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第一章 ②


(今日もいい天気。)

窓を開けてベランダに出ると、朝の澄んだ空と薔薇の香りに包まれる。

シンメトリーに整えられた美しい庭には今日もひと気は輝く。

幾千もの赤薔薇が咲き誇るここは赤薔薇家、広大な土地に大きな邸と多くの使用人をもつ名家だ。


私の名前はルージュ・ローザ。15歳。

ここ赤薔薇家に生まれた。

私には父と母、そして2歳年上の兄と5歳年下に弟がいる。


家族は皆濃淡は多少違えど美しい赤薔薇色の髪をしており、特に父と兄はベルベットの様な濃い赤色の髪と、王家と同じ金色の瞳をしている。

基本的に髪の色は父か母、どちらか魔力の強い方をより濃く引き継ぎ、成長するにつれて変化してしまう場合もあるが多くは生まれた時のまま成長していく。

そして色が濃いほど魔力が強い。

そんな私の髪は、家族の様な濃い赤色ではなく水を混ぜたように淡い赤色だった‥‥。


───────


その日は私の10歳のお誕生日。

とても良い天気で、爽やかな風が吹く、穏やかな日だった。

いつもの様に庭を散歩していた私は、どこからか迷い込んだ白い子猫を見つけ、美しいその姿を夢中で追った。

子猫を追いかけるのに夢中になってしまった私は、近くで話をしている人が居る事に気が付かなかった。

気配に気がついた時にはすでに近付き過ぎてしまっており、人の姿に驚いた私はとっさに庭の薔薇の影に身を潜めた。


そっと様子を窺うと、そこにはいつも物静かな父と優しい兄が言い争っているところだった。

幼い私は2人が何を話しているのかよく分からずにいたが、言い争いはどんどん激しさを増していく。


怖くなった私はその場に身を縮こめて息をころし、スカートの裾をぎゅっと握りしめた。


さっきまであんなに晴れていた空がいつの間にかどんよりと曇り始め、暗い空からは今にも雨が降りそうだった。


2人はしばらく話をしていたようだったが、兄が吐き捨てるように


「もう、、聞きたくない。」


と父に告げ、俯いてしまった。

それを見た父は、兄を気にかける様子も無く、いつものように変わらない表情のまま、兄に背を向け歩き出した。


その場にひとり取り残された兄は拳を握りしめ、小さく震える背中は今にも泣き出しそうで、それを見た私も悲しくなった。


ちょうどその時、降り出した雨が兄の頬を濡らしていった。


初めて見る兄のそんな姿を見た私は、じっとしていられなくなり、先程までの恐ろしさなど忘れて思わず兄の方へと走り出した。


「おにいさま‥っ」


そう声をかけ、手を伸ばした瞬間、俯いていた兄のぎゅっと握りしめた拳から、突如大量の魔力が溢れ出し、それが父をめがけて飛んで行った。


自分の意思とは関係なく放たれてしまった魔力に兄は驚愕しているようで、真っ青だった。

だが父も、赤薔薇騎士団の団長として常に前線で戦う為、自分めがけて飛んできた魔力に咄嗟に反応し、対抗する様に火炎球を放った。

‥‥運悪く、それらは私の居る場所の数メートル上空で〝ドンッッ〝と大きな音を立てて衝突した。


突然の事に防ぐことができなかった私は衝撃で吹き飛ばされてしまった。

徐々に意識が遠のいていく中、最後に見たのは駆け寄ってきた兄の絶望に満ちた顔だった。


───────


「ローザ!ローザ!!!目を開けてくれ。お願いだ。すまない。すまない。俺のせいだ。誰か、誰か来てくれ…!」


そこに、何事かと駆けつけた執事長がやってきた。


「何事ですか!?…お嬢様は頭を打っているやもしれません。無理に動かさないでください。」

「───そこの君、急ぎ医者を呼んできてくれ」


気を失った私の手を兄は強く握り続けた。

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