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第5話 冒険者ギルドへ!

「町には美味しいものがたくさんあるんですね! お金って凄いです!」


 串焼きにかぶりつきながら、ハルカゼはいい笑顔である。


 先ほど換金した『葉っぱの形の水晶』だが、そこそこの金額になったようで、屋台で買い食いしてもお金が足りない事態には陥っていない。


「……ぼったくりがいなくてよかったですわ」


 隣にシリウスがいたからだろうか。

 今回、ハルカゼが買った場所で、ぼったくりをする者はいなかった。

 というより、さすがに王女が傍にいるのに後ろめたいことをする奴はいないだろう。


「む? ぼったくりってなんですか?」

「普通よりも高い金額を提示することですわ」

「……金額ってなんですか?」


 シリウスはこけそうになった。


「本来なら、銅貨5枚で買えるものを、銅貨10枚で売る。といった話ですわね」

「……要するに?」

「それをされたら、今、ハルカゼが食べているものが、本来の半分しか食べられないということですわね」

「そんなの絶対嫌ですうううっ!」


 今のところ、『食事』がハルカゼの趣味嗜好のすべてと言える。

 シリウスの胸を後で揉むといっていたが、とりあえずそれは置いておこう。


 で、その食事が本来よりも少なくなるのは流石に嫌のようだ。

 その例を即座に出せるシリウスも頭の回転が速い。


「ただ、値札を読めますの?」

「値札?」

「店の食べ物の傍に、数字が書かれた札がありますわ。アレが値札ですわ」

「……私、数字の読み書きができません!」

「本当に13歳かお前!?」


 あまりにも文明性が無さ過ぎてビビるシリウス。


 ……とはいえ、別に、このボルグニル王国の識字率は、日本ほど高くはない。といった程度である。

 別に読めない人を目の前にしてもおかしくはないが、数字すらわからんとは思わなかったようだ。


「まぁ、後々、教えますわ」

「わかりました!」

「とりあえず、このまま冒険者ギルドに行きますわ」

「冒険者ギルド?」

「そこでライセンスを発行してもらい、身分証明に使うためですわね」

「むー……受付のお姉さんはおっぱいが大きいですかね?」

「あんなに社会性がないのに、何故受付があり、女性が立っていることが多いという前提で話してますの?」

『たぶん私のせいね……』


 シリウスには聞こえないが、クリファスは剣の中で頬が引きつった。


 要するに。


 クリファスが教えたことの内、胸に関することはよく覚えているということだ。


 とりあえず、冒険者ギルドに向かう。

 大きな建物の扉を開けて、中に入った。


「おおっ! 酒臭いですっ!」


 率直な感想。と言えば何でも許されると思っているのだろうか。


「……まぁ、酒場が併設されていますし、当然ですわね」

「むー……とりあえず登録します!」


 受付に向かう。

 きょろきょろ見ていたが、一番胸が大きい受付嬢のところに行った。


「ハルカゼ。そっちは初めて来た人が使うカウンターじゃありませんわ」

「えっ!? そうなんですか!? 胸が大きいのに!?」

「価値基準どうなってますの?」

「で、初めて来た人が使うカウンターってどこですか?」

「あそこですわ」

「おー……」


 にぱっと笑って、ハルカゼは受付に行った。


「えーと……冒険者登録に来ました」

「フフッ、それでは、こちらに必要なことを書いてね」


 何かの紙を取り出した。


「むー……私、文字の読み書きができないですぅ」

「はぁ、私が代筆しますわ」


 というわけで。


「名前は?」

「ハルカゼです!」

「年齢は?」

「13歳です!」

「出身は?」

「その場所の名前を知りません!」

「特技は?」

「ナイフと火属性魔法ですかね? 果実を見つけるのも得意ですよ!」

「どうして冒険者に?」

「なんとなくです!」

「……真面目?」

「はい!」


 シリウスは諦めて記入した。


「というわけで、これでよろしいですわね?」

「え、えぇ……では、手続しますね。後は、ハルカゼさん。こちらに触れてください」


 水晶玉を取り出す受付嬢。


「む? なんですかこれ」

「魔力量を計測するんです。一般的に、魔力量が多い人は成長が早いので、先に確認しておくんですよ」

「おー……」


 ハルカゼはあまり興味がないようだ。

 ……食べられないからだと思われるが。


「えいっ!」


 ハルカゼは水晶に触れる。

 すると、中に文字が浮かんだ。


『ZZZ……』


 とのことらしい。


「起きるですうううっ!」

「い、一体何がどうなるとこうなりますの?」

『ハルカゼの魔力操作は私が開発した独自の物を仕込んでるから、それが影響してるわね。大陸式の魔道具の場合、ハルカゼの魔力は静かすぎるということかしら』


 クリファスは冷静に分析しているが、聞こえているのはハルカゼだけ。そしてそのハルカゼが理解できていない。


『フフッ、ハルカゼ。左手で剣を握って、右手でもう一度触れてみて』

「むー……むっ!」


 左手でダートコリドーの柄を握って、右手で触れる。

 すると……水晶玉は、強く光り出した!


「お、おおっ!」

「ええっ!?」


 いきなり光り出しておどろくシリウス。

 水晶玉の内部には、『SS』の文字が浮かび上がる。


「お、おおおおっ!」


 ビキッ! とヒビが入った。


「も、もういいですわ!」


 ハルカゼの手首をつかんで、水晶玉から離した。


 水晶玉が落ち着き始める。


「ふう、壊れるかと思いましたわ。一体どういうことですの?」

「むー……私もよくわかりません!」


 まぁ、とりあえず……。


「あ、アハハ……魔力量の確認はあくまでも参考なので……とりあえず、こちらが、ハルカゼさんのライセンスになります」


 長く受付をやっていればこんなこともある。の精神で話を進めることにした様子の受付さん。どうやら変態慣れしているようだ。


 カードを受け取るハルカゼ。


「これで私の冒険者ということですね!」

「そうですわね。まずは、Fランク。新人ですわ」

「おおっ、何かよくわかりませんが、よかったです!」


 島でクリファスと二人で生きてきたハルカゼにとって、『何者かになる』という経験はない。

 それゆえに『よくわかっていない』ようだが、とりあえず、嬉しいのは間違いないようだ。

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