【音声記録②:同僚A(佐藤)】
「長内さん、いますよ」
「いますっていうか……今日も同じラインだったと思います」
「工程的に、隣のポジションだったはずなんで」
(間)
「……え、どの人か、ですか?」
(短い沈黙)
「いや、ちょっと待ってくださいね」
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「隣で作業してた人……」
「いたんですよ、確かに」
「手袋してて、キャップ被ってて」
(小さく笑う)
「いや、それ全員か」
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「でも、話はしてますよ」
「“これ終わったら次どうします?”みたいな」
「普通にやり取りしてます」
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「……誰とだ?」
(小さく)
「いや、でも絶対誰かと話してるんですよ」
「それが長内さんだと思うんですけど」
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「でも顔が……」
「顔が出てこないですね」
「なんか、見てたはずなんですけど」
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「背は……普通くらい?」
「いや、ちょっと高かった気もするし」
「低くはなかった……と思うんですけど」
(間)
「……分かんないですね」
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「名前は、長内で合ってますよね?」
「おさない、でしたっけ」
「いや、自分は“ながうち”って聞いた気がするんですよね」
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「呼んだことはないです」
「基本、名前で呼ぶことあんまりないんで」
「“すみません”とかで通じるし」
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「でも、返事はあったんですよ」
「ちゃんと反応してたんで」
「無視されてる感じはなかったです」
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「……声?」
(沈黙)
「声、どんな声だったかな」
「普通の声だったと思います」
「特別高いとか低いとかじゃなくて」
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「いや、でもそれって」
「“誰でもいい声”ってことですよね」
(小さく笑う)
「すみません、変な言い方ですけど」
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「でも仕事はちゃんとしてましたよ」
「ミスもなかったし、普通に回ってました」
「むしろスムーズだった気がします」
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「……あの」
(少し声が小さくなる)
「この作業、自分がやったんじゃないかって気もしてるんですよ」
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「いや、長内さんの担当になってるのは分かってるんですけど」
「やった感覚が……ちょっとあるというか」
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「でも全部じゃないです」
「一部だけ、自分がやった気がする」
「でも、それも曖昧で……」
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「長内さんがやったって言われたら」
「それも納得できるんですよ」
「どっちでも辻褄が合うというか」
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(少し長めの沈黙)
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「……さっきまで、いましたよね?」
「ここに」
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「自分の左側に……」
(間)
「……いや」
「右だったかもしれない」
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「すみません」
「ちょっと、よく分からなくなってきました」




