【音声記録①:現場リーダー(山本)】
「長内……はい、いますね」
「ええ、シフトにも入ってますし、今日も出勤してるはずです」
「この工程、今日の担当も長内になってますね」
(紙をめくる音)
「はい、ここです。長内直人」
「……読みですか?」
(短い沈黙)
「えっと……おさない、でしたっけ」
「いや、ながうち……だったような気もしますけど」
「すみません、普段名前で呼んでないんで」
(小さく苦笑)
「基本、“ちょっといい?”とか、“そこお願い”とかで通じてたんで」
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「で、今どこにいるか、ですよね」
「……さっきまでこのラインにいたはずなんですよ」
「少なくとも、工程開始前にはいたと思います」
「朝礼にも……」
(間)
「……いましたよね?」
(周囲に向けた声)
「長内さん、朝礼いましたよね?」
(別の声:『いた気はします』)
「ほら、いたって言ってますし」
「だから、どこかにはいると思うんですけど」
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「ちょっと今、探してみますね」
(足音、少し離れる)
「長内さん?……長内さーん」
(周囲の作業音)
「……いないな」
(別の方向へ移動する音)
「誰か見てない?長内」
(別の声:『さっき奥の方に……』)
「奥?ああ、じゃあそっち行ってるかもですね」
(さらに移動音)
「……いや、いないですね」
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「すみません、一旦戻ります」
(足音が近づく)
「えっと、今のところ確認取れてないです」
「でも、いないってことはないと思うんですよ」
「さっきまでいたはずなんで」
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「最後に見たのは……」
(間)
「……いつだ?」
「えっと、ちょっと待ってくださいね」
(小さく独り言)
「工程開始前に一回話して……」
「いや、それ長内だったか……?」
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「すみません、ちょっと記憶が曖昧なんですけど」
「誰かと、作業の段取りの話はしてるんですよ」
「それが長内だった“気はする”んですけど」
「でも、別の人だった可能性もあって……」
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「いや、でも長内はいますよ」
「いないってことはないです」
「シフトにも入ってるし、担当も割り振られてるんで」
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「……顔ですか?」
(沈黙)
「顔……」
「いや、ちょっと待ってください」
「今、思い出そうとしてるんですけど」
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「背は……普通くらいだったと思います」
「いや、高かったかも……」
「……あれ?」
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「髪型は……」
(間)
「……すみません、出てこないですね」
「特徴らしい特徴が……」
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「いや、でも絶対いますよ」
「いないわけがない」
「今まで普通に一緒に仕事してきてるんで」
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「……ちょっと、確認なんですけど」
「長内って、いつからいましたっけ?」
(周囲に向けて)
「最初からいましたよね?」
(別の声:『いや、途中からだったような……』)
「途中から……?」
「いや、でも最初からいた気もするな……」
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「……すみません、ちょっと整理できてないですね」
「いるのは間違いないんですけど」
「いつからいて、どんな人かって言われると……」
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(小さく息を吐く音)
「……すみません」
「確認、もう少し時間もらっていいですか」
「たぶん、どこかにはいるはずなんで」
「見つかればすぐ分かると思うんですけど」
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(数秒の沈黙)
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「……いや」
「見つかれば、分かる……ですよね?」




