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第7話 腹ごしらえ……のついでに魔導書を集める。

「……ハルカゼ。あの、一体何を?」

「も?」


 コッコルは寂れた港町だが、『よくわからない物を扱っている市場』はそこそこ広い。

 端的に言えば骨董品店のような店が並んでいるところがある。


 どこか闇市っぽい雰囲気があり、活気はないが、マニアを一人掴んだら稼げそうな、そんな雰囲気を感じる場所だ。


 そんなところを、ハルカゼはホットドッグを食べながら歩いていた。

 なお、袋の中には、紙で包装されたホットドッグがまだまだ入っている。


「腹が減っては戦はできぬ! 腹が減ってはおっぱい揉んでも楽しくない! これは常識ですよ!」

「後半は初耳ですわ」

『私も初めて聞いた』


 とりあえず、何かするのなら、まずは食べてから。

 それがハルカゼのやり方のようだ。


 別にシリウスとしてもクリファスとしてもその点を反対する気はないのだが、なぜ胸の話までつながるのかがわからない。


「それで、この市場に来た理由を聞きたいですわ」

「む~……私の直感だと、いいものが置いてそうだと思ったからです!」

「それは……私からは何も言えませんわね」


 ハルカゼは特別、語彙力が豊富というわけではない。

 だからこそ『直感』という言葉を使うわけだが、話を聞いているシリウスとしては、言われても困る話だ。


 ……まぁ、別に、困るといっても、致命的な何かにつながるわけではないので、シリウスとしては割とどうでもいいと思っているが。


「おっ!」

「あら?」


 何かを見つけたようで、ハルカゼが走り出した。

 一つの骨董品店に入っていき、目的の場所に一直線!


「……ありました! 目的の物はこれです!」


 魔導書だ。

 ハルカゼが手に入れていた『クラウドグリフォンの魔導書』と同じ形で、同系統を思わせる装丁である。


「魔導書? あれほどの身体能力があって、今更それが必要とは、どういうことですの?」

「むへへ~。おじさん。これって金額はいくらですか?」

「あー……正直使いものにならねえからな。全部で、銅貨10枚で良いよ」

「おーっ! わかりました!」


 銅貨を10枚払って、魔導書をゲット。


「よっしゃ! 魔導書ゲットです!」

「えー……『ぬかるみの魔導書』『カカシの魔導書』『めまいの魔導書』『悪臭の魔導書』『肉切り包丁の魔導書』の五冊ですわね」


 確認するシリウス。

 いろいろ、頭の中で考えたが……。


「正直、最新式の魔道具を買う方が役に立つのではなくて?」


 そう言っても文句を言われない程度には、微妙なラインナップである。


「しかも、ハルカゼは文字を読めません。魔導書の表紙を見ても、何の効果があるのかわからないはず。一体どういうことですの?」

「秘密はこれにあるんですよ!」


 木の剣、ダートコリドーの柄を指でトントンと叩く。


「その剣……グリフォンを召喚する剣では?」


 町に入ってから、グリフォンは引っ込んでいる。

 ずっと出しているとクリファスの魔力を微量だが消費し続けるということと、あまりにも目立つからだ。


 その『一時的に引っ込める』というところを見ているため、シリウスは『グリフォンを召喚できる魔導書』だと思っている。


「まぁ、あとで見せてあげますよ! この剣の本当の力を!」

『それ、シリウスを図書館に招くということ? 別にいいけど……』


 クリファスの認識において、ハルカゼは『主人公』なのだ。


 悪事に手を染めるならともかく、大抵のことは止めようと思っていない。


『……まぁ、私がハルカゼの育ての親だと知ったら、何を言われるかわからないし、言い訳だけは考えておきましょうか』


 出会ってからまだ半日もたっていないが、ハルカゼはシリウスを散々振り回している。


 そろそろ『親の顔が見たい』となっていてもおかしくはない。


 とはいえ、クリファスも、ハルカゼが島の外に行けるようになるとは想像していなかったため、仕方のない部分ではある。

 しかし、それはクリファスの都合であって、ツッコミ役に強制就任させられた側だって文句を言う権利はあるのだ。


「む~。他にも何かあると面白いんですけどね~」


 きょろきょろ見渡しているが、視界には映らない。


『さっき、店主は『使いものにならない』と言っていたし、聞かれたら倉庫から持ってくるけど、基本的には店頭に置いていないということかしら。まぁ、もう500年も経ってるんだし、当然ね』


 どれほど頭が固い文化で政治が決まるとしても、500年もたてば発展するものだ。


 ただ、500年も経っているにしては、魔導書に傷が一切ないのは、あまりにも綺麗すぎる。

 素材そのものがかなり特殊なのは間違いない。


『それに、シリウスが持っている魔道具もそう。一部ではあっても、かなり魔道具が発展した市場があるのは、間違いなさそう』


 もう一つ。


 そもそも、魔導書は『奪われた』から、大陸にあるのだ。

 魔導書の作成にクリファスが関わっていたのはほぼ間違いないが、それにしては執着が小さい。


 ハルカゼの歩みを邪魔しないためにそういうスタンスを取っているのか、それとも……。


「よし、あとは準備を完璧にするため、ホットドッグを10本買いますよ!」

「意味が分かりませんわ……」


 ……まぁ、ハルカゼの歩みにおいて、難しいことなど、考えるだけ無駄ではある。

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