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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第9章 作って食べてで学園祭

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第186話 本気で美味しい豆大福

 日曜日は40食×6回分の焼飯を作った。

 10時にトロ箱2個分、12時にトロ箱2個分、15時にトロ箱2個分だ。


 恐ろしい事に、これだけ作っても魔力の欠乏は全く感じなかった。

 魔法使用間隔を空けたから、という問題ではない気がする。

 きっと僕の料理魔法レベルが更に上がったのだろう。

 目には見えないし、数値化も出来ないけれど。


 なお土曜日分の売り上げは、12万円を超えたそうらしい。

 当初の売り上げ目標の2.5倍近くだ。

 まあ何回も食べると飽きるだろうし、平日は内部の人間ばかりになる。

 だから明日からは、大分売り上げは減るだろうけれども。


 そんな訳で今日も屋台は無事営業終了して僕は学生会室へ。

 顔を出すと、ソフィー先輩以外は全員揃っていた。


 ソフィー先輩は予定表によると布教活動中らしい。

 今日も食べたけれどあのラーメン、美味しいしな。

 スパモン教そのものの布教は、全くやっていないけれど。


「朗人も食べるか、豆大福」


「いただきます」


 愛希先輩が箱から紙皿に入れて持ってきてくれる。

 一口食べて気づく。


「これ、ものすごく美味しいですね。何処のですか」


 何というか、餡も大福部分もとんでもなく美味しい。

 僕はパンとか菓子類はあまり詳しくないのだけれど、これって相当な名店のじゃないだろうか。


「ここの学園祭の名物でさ。創造制作研究会で作っているんだけれど、人気がありすぎてなかなか買えないんだ。修先輩や香緒里先輩は顔見知りだから、裏から直接買ってくるけれど」


 ええっ。


「こんなの、模擬店のレベルじゃないでしょう」


 断言してもいい。

 デパートとかでも扱っていないレベルだ。


「確かに模擬店のレベルでは無いですけれどね。でも元々あそこの部長だった人が作っているのですわ。魔技高専(ここ)を卒業して、今は本土で修行中ですけれど、例年この期間だけ特区に来るそうです」


 やっぱりプロの仕業だったか。


「在学中から既に美味しかったらしいのですよ。魔法工学科の大先輩で、奈津希先輩の彼氏なのです。工作魔法、特に材料の調整と加工が得意な魔法使いで、修先輩や香緒里先輩の知り合いなのです」


 それはつまり、魔法工学ならぬ魔法料理学の先輩か。

 うーん、微妙な気分。

 いや、この豆大福は間違いなく逸品なのだけれど。


 どういう人なのだろう。

 元々お菓子作りを目指していたのだろうか。

 それとも、と考えて気づく。


 創造制作研究会といえば、実作系研究会の最右翼だ。

 そこの部長で工作魔法使いなら、大学に編入できないという事はまず無いだろう。

 なら積極的に菓子作りという進路を選んだという事だ。


 それは最初からの志望だったのだろうか。

 途中でそういう風に進路を変更したのだろうか。


 待てよ、そう言えばその先輩の彼女で、学生会の先輩の奈津希先輩。

 確かあの代の攻撃魔法科の首席だったって言っていた。

 何故攻撃魔法科の首席が、パンや洋菓子作りでフランス留学をしているんだろう。

 魔法料理学の先達について、つい考えてしまう。


 でも考えてみると、僕はまだ魔法工学科で何をしたいという事すら、決めていないし考えていない。

 まだ魔技高専の1年だし、当たり前と言えば当たり前だけれども。

 魔技高専は他の高専以上に大学編入率が高いし。


「ん、どうした朗人。何か考え事か?」


「成分を分析して、この豆大福を作れるようになってくれたら嬉しいのですよ」


「これは無理ですね。成分を分析してもここまでに仕上げるのはセンスです」


 同じ材料を使い同じように調理しても、きっと同じものを作れない。

 この豆大福はそういう域のものだ。


「うう、残念なのです」


 詩織先輩が本気で残念がっている。

 でも確かにこれ、それくらいに美味しいけれど。

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