日々の成長を共に
※こちらの作品は 高鳥瑞穂様の『「そんなの、ムリです!」~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~』の二次創作になりますm(__)m
思いついたネタを書き殴ってみたので、敬称・設定諸々が無茶苦茶になっているのでご了承ください。
グライド視点になります。
さて今日は何をしようかと考えながら、相棒は今どこに居るのかと確認してみるとVRルームにいるらしい。
いつのまにか二人だけのたまり場となっている空間へ移ると、奥にあるソファーに六花は座っていた。
「おはよう六花」
「んんー、おはよう」
うん?
俺が現れた事には気づいているけど、自身の目の前で進めている作業に集中していたらしい。
ソファーに深く腰掛け、正面には動画ウィンドウ、手元には記録用のソフトを広げて熱心に何かをしている。
テストはまだ先だし、厄介な課題が出たとも聞いていない。
ゲームのアレコレには一先ず目処は付けたし、昨日今日で何かを進めていた訳でもない。
夢中になって、というよりも難しい問題に直面したような雰囲気も少し気になる。
「何かあったのか?」
「あったと言うべきか、気づいたと言うべきか……」
ソファーの方に歩み寄っても作業を止めず、黙って先を促すとようやくこちらを見てくれた。
「これからあたしは配信者を目指すわけじゃん?」
「そうだな」
「それで改めて考えてみたら、何も分かっていないし見直さないといけない事ばっかだなー、ってなった訳で」
恐る恐る手探りで始めた事を語ってくれているからか、普段あまり見せない態度が新鮮に映る。
「今まで投げてきたけど、これまでの配信や動画に着いてきた反応なんかを、少しは見直してみようかなと」
思わず口からこぼれそうになった言葉を、ぐっと我慢できるようになった事は誇れるのだろうか。
何も言わずに六花の隣に寄り添うように腰掛け、右腕を肩へと回してそっと抱き寄せる。
突然の奇行に思い切り声を出して慌てているが、拒絶するでもなくされるがままに受け入れてくれる事が嬉しい。
そのまま右手で頭を撫でてみると、現実との違いに若干心惹かれた。
「……そんで、いったいどうしたの?」
「ああー」
こちらを下から見上げる問いかけに、どう答えるか一瞬迷ったものの。
「ほんっとうに嬉しかったからさ、こう思わず」
「……そっか」
耳元で囁くように答えると、満更でもなさそうな声が返ってくる。
EFOの世界で『ニンカ』が悪目立ちしたせいで、アンチからの攻撃や無理解からくるしょうがない非難に晒され続け、いつしかこいつは他者からの反応を寄せつけないようになっていた。
積もりに積もった面倒事と向き合い、これからのために真剣に取り組んでくれると言う。
他の誰にも伝わらなくても、俺こそが賞賛すべきことだろう。
髪を撫でている体勢のまま、延々と褒めちぎってみようかなんて考えていたら、六花の少し先で動きっぱなしの画面が目に映り思わず声が出ていた。
「うっわ、本当に懐かしい頃のやつか」
「……そうそう、ギルドに入りたての頃ね」
「なっつかしいなあ、時間的にはそんなに経ってないけど、あの時ってこんな装備だったのか」
色々と移り変わりの激しいオンラインゲームの世界において、数か月から下手すると数週間のうちに過ぎ去った出来事すらリアルの数倍は濃密だからか、振り返ってみると遠い昔の出来事のように感じて笑ってしまう。
「二人でやりくりしていた時からしてみると、サザンクロスに加入してから本当に色々と変わったよねえ」
「知ってはいたけど、本当に世界が変わったもんな」
「……別にコンビの時に不満があったわけじゃ無いからね?」
「……ああ、俺もだよ」
本当にこの可愛さはどうして欲しいのか。
友達であり、相棒であり、恋人までは辿り着けていなかった頃。
今となっては若干直視し辛くはあるけれど、本気でゲームを楽しめていた時期だと胸を張って言える。
「そういえばさあ」
「うん?」
「なんかあたしらがまだコンビの時のエピソードまで、どっかの暇人がまとめたネタ動画があるって聞いてさ」
「ああ、アレかー……ってなんで六花が知っているんだ?」
「……とある筋から」
「あっ、はい……」
ついでとばかりに展開された見覚えのある動画は、ギルド所属前の武勇伝であり、まさかこれが本人の目に留まるなんて動画の作者本人も思わないだろう。
……あと、あの人はいったいどこまで掘り下げているのやら。
「改めて見なくても、『グライド』の知名度と信頼感は圧倒的だよねえ」
手元で操作し、いくつか現れた懐かしい動画を見やり、しみじみと呟かれては思わず笑ってしまう。
「俺が特殊だったとは言え、六花だって悪評を覆してからは様変わりしたじゃん」
「ええー」
「厳重に被っていたネコ達が逃げ出した辺りで、リスナーの大部分は受け入れてくれてただろ?」
「言い方」
私は怒っています、とでも言いたげな態度も笑って流せる。
昔の俺達がおっかなびっくりやってきた記録と見比べて、どれ程進歩してきているかが感慨深い。
「やっぱり今と比べれば、皆と連携できて無さ過ぎて笑っちゃうよね」
「…………」
「要望も多かったし、技術指導系のネタはもう少し増やしてもいいかもね」
「…………」
「……どしたの?」
「いやー、『ニンカ』が可愛すぎるなあと思って」
「――――!?」
暴れ始めた相棒を離さないよう回した腕に力を込めつつ、率直な感想をぶつけてみる。
「こんだけ意地らしい相方に気づかない大馬鹿野郎は置いておくにしてもさ」
「何で言葉にするのかなあ!?」
「こんだけ素直に反応したり、あからさまな態度を取ってたり、本当に可愛すぎでは?」
「うがああああ」
これだけ面白いものが散らばっていたのなら、あの人が夢中になって漁っているのも少し分かる気がする。
羞恥心に炙られながらこのまま弄り倒すのも良いかなと思っていたけど、動画ウィンドウごと隠されてしまう。
いつの間にかしなだれかかるような体勢から、俺の腹にしがみつくような格好になっている相方の背中を撫でつつ、もう一つ目についた物に触れてみる。
「そっちは調べてみた事か?」
「……そう、チャットやコメント欄をざっと確認してみた」
書き散らしている情報の中でも、知っている名前やよく見る名前がいくつかある。
「こうしてみると、本当に色んな人達に見守られて?来たのかなって思えてさ」
「サザンクロスの看板ありきとはいえ、本当に不思議なもんだよな」
どの動画で、誰が、どんな、何のために。
他にも色んな事を抜き出して、六花なりにリスナーについて判別していくのだろう。
……まあ、最初期からついてきてくれてる面々って、そこそこ付き合いのある知り合いばかりではあるのだが。
「『ニンカ』が良ければ、これからはもっとファンとしてついて来てくれてるリスナーとの交流を増やすのもありかもな」
「……えっ!?」
思わずといった反応に苦笑しながら続けてみる。
「元々俺の方では頼まれたり誘われたり、ちょこちょこ出かける事があっただろ?」
「うん」
「元から知ってる相手だけじゃなくて、リスナーからも大変な状況じゃない時は助っ人を引き受けて、大々的にとはいかないまでも繋がりはあるんだよ」
「…………」
「そういう集まりだと、『良ければニンカさんも』ってのはあったし、なんなら六花宛てのメッセージなんかも結構な量を預かってるからな」
「そっかあ……」
どこか納得した感じの六花に、もう少し踏み込んだ話もしてみるか。
「ドリアンと相談しながらになるけど、俺達がチェックして、事前に動画への出演についての交渉とかを進めて、そっから小規模な形で始めていければな」
「少しずつ?」
分かってい無さそうな顔で聞き返す六花。
「ああー、例えば六花が応援してきた配信者がいて、ある日突然今までやってきた事と正反対な事をし始めたらどう思う?」
「どうしたんだろ、以外ある?」
「んで、そういった態度の原因が収益や所属先、第三者の影響で『今まで楽しんできたモノ』と少しずつでも変わり始めたら?」
「…………」
「なるべくリスナーに受け入れられるやり方を探っていく、そのための準備をして行くのも課題かな」
「なるほどー」
納得できたといった顔で頷く様子に笑いつつ、もう一つ大事な話をしてみるか。
「例えば『こんな大きなことをしてみたい!』って思い付きがあったとしても、初心者でしかない俺達には経験に、時間に、余裕にと色んな要素が足りなさ過ぎて、とてもじゃないけどできないだろうからな」
「……余裕?」
「そう、余裕」
分からないと顔に書いてあり、少し前まで俺も同程度だったのだからこの業界は本当に難解だ。
「これからもサザンクロス所属のプレイヤーとして参加しながら活躍して、二人で遊んで、二人で配信もして、他の仲間と交流しながら、そこに加えてリスナーを交えたイベントの立案・準備・実践・総括までしてみ?」
「…………配信者ってちゃんと生活できてるの?」
「少なくとも専業であったり、支えてくれるスタッフが居てくれなきゃ投げるよな」
「ドリアンってすっげえ……」
「そういう事だな」
想像するのもしんどそうな顔をしている相方の頭を撫でてみる。
「動画や配信のベテランであるリーダー達や、大手事務所所属のおるさんみたいな、超一流が直ぐ側にいるから配信の世界に興味を持てたけど、これから始めるんだからまずは一歩ずつだな」
「そうだね、慣れるまでに絶対やらかす自信がある……」
「……とある有名な配信者がいてそれまで順調に活動できていたのに、ある日突然無告知で大型イベントが勃発して、手がけてる最中の案件と定期的にやってる配信と、次に控えている参加予定の大会準備がもろ被りする事件があってだな」
「アレはww悲惨な事件だったけどwww」
これまでに遭遇した事件の中でも特に大変だった話をすれば、それを思い出した六花も笑っている。
「兎に角安全運転を心がけるとこからだな」
「安全」
「連れてくる相手はなるべく身内、セリスさんやアネシアさんに頼み込んで一緒に何かをするだけでも、リスナーはこぞって食い付くだろうし」
「確かに、色々できるのは楽しみかも」
ウンウンと頷いている。
「普段やっている事を挟んでみてもいいし、模擬戦なんかを皆の許可を取って見せてみるのも悪くないだろうしな」
「…………」
「どうした?」
「んんー?」
「六花?」
ふと黙り込んだと思うと、身体を離して座り直すと腕を組んで唸りだす。
邪魔をせずに待ってみると、思考がまとまったのかこちらに顔を向ける。
「リスナーとの交流ってさ」
「ああ」
「必ずしも生配信じゃなきゃいけない、って訳でもないよね?」
「うん?……確かにそうだな」
「じゃあさ、『リスナーからの依頼』をあたし達が集めて、その中で協力できそうな依頼をいくつかまとめて挑戦してみて、その様子を後で動画にしてみるのってどうかな?」
「…………んんん?」
どこかワクワクしているような表情で、予想外の球を放り込まれて思考が止まる。
「あたし達に時間が無いように、一般的なリスナー達も突発的な動きには対応できないよね?」
「まあ、そうなるよな」
「なら予定日を打ち出して、それまでにそれぞれ要望を送ってもらって、時間の取れるタイミングであたし達と一緒にできそうな依頼にいくつか挑戦してみてさ」
「…………」
「その時の挑戦風景は垂れ流しで配信しながら、成功したり失敗したりを後日きちんとした動画にしてみたりして」
「………………」
「あとは動画に来た反応なんかを拾ってみたり、同じような形で寄せられた要望に挑戦してみたり、二人で一度にできる量は全然無いけど毎週何かのネタを届けてみる感じで」
目指す形は正統派と言えそうなやり方だけど、それをここで引き当てるのか。
「……やっぱ六花は凄いよな」
「あははは……必要な事の多さに気が遠くなるけど、色んな事が出来たら楽しそうだよね」
屈託のない笑顔に、笑いながら頷き返す。
「なんてったってサザンクロスが誇る『メイン盾』が、条件付きだけど手伝ってくれるんだよ?いくらでも食い付いてくるでしょこんなの」
「……言い方w」
堂々と胸を張って言う事がそれか。
楽しむための下準備、少しだけ先の目標が見えてくる。
「今日の都合を聞こうかと思ってたけど、このまま一緒に色々と練ろうか?」
「おっけー、ちょっと休憩挟みながらで良いなら、このまま全然頑張れるよー」
「詳細についてはリーダーとドリアンの意見を貰いたいし、大まかな部分だけでもまとめてみようか」
二人で考え、二人で選んで。
あーでもないこーでもないと進めた会議は、思いの外のんびりと進んでいった。
思いついたネタを縦にしたり横にしたり、転がしてみたら止まらなかった模様_(:3 」∠)_ドウシテ……




