第169話 合理的なジャガイモのむき方
皿によそったり座卓に運んだりしていると、ずるずるという感じで愛希先輩が出てきた。
夕食の臭いで起きてきたらしい。
「一眠りしたらお腹空いた」
うん、心配するまでも無くいつもの愛希先輩だ。
理奈先輩が飛んでくる。
「愛希、もう大丈夫。あの時はごめんね」
「うんにゃ。私の方も何か楽しくてついはしゃぎすぎた。それより沙知は?」
理奈先輩は女子更衣室の方を見る。
「まだ寝ているはずよ。相当疲労していたみたいだから睡眠魔法かけたし、起きるとすると明日だと思うわ」
「甘いな」
愛希先輩は、寝癖髪そのままのいかにも起きがけという顔でにやりと笑う。
「即席で異空間移動魔法を編み出す奴だぜ。しかも久々の理奈特製のクリームシチュー真面目版だ。絶対起きてくるぞ」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、女子更衣室の扉が開いた。
「ん、久々に別の系統の味の予感……」
魔女は喰意地で生きているのか!
思わずそう言いたくなる。
「沙知、もう大丈夫か」
喰意地で生きているもう一人の魔女が声をかけた。
「ええ、もう大丈夫です。先程は本当に済みませんでした」
「いやいや、こっちも悪かった。追いかけっこがつい楽しくてさ」
「私は大変だったのですよ」
ちょっとほおを膨らませている方が1名。
「ああ、詩織先輩、本当にすみませんでした」
「2人を助けるのは簡単だったのですが、愛希が落とした杖を捜索するのが大変だったのです。一番役に立つ沙知の探索魔法は使えないし、ジェニー先輩の探知魔法は生物専用で物探しには使えないのです。仕方ないので最終手段を執ったのです」
「最終手段って何なんだ?」
愛希先輩は知らなかったらしい。
真顔で尋ねる。
「第1当事者の同級生に最強の杖2本使って貰って、探知魔法を無理矢理開発して貰ったのです。愛希と沙知は美雨に感謝するですよ」
と言う事は、まさか……
でも沙知先輩が異空間移動魔法をその場合成して使う位だし……
「とりあえず、忘れ物やなくし物を探すのに便利な魔法は出来ました」
美雨先輩は何でも無い事のように言う。
やっぱり探知魔法をその場で開発した訳か。
2年生2人、チート過ぎる。
あ、でももう一人の2年生のエイダ先輩も魔法合成出来るんだよな。
何なんだこの学年の先輩方は。
こっちは杖無しではほとんど魔法が使えないのに。
「そろそろ食べよう、せっかくの夕食が冷める」
ルイス先輩が常識的な意見を言う。
確かにそうだな。
取り敢えず皆席につく。
いただきますを言って食事開始。
うん、ちょっと甘めで乳製品強めで、なかなか美味しい。
きっと市販のルーとかじゃなくて自分でホワイトソース作っているな。
しかも鶏肉が綺麗にほどけていて、それでいてジャガイモも煮崩れていない。
これはかなり作り慣れている。
ポテトマカロニサラダもさらっと塩味でまとめていて美味しい。
「理奈、久しぶりに食べたけれど腕を上げたなあ」
という事は、愛希先輩は前に食べた事があるのだろう。
「でも20人分、実際は40人分のジャガイモの始末が大変でしたわ」
うんうん、そうだよなと僕は思う。
僕が自分でやる場合は表面だけを一気に魔法で高熱にして皮部分を固め、冷やした後手でこすり取る。
若干皮を厚めに剥く事になるけれど、ピーラーでもこんな大量の皮むきやってられない。
サイドメニューにポテトサラダがあるならなおさらだ。
「参考までに理奈、今回は皮むきどうしたんだ」
「前と同じですわ」
愛希先輩と理奈先輩がにやりと悪そうに笑う。
あ、何か悪い方法があるのかな。
参考になりそうなら聞いておきたい。
「参考までにどうやったか、聞いても大丈夫か」
僕より先にルイス先輩が聞いてくれた。
「簡単ですわ。色が違って毒があったりするから皮は剥かれるのです。ですから高熱でソラニンを分解し、更に大雑把に切った後皮を含む部分を色が残らない位マッシュしてしまえば」
ルイス先輩、ちょっとだけ考える。
「とすると、このポテトサラダにはジャガイモの芽も皮も含まれていると」
「土は残っていないですし、ソラニン分解済みですから問題無いですわ」
うん、確かに合理的だ。
そんな方法有りなのかは別として。
ポテトサラダを食べてみたけれど、確かに皮を剥いたのと違いは無い。
まあいいか。
取り敢えず今回の件で、愛希先輩や沙知先輩にわだかまりも無いようだし。




