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淡い思い出

作者: 月夜野ルナ

淡い思い出  (これはフィクションです)


それは僕が中2の夏の頃。当時の僕は皆に押し付けられるかっこうで「クラス委員長」を

やらされて、同時に副委員長に立候補してなってくれたのは涼子。


普通は出来のいい奴が委員長になるもので僕がやらされたのは体の良い押し付け。

くらべて涼子は顔は並だが頭脳明晰、何にでもよく気が回る。それがなぜか副委員長に

立候補。他に出る者もいなかったのでそのまま決定。


そんな僕達に待っていたのは「夏のキャンプ旅行」クラスごとに離れた山中のキャンプ場で

自炊して一晩を過ごすというもの。


さて、それで困ったのは僕。なにせ乗り物に弱い。市内のバスに乗っただけで気持ち悪く

なるのに長距離バスなんて・・・案の定2/3ぐらい走ったところで盛大に嘔吐。

横で甲斐甲斐しく介抱してくれる副委員長。カッコ悪いなぁ・・。


そんなこんなでバスは目的地のキャンプ場近くに停車。キャンプ場まではしばらく歩かないと

ダメみたい。 弱った身体を引きずるように歩く僕。


キャンプ場に着いた僕達は各班に分かれてテント内に荷物の持ち込み、整頓。そして夕飯の

支度。テント近くのレンガを積み上げた炊事場で飯盒を使いご飯を炊く者、小さなフライパンで

ソーセージやら半焼してきたハンバーグを焼く者。カレーを煮込む者。


僕は食欲が無かったので炊きたてのご飯に梅干しを入れてお握りを作って食べていた。

やはり炊きたてのご飯は美味い。すると涼子がやってきて


「やっぱりそんなのしか食べてない。それじゃ明日へばっちゃうからこれも食べて。

私が焼いたの」 と卵焼きを出してきた。ちゃんと味の整った綺麗に焼目のついた卵焼き。


「あ、うん、美味いよ。ありがとう」


「ちゃんと食べないとね」


それから消灯までの自由時間はどのテントで過ごそうと自由だった。僕は僕の班のテントに入り

くだらない話ばかりしていた。そこに涼子とその友達が入ってきた。


「いいですか~?」 「おぅ、女子が来たww」

============================================


もうそろそろ消灯時間になった時、僕はおもむろにリュックからウイスキーの小瓶を出して


「みんな興奮して寝れないだろうから、ちょっと飲むかい?」と言った。


すると皆は 「意外ー。常日頃真面目な委員長がどうしたの?」


「まぁ・・こんな時だからいいんじゃない?」とキャップに少しずつ回し飲んだ。


「クゥ~、効くねぇ・・」と言う者、ゲホゲホと咽る者。さまざま(笑)。 


量が少ないからみな酔う程の事も無かった。そうして消灯。男子・女子と別れてテントで就寝。


どれくらいたったろう・・テントの入口付近で寝ていた僕に


「委員長・・・」と外から囁く声が。そっと入口のファスナーを開けると涼子が縮こまっていた。


「どした?」と聞くと「ちょっと・・怖いからトイレ・・」


僕は黙ってスニーカーを履き外に出た。トイレはテントから少し離れたコテージ脇にあり

外灯も点いていたから暗くはなかったけど・・僕は彼女と手を繋ぎトイレヘ。


そしてテントに帰る前に「ちょっと風にあたろうか・・山の風は涼しいね」と近くの芝生に腰を

降ろした。横に座る涼子。ふたり手を繋いで寝転んで星を見上げる。


「なぁ・・バスの中とか夕飯とか・・いろいろありがと」


「どういたしまして・・」


「・・それで・・副委員長って・・好きな奴とか・・居るん?・・」


「何よ急に・・・んー・・・居るよ。」


「・・・そか・・やっぱりな・・・」


「・・居るよ・・・隣に・・・・・」


「は? 」


「で、それを聞いてくるって事は委員長、私を好きって事?」


「・・・うん・・・・」


「良かった。・・・」


「ホントに?」


「だから私、ちょっとでも近くにいれるように副委員長に立候補したのに、ちっとも気づいて

くれなくて。」


「あ・・・ゴメン。」


ふっ・・と会話が途切れて横を見ると涼子もこちらを見ている。どちらともなく顔を寄せ合って・・

(それが永遠の誓いになるとはその時はまだふたりとも気づかずに・・)


それから涼子をテントに送って僕もテントに戻って横になった。けど・・・さっきの事が頭の中で

渦巻いて眠れる訳がない。ついにそのまま朝になってしまった。


朝食はコテージの賄いさん達が作ってくれたのを食べた後、テント撤収掃除して帰宅のバスに乗車。


ほとんど寝ていないのに揺れること道中1/2でもう気持ち悪く・・

また嘔吐した。それをまた横にいた涼子がかいがいしく・・


僕はリュックからウイスキーの小瓶を出してまたキャップ1杯をキュッと飲んだ。

その匂いを嗅ぎつけて前に座ってた引率の教頭先生が


「お前、何飲んでんだ! 出せ!」と叫んだ。


僕は「酔い止めの薬です、気付け薬です!」とやり返した。


すると教頭は 「いいから出せ! なんだ中学生がこんなの持ち込んで生意気だっ!」と残ったのを

一気に飲んでしまった。


「あ・・・全部・・・」


「この野郎! いっちょ前に(サントリーリザーブ) なんて生意気なんだよ! 学生のうちはトリスでいいんだ!」


って言うからみんなで爆笑してしまった。その後呼び出しとかもっと怒られるかな・・と思っていたが


「薬ならしょうがないな!」とうやむやになった(笑)。


その後にクラスの皆に(僕が告って付き合い始めた) と噂が流れ全校公認の仲になったのはちょっと恥ずかしかった。


そんな僕の淡い思い出。



おしまい。



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