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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第2章 魔女のいる日常

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第30話 直系先輩によるご指導

「刀の件は俺も気になっていたんだ。継いでくれると本当に助かる。ありがとう」


 修先輩はそう言って、僕に頭を下げた。

 時間があるので僕と典明の学生会参入の経緯をあれこれ話していた、その途中での出来事だ。


「いや、継ぐという程のものじゃないです。やっと初めてのものを作れたという段階でして」


「でも詩織が認めたなら大丈夫だろう」


「そうですね。私も最初の包丁の時に見ましたけれど、初めてとは思えない出来でした。あれならもう、直ぐに戦力になると思います」


 香緒里先輩までそんな事を言う。

「というのは、刀関係は学生に学校内の活動という形で作って欲しいからなんだ。学校外の会社で作ると本土にある刀鍛冶とか昔からある日本刀の店とかとの兼ね合い上、どうしても値段を高く付けざるを得なくなる。それじゃあ実際に必要な学生とか魔法使いに手が届かない。

 学生が実習を兼ねて作っているという名目なら、安くも出来るし数作らないのも特区外にあまり出さないのも言い訳が出来る。作っている本人もいい小遣い稼ぎになるしね」


「2年前は酷かったですしね」


 香緒里先輩がそう言って頷く。

 何かあったのだろうか。


「2年前、この刀造りがテレビに出て全国的に知られてしまった事があるんだ。その後の問い合わせや注文が酷い事になってね。こっちじゃ対応できないから学生課の事務局に断れないもの以外は断ってくれと投げたんだけれども。それでも詩織と合わせて100本近く打ったんだっけ、半年かけて」


「そうですね。学生課のおかげで助かりました、あの時もバネの時も」


「うちの学生課は学生が新発明したりパテント取ったりに慣れているからね。そういう筋を捌くのにも慣れている。そういう事もあって刀の件は学生の実習という名目にしたんだ。ブームが去った今でも、攻撃魔法科の3割は刀使いだしね。彼らの事を考えると一振り10万円以上にするのは可哀想だし。まあ特区外にはその5倍の値段で売るけどね。

 という訳で継続的に刀を作らなければならない訳だ。最低でも魔法攻撃科の新入生が使う分は。でも香緒里ちゃんは来年卒業だし詩織ももう4年だしさ。適任者をずっと探していたんだ」


 なるほど、そういう訳か。

 という事は詩織ちゃん先輩の勧誘時の必死さもあながち演技ではなかったんだな。

 しかし一振り10万円なら確かにいい小遣いにはなる。

 でもその前に。


「でもまだ僕がやったのは刀を打つところまでで、材料とか仕上げとか拵えとかはまだですよ」


「材料は多分次の指導工程に入っているだろう、なあ詩織」


 修先輩は何故か、ここにいない筈の詩織先輩に話しかける。

 でも、いなかった筈なのに。


「はははは、修先輩厳しいです」


 何も無いところから、いきなり詩織先輩が出てきた。

 もう浴衣姿では無く、ポロシャツにショートパンツ姿になっている。


「だいたい詩織が出てくるタイミングはわかるようになった。慣れだな」


「確かに材料の教育課程は組んでいるのです。でも朗人にはまず魔法工学科伝統の課題が待っているのです。材料についてはその次なのです」


「ああ、そうだった」


 修先輩は頷いた。

 香緒里先輩もうんうんと頷いている。


「何ですか、魔法工学科伝統の課題って」


 僕より先に典明が反応した。


「それは言えないんだ。事前準備禁止。まあお約束だからさ」


「ただ課題発表後の相談や制作協力等は大丈夫なのですよ」


「私の場合は、魔法以外の仕上げはほとんど修兄ですしね」


 どんな課題だろう。

 伝統のというからには、それなりに難しかったりするのだろうか。

 気になる。


「さて、そういう話では無く朝ご飯なのですよ。向こうの部屋も準備OKなのですよ」


 そう言えば何か美味しそうな匂いが漂っている。

 僕らは詩織ちゃん先輩について向こうの部屋に向かった。

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