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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第4章 魔女と過ごす黄金週間

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第72話 魔法使いになれますか?

 食事を片付けて風呂へ入った後の、だらだら時間。

 僕は乾いた洗濯物をバッグに仕舞っていた。

 寮ではコインランドリーなので、ここで洗うのが便利なのだ。

 順番を待たなくていいし、お金もかからないし、魔法による高速乾燥機がついているからあっさり乾くし。


 ついでに大量の買い出し品やら持ってきた衣類を整理していた時。

 不意にバッグの内側に付けていたキーホルダーが目に入った。

 詩織ちゃん先輩に貰った招き猫だ。


 そう言えば最近は、全然触っていない。

 貰った後2日位は、これで訓練していたのだけれど。


 そう思いながら手に取ろうと触れた瞬間、静電気のような感覚が一瞬走った。

 思わず手を引っ込める。


 そして恐る恐る再度触ってみる。反応なし。

 つまんでみる。反応なし、変わらない。


 ならばときっちりと親指と人差し指でもって、魔法を使うつもりで軽く招き猫に意識を集中してみる。

 お、少し前と違う。

 招き猫の視線の方向が何となく感覚でわかる。

 招き猫の視線の先から光が出ているかのように。


 その光は招き猫の前方およそ15センチ位の場所で最も強くなり、そして薄れて1メートル程度先で消え失せる。

 軽く左右に振ってみて視線の方向が動くのを確認する。

 これは、ひょっとして。


 焦点らしい一番光が強い部分を、色々な物に当ててみる。

 畳、バッグの布地、バッグのファスナーの金具、空中。

 いずれも感覚的にも実際にも変化無し。


 招き猫を畳の上に置いて手を離す。

 視線の光が消えた。


 またつまんでみる。

 それだけだと変化無し。

 軽く招き猫に集中してみる。

 また視線が出てきた。


 間違いない。

 これは僕の何かに反応している。

 これが魔力かどうかはわからないが。


 ひょっとしたら僕も魔法を使えるようになったのだろうか。

 そう思うと、いてもたってもいられない。


 なにせ学生会内で魔法を使えないのは僕だけだ。

 典明もあの杖を手に入れてから、工作魔法だの検定魔法だのバリバリ使っている。

 青葉は炎以外の魔法も訓練を始めたらしいし。


 という訳で、キーホルダーをバッグから取り外して、制作者に聞きに行く。

 詩織ちゃん先輩はカラオケコーナーのところにいた。

 運良く今は歌っていない。

 よし。


「詩織先輩すみません。実は少しこのキーホルダー、今までと違う反応をしたのですけれど」


「どれどれなのです」


 詩織ちゃん先輩は、僕から招き猫のキーホルダーを受け取る。


「ん……第一段階はクリアなのです。体が魔法に慣れてきているのです」


 と、いうことは。


「それじゃ僕も、魔法を使えるんですか」


「まだ無理なのです。でもこの調子なら、いずれ使えるようになるのです」


「どれくらいで、というのはわかりませんよね」


「確約は出来ないです。でも1月でここまで来たのなら、夏休み頃には期待してもいいのです」


 思った以上に早い。


「という訳でこれは返すのです」


 招き猫が帰ってきた。

 思わず招き猫のデコの部分を指でなでてしまう。

 頼むぞ……なんて。

 存在を忘れかけていたのに、我ながら現金だ。

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