表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/10

第3話 王女が襲われているところに着……墜落する

「おおっ、でっかい島ですね! なんだか面白そうです!」


 ハルカゼはグリフォンに乗って、海を渡り大陸にやってきた。


 目に見える全てが初めての光景であり、目を輝かせながら見渡している。


『どこか、適当なところで休みましょうか』

「むぅ、近くに森がありますね。どんな果物があるのか楽しみです!」


 森と言えば果物がある場所。

 ……いや、動物がいることは島にいてもわかっているはずだが、主食が芋や果物のハルカゼにとって、森と言えば果実なのだろう。


 そんなことを話していると、グリフォンの体が、ガクッと揺れた。


「うおっ! どうしたんですかグリフォンさん!」

『大規模な障壁魔法が森の中で展開されているようね。グリフォンは翼だけでなく魔法も使って飛んでるから、こういうのに弱いのよ』

「えぇ!? こんなに強そうなのに!」

『グリフォンを強化できるほかの魔導書を揃えて、展示エリアにおいておけば、これくらいの障壁はどうということはないわ。ただ、ノーマルランク一冊ってそんなものよ』

「ノーマルランクってなんですか! うわっ! 落ちるですうううっ!」


 グリフォンが飛行を維持できずに、森の中に落下していく。


「うおっとっとっと!」


 グリフォンはモフモフすぎて上手く踏み込めない。

 自身とグリフォンの体に魔力をまとわせて鎧にして、落下しても問題ないようにする。


「うおおっ! んべっ!」


 そのまま、地面に背中から激突した。


「いつつ……大丈夫ですかグリフォンさん」

「グルル……」


 グリフォンも墜落したが、ケガはなかったようだ。


「もおおおっ! あんな結界を出してるなんて、一体誰ですか! こんな迷惑なことをしたのは!」


 ぷんぷん怒っているハルカゼ。

 ただ、視線に気が付いて、振り返る。


「む?」


 そこにいたのは、動きやすいタイプのドレスを着た、長いプラチナブロンドの美少女と。


 そんな少女を複数人で囲う、鎧を着た兵士たちだ。


「……どういう状況ですか?」

「な、なんだこの小娘は。空から降ってきたぞ?」

「なんだあの生物は。鷲の頭と翼に、獅子の体……グリフォン?」


 兵士たちの方が驚いているが……。


「フンッ、何があったのかは知らんが、任務には関係ない」


 兵士たちの中で隊長と思われる、豪華な槍を握る男が鼻で笑った。


「さて、シリウス王女殿下。少し邪魔が入りましたが、我々には関係ないこと。その野蛮な武器を捨てて、王家の誇りである槍を手に取るのです!」

「お断りしますわ」


 少女の方は、拳銃を思わせる武器を兵士に向ける。

 シンプルだが洗練されたデザイン。と呼べるそれは、最先端を思わせるものだ。

 ただ、その拳銃に『銃口』はない。


 少女が引き金を引くと、本来なら銃口に当たる部分から、何かの弾丸が飛び出した。


 しかし、兵士たちの鎧に当たる寸前、『障壁』にあたると、霧散して消える。


「ぐっ……」

「無駄です。鎧が常時展開する『対銃器用障壁』により、銃による攻撃は通りません。しかも、我々に怪我をさせないように、麻痺属性にしているようですが、威力としては密度が落ちる。貫通できるものではありませんよ」

「そんなことは百も承知ですわ。ただ、そんな無駄な金の装飾をつけまくった槍など、私の美学に反しますの。絶対に嫌ですわ」

「わからないお方ですね。ただ、我々も、『とらえる際に手段を選ぶな』と言われています」


 そう言って、鎖を取り出す隊長。


「罪人を拘束するための鎖魔道具ですの?」

「その通り。使用許可は下りています」

「誰から下りたのかは聞かないでおきますわ。ただ、どのみち反対ですわね」

「残念ですが、あなたの意見を聞くという選択肢は我々にはありません」


 そういって、兵士たちは動き出した。


 それに対して、ハルカゼは……。


「むう……よくわかりませんけど、一人で寄ってたかって迫るのは卑怯ですうううっ!」


 政治も立場もわからない。

 伊達に13年も野生児をやっていないのだ。

 ハルカゼはダートコリドーを構える。


「こういう時は……とりあえず弁慶をぶっ叩いて全員を悶絶させてやるです!」

『全員の脛を私(剣)でぶっ叩く気か。正気を疑うわマジで』


 地獄である。


「な、何を言ってんだコイツは」


 クリファスは元日本人である。

 ハルカゼが『弁慶』という個人名を知っているのは、そこから聞いたものだろう。

 それゆえに、兵隊たちはわからない。


 要するに、『脛を叩こうとしている』と、わかっていない。


「ふっ!」


 ハルカゼは足に魔力をまとわせると、一気に接近。

 兵隊の一人の下に入り込んで、足の脛にダートコリドーを叩きつけた。

 接触の瞬間、剣が光っているので、何らかの魔法を使ったらしい。


「がっ! いづううううっ!」


 木の剣であるダートコリドーと言えど、全力で振れば衝撃はある。


 兵士は倒れて、足を抑えた。


「さて、次は……」


 顔を上げて、周囲の兵士を見る。


「な、何だお前は!」

「そんなことはどうでもいいんですよ! とりあえず、ぶっ叩いてやります!」

「ぐっ、わ、私は、ボルグニル王国軍に所属する兵士だぞ。その私の任務を邪魔するのか!」

「……シッ!」


 ハルカゼは1秒くらい考えたが、よくわからなかったので突撃!

 隊長の下に滑り込んで、そのまま、脛にダートコリドーを叩き込んだ。


「ぐあああああああああああっ!」


 そのまま足を抑えながら悶絶する。


「次はお前たちですうううっ!」


 槍を構えている兵士たちだが、ハルカゼの速度に全く追いつけない。


「ぐっ、な、なんだこいつぐあああああっ!」

「ぜ、全然見えな、いでええええええええっ!」

「ど、どうなってぎゃあああああああああっ!」


 兵士であり、鎖を持ち出す以上は『捕縛任務』だと思われるが、一応は訓練を積んでいないと任されない任務だ。


 それ相応に、武器を扱う訓練を受けた兵士が、脛をぶっ叩かれて悶絶している。


『やっぱハルカゼは強いわ。とはいえ、私が教えた魔力操作を全て習得してるし、平均でいえば、あの島のモンスターはこの大陸のモンスターよりも5倍は強い。これくらいできるわよねぇ』


 クリファスは剣の中で余裕そうである。


 彼女が語った通りだとするなら、機能、ハルカゼのパンツをくわえて森の中を走り回っていた3メートルの熊も、確かな強さを持つ……どころではないレベルのモンスターなのだ。


 しかし、そんなモンスターが、全力で逃げるほど、ハルカゼは強い。


 クリファス直伝というらしい魔力操作も、幼いながら全て習得している。


 紛れもなく強者なのだ。


「さてと……で、あなたは誰ですか?」

「え、えっと……わ、私は、シリウス・ボルグニル。ボルグニル王国の第三王女ですわ」

「シリウスさんですね! 私はハルカゼと言います!」


 立場がどうとか、ハルカゼにはわからない。

 そのため、ただ、相手の名前を呼んで、自分も名乗る。

 それだけである。


「それにしても……その魔道具。なんだか芸術品みたいでとても綺麗ですね」


 ハルカゼはシリウスが手にする銃型の魔道具を見る。


 先ほどは麻痺の弾丸を撃っていたようだが、他にもいろいろな弾丸が出るものだろう。


 無駄のない洗練されたデザインであり、ただ使いこなすだけで、見栄えがある。


 ただ、そう、ハルカゼは……『触れてはならないスイッチ』を、踏み抜いてしまったようだ。


「そうでしょう。いいこと、よく聞いてなさい。これはただの銃型魔道具ではありませんわ。魔道具闇市の一角、スタイリッシュマーケットの三大ブランドが一つ、『エーテリオン』社が誇る、リベリオンシリーズの最新モデル『ホワイト・リベリオン』! 見なさい、この無駄を一切排したストレートな銃身! 伝統的な貴族趣味の魔道具に見られる、あの無意味な宝玉や金細工などどこにもないでしょう? これこそがエーテリオンの哲学、『機能美』の真髄ですの!」

「きのーび……?」

「そう! 筋肉質なデザインで破壊力を誇示する『ジャガーノート』社とも、宝飾品のような装飾過多で魂の在り様を問う『ルミナス』社とも違う! エーテリオンは、『最高の性能を追求した結果、必然的に生まれる究極のシンプルさ』こそが至上の美だと考えているのですわ! このグリップを見てみなさい! 人間工学に基づき、コンマミリ単位で削り出されたこの完璧な曲線! 握った瞬間に、まるで自分の体の一部になったかのように馴染むでしょう!? これはただの『武器』ではなく、使い手と一体化する『デバイス』なのですわ!」

「で、でばいす!」

「ええ! しかもこのモデルは、前作で指摘された魔力伝達効率のロスを、新開発の『エーテルコンバーター3.0』を搭載することで15%も改善しているのですわ! これにより、同じ魔力量でも出力が格段に向上し、しかも反動(キックバック)は逆に軽減されている……! まさに技術的特異点(シンギュラリティ)!」

「は、はぁ……」


 高速で語られるシリウスの説明に、一切ついていけないハルカゼ。


『なるほど……要するに、ガチのオタクというわけね。秋葉原で似たような奴を見たことがあるような……』


 頬がすっごくひきつった様子で、クリファスは状況をまとめた。


 少なくとも。


 悶絶している兵士がいる横でする会話ではないのである。

作品を読んで面白いと思った方、もっと多くの人に読んでほしいと思った方は、

ブックマークと高評価(★★★★★)、よろしくお願いします!

とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ