか分からないけどな。」
ショウが言うにはこの剣には“ディバイディングソード”という名前があるらしい。
さすがに一回じゃ覚えられないな・・・もっとも伝説の剣っていうほどすごい威力があるのかどうか現時点では不明だけど。
魔法の本と魔法のペンはセットになっていたらしい。
あの時ペンがあったのかどうかは定かではないが、普通のペンでは何もうつらなかったようだ。あぶり出しみたいな仕組み?と描いてた時はあまり疑問にも思わず・・・
ショウ「ごめん、これから闘わなきゃいけないっていうのに話長くなっちゃったね。詳細は後でゆっくり話すとして・・・」
ショウは魔法の本の最後のページの方をめくりオレの前に差し出した。
ショウ「実はステータスも具現化されることが分かったんだ。ホントは今じっくり説明したいところなんだけど・・・とりあえずここに名前と特技を二つ書いてくれればレベル1からスタートするから。」
カケル「名前は本名を書けばいいの?で、特技って?」
ショウ「いや、名前はニックネームでもハンドルネームでも何でも大丈夫だよ。ただこれから何かで名乗ることはあるかな?無難な名前であれば。特技は・・・そうだなぁ~必殺技とか?技のイメージをしながら技の名前を書くとそれが実際の必殺技として使えるから。」
ショウには悪いが、その説明で理解しろっていうのが無理があると・・・
でも、今は言われた通りにするしかなかった。
必殺技のイメージはオレの頭の中には何となく・・・剣で闘うなら“力とスピード”その二つさえあればそこそこ闘えるんじゃないかって思いがあってね。それが活かせる必殺技を考えていたんだ。