第193話 修先輩の動向把握
そんな感じで夕食を作って、お盆で持って行く。
その間典明は、僕が出したままの書類を読んでいた。
「おいよ、お待たせ」
「いつもすまないねー。 こんな時、おっかさんが生きていてくれたらなぁ」
「それは言わない約束でしょ」
いつもの感じで流しつつ飯にする。
「ポテトサラダの代わりに、ほうれん草のおひたしとかだったら完璧なんだけどさ。今日は用意していなかったから、こんなものだな」
「十分だ。今日のA食よりよっぽど口に合うのでござる」
A食とは、カフェテリアで出ているA定食の事だ。
カフェテリアは4月の新入生歓迎期間と学祭期間、あとクリスマスイブから新年1月半ばの間は宴会対応メニューになっている。
この期間はおつまみになるような単品メニューが大幅に増えるのだけれど、通常の食事メニューは逆にぐっと減ってしまう。
定食系は、日替わりのA定食のみであとは全滅。
他にはカレーとかラーメンとか、さもなくば、つまみ系をいくつかあわせておかず代わりにするか。
そして典明が夕食に求めるのは、御飯+メインのおかず+副菜というガチな定食系。
だから今の期間、A定食が典明の好みに合わない時。
彼はこうやって僕の部屋に飯をたかりに来る訳だ。
「参考までに、今日のA定食は何だった」
「干からびたアジの開き定食でござる」
干物だから、干からびているのは当然と言わないでくれ。
カフェテリアで出るアジの開きは、冷凍したまま限界近くまで時を過ごしたような代物なのだ。
塩辛いだけで、旨味はとうに分解されてしまった感じ。
あれは確かに美味しくない。
「今度学生会で海に出たら、手頃なサイズの魚を釣って、ちゃんと美味しい干物を作ってやるよ」
詩織先輩に頼めば魚群ごと捕れそうだ。
「拙者は干物は苦手でござる」
「本当に美味しい干物は生を焼いたより美味しいんだけどな」
「小生は安くて不味い干物しか食べた事が無い」
よし、今度詩織先輩に頼んでみよう。
◇◇◇
「それにしても実用増幅器か。最初の課題同様にしっかり稼げそうな代物だな」
愛希先輩直伝、完全燃焼式皿洗い中。
典明が例の書類の感想をもらす。
「僕がそれを見つけたのは偶然だよ。本当は全部修先輩の手柄みたいなもんだし。それに今そのまま外に出すのは影響が大きすぎて、当分は秘密指定だろうしさ」
その辺りはメモにも注釈で書いてあった。
だいたい魔法電池そのものも秘密指定というか、情報公開限定級の代物らしいし。
「でも権利は情報公開後から年数計算だろ。上手く行けば将来ウハウハだ」
「その頃にはきっと、もっといい組み合わせの増幅装置が出来ているって」
「それも朗人が発見したり考案していたりしてな」
典明が茶化すように言う。
さて。
「それはともかく、その取り分は何か申し訳なくてさ。元々あの魔法ブロックがあったからこその発見だし、その書類だって作ったのは修先輩だしさ」
「魔法ブロックを使っての発見だったのか、これ」
そうか、その辺を説明していなかったな。
「先週の土曜日に、適当な論文を参考に魔法ブロックを組み替えたらそんな効果が出た。なんで修先輩に相談したらその書類になった。所要8日」
「それはまたとんでもない早さだな。でも取り分に文句があるなら、直接交渉した方がいいんじゃないか。どうせ修先輩、明日も10時と15時には学生会室に来ると思うぞ、和菓子持って」
15時だけで無く、10時にも来ていたのか。
10時頃は屋台で焼飯作っているから、気づかなかった。
なら明日は焼飯を早めに作って、10時前に学生会室に顔を出すとするか。
そう思ったところで典明が立ち上がり、米と水を大型ご飯茶碗に入れてくる。
うん、おかわり了解。




