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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第10章 年の終わりもばたばたと

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第239話 お手軽ハイキング

 お弁当用には、奈津希先輩が新規にパンを焼いてくれる事になった。

 そしてこの場の全員が、気分転換のお出かけに賛成してしまった。


 あと弁当代は、詩織先輩が預かっている保養所の食費から出すそうだ。

 奈津希先輩はいいよと言っていたのだが、そこは詩織先輩が譲らなかった。

 まあ状況を考えれば、詩織先輩が正しいだろう。


 まずは全員で店予定地に行って、パンが焼けるのを待つ。

 店の内装は、もうかなり出来ている。

 全体が白とパイン材木目の2つで統一された、和風とも洋風とも取れる空間だ。

 既に洋菓子・和菓子用のショーケースとパンや焼き菓子用の棚も設置済み。


 作業場の方も、ほぼ完成しているように見える。

 シンクや作業台やパン焼き釜やオーブンは、もう設置済み。

 冷蔵庫も巨大なのがある。

 全部魔法仕様で、恐らく自作なのだろうけれど。

 なお作業場の方は器具や機械類等、全部ステンレス製だ。


「何時でも開店出来る状態に見えるのです。ところで江田先輩はどうしたのですか」


「厳選材料の買い出しルート作りで、全国うろうろしているよ。今日は確か北海道だったかな」


 なるほど。


「大変ですね。新しい店だし他と比べると若いしで」


「一応修業先の店の伝手で、ルートは出来ているようだけれどね。だからまあ、挨拶回りみたいなものかな。自分で廻って腕を見て貰って納得して貰うんだって言っていたな。さてと」


 今回作るのは、例のハード系発酵無しパンのようだ。


「チーズとバターは輸入規制があってさ。向こうで使っていたのをそのまま輸入するのは難しいんだ。まあそこは、手に入るもので工夫なんだけどね」


 何やらフィリングなりドライフルーツなりチョコチップなり入れている。

 そしてふっとまた小麦のいい香りが立ちこめた。


 焼き上がったパンは今回は棒状。

 細めで長さは30センチ位。

 奈津希先輩は、それを大きめの紙袋にがさっと詰め込む。


「そんな訳で完成。さて、何処に行く」


「折角ですから、島の中の普段行かないあたりに歩いて行きませんか」


「なら大山の遊歩道を通って神社でもどうかしら」


「いいですね。入学してすぐのオリエンテーション以来、行っていないですし」


「僕もだな。神社が大分良くなったと聞いたけどさ」


 大山とは、飛行場真横にある山だ。

 登山道というか遊歩道があり、この特区の数少ない憩いの場所となっている。

 ハツネスーパーで安いペットボトルを数本買って出発。


 港の見える丘公園を右折して、バス道を空港方面へ。

 右手に団地とその先に広がる海を交互に見ながら歩き、造成中の地区になったちょっと先を左へ。

 ここから遊歩道に入る。

 岩場と草地の間を、くねくね抜けながら登っていく。


 列が大分ばらけてきた。

 愛希先輩とか体力派一同は、平地と全く同じかそれ以上のペースで上へと消える。

 奈津希先輩もだ。さすが元攻撃魔法科。


 僕はゆっくり組。

 なお典明は、もっとゆっくり組。

 まあこの辺は、土日恒例の早朝ランニングの組み合わせとほぼ同じ。


 10分もしないうちに、周囲330度が海の絶景になる。

 30度分は象頭山の部分、あっちは保護区域なので入れない。

 だからここが、一番島で見晴らしがいい場所だ。


 大山の頂上は標高88メートルちょっと。

 開けていて結構広い。

 先客も子供連れ中心に20人位いる。

 他にこの島、遊び場所も無いしな。

 スーパーから所要20分とお手軽に到着。


「それではお弁当タイムなのです!」


「はいはい」


 奈津希先輩が紙袋を横の岩の上に置く。


「本数は1人2本以上ある筈だ。味は5種類。カスタードクリーム、黒胡椒チーズ、ミックスナッツ、チョコチップ、クランベリー。クルミはどれにも入っている」


 説明途中で争奪戦が始っている。

 まあどれも、きっと美味しいのだろうけれど。


「そっち何だった。私はクランベリー」


「なら一口下さいな。私のはクリーム」


「だれかミックスナッツいないのですか。チョコチップと一口分けたいのですよ」


 賑やかに食べ始める。


 少し風はあるが寒くは無い。

 何せ南国。2月だけれど今の気温は20度近い。

 汗っかきの典明など、汗を拭いていたりする状態だ。

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